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親は道標ではない、子どもと一緒に走る車


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:辻恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
やりたいことがあると言って、娘は大学を辞めた。
 
高校卒業後の進路を考えるにあたって、「医療関係の仕事に興味あるかも」と話す娘に対して「資格が取れるのは、女の子にとって絶対いいで」と、私は資格の取れる専門学校や大学を勧めた。
娘は特に成績が良いというわけでもなく、受験勉強に邁進している風でもなかった。ただ、学校をサボらず、赤点を取らない程度に普通に過ごしているように見えた。
「大丈夫なのかな」
親としては、当たり前に心配になり、将来のことについて何度も問いかけた。
一緒に大学を見に行ったり、先輩の学生さんの話を聞いたりもした。
しかし、なんとなく、何か一歩踏み出せていないような娘に対して、少し苛立ちさえ感じはじめていた。
 
「お母さんが高校の時は、2年生から本格的に受験勉強してたで。それでも遅い方やった」
何十年も前の、自分の学生時代のことを引っ張り出した。
自分が、決して受験の成功者でもなければ、勉強の達人であったわけでもないくせに。
人生の先輩と言わんばかりに体験談を並べ立てた。よく考えたら、今の娘達を取り巻く世界とは全く別もんと言える昔話なのに。
それでも、娘にその気になってもらいたくて。一緒に頑張っていこうと言わんばかりに、子どもの背中を押しているつもりだった。
おまけに、ママ友の娘さんが、塾に行って頑張っているという噂を耳にする。私の方に焦る気持ちが芽生えてしまった。
 
自分のことではなく、娘の将来のことなのに。
 
「指定校推薦」というのがあると、進路担当の先生から聞き出した。
ある程度成績の良い生徒が、学校から特別に推薦してもらって、受験する制度だ。
娘の希望する医療系の大学も対象だった。
「これよ。これこれ」
一筋の光を見出したように、私は娘に提案した。
「ここやったら、もうちょっと頑張ったら行けそうやで。これで決まりや」
私は、娘が道に迷っている中、大きく道標を示せたような気がした。
「これで迷うことないで。真っ直ぐこの道を目指しなさい」
 
果たして、17や18歳そこらで、将来真っ直ぐ目指せる道を見つけられるのだろうか。
親は、そんな迷える子どもに対して、道標を示してレールを引こうと躍起になるのだ。
 
昔々の自分の高校時代。私も、何を目指しているのか分からなかった。
たまたま進学クラスにいたので、何となく周りに流されて大学受験をすることにした。
しかし、私も特に成績の良い方でもなかったし、やりたいことも見つけていなかった。
案の定、志望校には入れず、それでも4年生の大学に行けたことを、母が一番喜んでいたことを覚えている。
 
大手の企業に入って欲しい。稼ぎのいい仕事に就いて欲しい。稼ぎのいい旦那さんを見つけて、安定した人生を送って欲しい。そんな理由で、親は、子どもに進学してほしいと考えているのではないか。子どもの将来を見越して、計算して「今頑張っておけば、将来心配ない」と将来のために勉強、受験という貯金をさせるのだ。
子どもに苦労をさせたくないという親心なのだろう。
 
それと同時に、自分の果たせなかった夢を、子どもに託すという「押し付け」もないだろうか。
子どもに自分をダブらせて、まるで自分の一部のように考える。私を含めて母親の多くは、自分の夢として子どもに期待しているようにも思う。そのために、今度は失敗しないように子どもの人生に先回りして道標を示す。
 
しかし、やはり娘の人生は娘の物。子どもは自分の一部では、決してない。
受験勉強の傍、娘は私の全く知らない世界で、何かを探していた。
何も考えていないように見えて実は、将来につながる「今」を生きていた。迷いながらも、既に自分の道を歩き始めていたのだ。
 
結局、指定校推薦でせっかく入った大学を、娘は、たった一年で退学してしまった。
目指しているものが、ここにはないと気付いたらしい。
将来を見越すことはできないが、どうやら高校の時から探していた「今やりたいこと」見つけたようだ。
それは、私が指し示した道標にはないもので、自ら選んだ道。アスファルトで舗装された道ではない、ゴロゴロ石が転がる砂利道なのかも知れない。
ただ、今のところ娘はアクセル全開で走っている。先は見えなくて、不安でしょうがないだろうが、自分で選んだ道なので引き返すことはないだろう。
 
 
親は子どもの道標ではない。子どもと一緒に走る車だ。
 
最初は子どもの前を走り、背中を見せて先導する。もちろん、何度も道に迷いながら。
一緒に思い悩んで、時々追い越されながらも、寄り添って一緒に同じ道を走る。しかし、ある時期が来たら、親は高速道路から降りなければならない。
 
私の車は、もうすぐインターチェンジ。
寂しいけれど、これからは、娘から離れて別の道走ろう。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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