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ねこのいる日々

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:町田 香織(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
よし、今から集中して書くぞ! 気合だけは十分に、暖かい飲み物も用意し室温も問題なし。
早速パソコンを開いて打ち込み始めると机の脚元から「にゃーん……」少し遠慮気味に声がかかる。がまだ気にならない。無視を決め込みしばらくキーボードを打ち続ける。今度は先ほどより大きい声で「にゃーーん……」それでも集中をして半ページほど進んでふと顔をあげるとこちらをひたすら見つめて座っていた……目が合うと再びお呼びがかかった。
ここで今話題の猫語翻訳アプリを起動させてみると「愛する人、聞こえてる?」とでた。
はい聞こえてます! ごめんごめん、おやつ欲しいの? ブラッシング? とまったく向こうの思うツボ的行動で早速シモベと化す。
このアプリのヒットは会話の「見える化」であろう。犬猫を飼っている人であればだいたい雰囲気で何を求められているかわかってくるが、わかっていても画面に文字が表示されることによって感情の輪郭がよりくっきりとなり感動する。
 
動物を飼うことの醍醐味は言葉を喋らないからだと思う。
気持ちや行動、態度をこちらが読み取り、相手もそれにこたえる。下手に言葉が介在しないから自分の想像のみでいかようにも会話ができる。
 
我が家に猫が来たのは2年前の夏、3歳の保護猫だった。ふとした時になんとなく猫を飼ってみようか? と思い立ちそれから保護猫譲渡会のサイトをはしごし彼女に出会った。
運命的! とまでは思わなかったが、その子は会場に入ってすぐ、いの一番のケージに入っておりすごくキレイな静かな目でこっちを見て身を縮めていた。
本当は子猫を希望していた。子猫のうちから接していれば懐くのもはやいだろうし世話もしてみたかったが、働いており留守がちの我が家には無理だとわかった。
会場を一回りして抱っこも触ることもしなかったが彼女に引き取りの申し込みを入れた。
 
来てから1週間はケージの中で夜鳴きを繰り返し、その後はテレビボードの中に籠城し出て来なかった。
それからだんだんと顔を出すようになり、行動範囲が広くなり、名前を呼ぶと耳が反応するようになり、私たち夫婦と同じ空間にいても逃げなくなった。(旦那さんには今でも自分からは近寄らない。ごはん以外は……)
今年の冬には布団に潜りこんで来るようになった。
どちらかといえば潔癖の私には動物が布団に入ることなど論外であったが、「うちの子」は別である。モフモフとした肌触りとほどよい暖かさが最高の冬のお供となった。
 
保護した方のお話では以前高齢の女性に飼われていたが、飼育放棄されて半野良のような状態にいたところを保護されたらしい。
彼女は本当に大人しく、家具で爪とぎすることもなければ、激しく夜中に走り回ることもなく、おもちゃではしゃぎまわることもない。
ただゆっくりと昼寝をし、こちらが暇そうにしている時のみ声をかけてくるような性格の子だ。
好きなことは、ブラッシング、撫で撫で、ごはん、夕方のカラスの群れ位で時々じっと遠くを見つめるような目で視線を送ってくる以外は本当にのんびりと暖かい場所で寝ている。
 
学生時代から普通に友達はいたけれど、心から安心できる場所はなかったように思う。
転校を繰り返し、なんとなくその場に合わせていく術が見事に習慣になり自分からあまり主張することがなかった。
ただ「空気を読む」事は上手になりそのことが良い時もあったし悪い時もあった。
社会人になってからもその習慣を身にまとい、仕事をしていく上ではメリットに働くことも多かったが相変わらず「すごく気の合う仲間」を作ることは難しかった。ただ年を重ねるなかで少しずつ折り合いをつけている自分がいた。
忙しくしていると孤独感が薄れていくといった方法にも気づき無駄に予定を入れていた時もあったが……
 
孤独が悪だとだれが言ったのか? 誰もそんなことは言っていないし自分がそう取っていただけだと今はわかる。自分と向き合う時間が多いということはとても大切な事で何もしない時間に一人で猫の昼寝を眺めていると何か絶対的な安心感が心に広がった。
 
今は孤独との付き合い方も少しは上手になったけど、彼女がきてからピタッと自分の気持ちにフィットし、欠けていたジグソーパズルのピースを嵌めたようなしっくり感がある。
私の日々の生活に寄り添い、知らない間に背後に黙って座り静かな主張を行う。
 
今日ものんびり昼寝をし、私がパソコンに再び向き合うとゆっくりと去っていった。
暖かい日差しを求め南の部屋へ。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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