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バイリンガルは一日にして成らず

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記事:Seiko(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「お母さん、模試の結果見る?」
普段は話かけてもそっけない返事を返してくる高校3年生の息子がそう聞いてきたので、余程見せたいのだろうかと思いながら「うん、見る見る」 と即答した。
驚いた。他の教科はさておいて、英語の結果が素晴らしい。「英語スゴイね、これ」 「うん」
模試の英語のテストには記述とリスニングがあり、その両方がよくできていた。
 
息子の英語力がどの程度なのか、とうの昔にわからなくなっている私。例えば私の英語力が10だとする。以前は「息子は3くらいかな」 「5くらいかな」 と、自分の力量内の時は相手のそれもなんとなくわかった。
でも今は見当もつかないということは、英語に関して、彼は私の遥か知らない世界に生きていると言うことだと思う。最早私の英語力は息子の足元にも及ばない。大学生の長女についても同じだ。
 
私の夫はアメリカ人だ。夫の母国語は英語で、彼はそれ以外の言葉は話さないし日本語も本当に片言。そしてアメリカ人を父に持つうちの子供達は〝ハーフ〟と呼ばれる。
「なるほど。それで子供は英語ができるのか」 そう思っただろうか?
「ハーフだから英語できていいね」 「バイリンガルだね」 子供達が幼い頃から何度も聞いた言葉だ。 中学生になると「お子さん、英語は勉強しなくても成績いいでしょう? 羨ましい」 と言われるようになった。私が「そんなことないですよ」 と答えると「またまたそんなこと言って」 と信じてもらえない。本当にそんなことはないのです。
では両親が日本人の家庭で育った日本人は国語の試験はいつも満点なのか。漢字は勉強しなくても軽くクリア? そう突っ込みたくなる。そんなわけはないと思う。それがなぜ、片方の親がアメリカ人だと、その子供は自動的に英語ができることになるのか、不思議なのだ。
確かに両親が日本人の家庭よりは英語に触れる機会はある。違いはそれだけだ。そしてそれだけではバイリンガルは育たない。残念なことに。
本人がその気にならないことには語学の力は伸びないと、伸びなかったわが子を見てきてそう思う。
 
話は変わるが、元体操の日本代表で、オリンピックのメダリストでもある白井健三さん。ひねり王子の愛称で親しまれていた方だ。
以前、白井さんが幼い頃の映像を何かのテレビ番組で観たことがあった。元体操選手のご両親が体操教室を運営していて、そこではまだ小さかった白井さんが、楽しそうにトランポリンの上を自由自在に跳ね回り、空中で体をひねって回転していた。しまくっていた。くるくるピョンピョンと。
私はそれを観た時に「これは敵わないなぁ」 「だからひねり王子が育ったのか」 そう思った。まるで遊びの延長ように白井さんはそれをやっていた。体操を習うのではなく、遊びが体操に繋がっているような、そんな風に見えた。
「体操教室」 という「環境」 が身近にあり、そこにあるトランポリンを楽しんでいた。
 
でも、白井さんは生まれた時からひねり王子だったわけではない。いくら親が体操教室をやっているからと言っても、本人がそこに興味を持たなかったら。好きでなかったら。その気になっていなかったら。今のような体操選手白井健三にはなっていなかったかもしれない。
環境があり、本人の意思があり、練習の積み重ねがあった。そして白井さんのご両親は体操の知識と経験がある。望めば練習相手にもなってくれただろう。
 
私は、白井さんの身近にあった体操が、アメリカ人の父親を持つ私の息子にとっての英語と似て
いると思うのだ。
 
息子にとって英語は生まれた時から身近にあるもので、父親とコミュニケーションをとる為の手段だった。正しいかどうかとか、好きか嫌いかとか、関係がなくて、とにかく伝える為に一生懸命。ただそれだけ。夫も自分が理解できればいいと、子供の言葉を直したり、英語を教えたりすることはしなかった。
だから、息子が中学生になり英語の授業が始まった時、彼は英語を勉強する気はなくて、単語の綴りを覚えるのが面倒。文法? なにそれ。と言う感じだった。
もうこの辺りが限界かも。まあいいか。夫とはコミュニケーションがとれているし。どんな英語でも伝わればいい。ネイティブは理解してくれる。私はそう思っていた。
 
しかし、息子が中学2年生の時、それまで「父親と話す為のもの」 だった英語が「身に着けたいもの」 に変わったようで、「英語上手くなりたいから、これから俺はダディとたくさん話す」 と宣言し、暇さえあれば夫と話すようになった。それは今でも続いている。
そこが息子の英語力の成長のきっかけになっていると思う。初めて本人の意志が動いた時だ。
だからと言って学校の英語の成績はなかなか伸びなかったが。
 
スポーツと同じく語学の習得は本人の意思によるところが大きい。いやそれ以外ない。私はそう思っている。そこに学びをサポートしてくれるような環境が加われば心強い。
 
もし、日本で生まれ育った〝ハーフ〟と呼ばれる人が、日本語以外の、例えば英語を第二言語として身に着けているとしたら、それは決して楽をして得たものではないはずだ。
最初は身近に触れる機会があり、ある時期から自分の意志でそこに時間を費やし始め、やり続けた。そういうことだと思う。
そして、彼らがその気になった時「環境」 が力を貸してくれるだろうし、それまで「環境」 の中で育ててきたものが爆発する。 それにはなかなか敵わないと思う。
 
 
 
 
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2022-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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