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メディアグランプリ

ヨダレを垂れ流しながら年越しをした女は、今年も祈る。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北江りな(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
新年の透き通った空気の中、地元の神社へ向かう。
初詣は、この神社に決めている。
 
列で並ぶこともない、御守りも、おみくじもないような、その小さな神社は、ひっそりと住宅街のはしっこに、昔から、ある。
 
たくさんの人が並ぶような有名な神社は、色んな人の願いがあふれていて、自分の願いが神様に届かないんじゃないかと思っている。
そんな自分勝手な理由で、私は小さな神社へ、足を運ぶ。
 
その小さな神社は、なぜだか願い事が叶う気がする。
鳥居をくぐると、こころが、さわっと震える。
まるで、目に見えない「何か」がそこにいるように。
 
ある時、失くした鍵が出てきますように。とお願いしたときは、
翌週、ちゃんとタンスの裏から出てきた。
そこから信頼感MAXである。
神様は、そこに、いる。
だから私は、この小さな神社に新年のお願いをする。
 
さて、そんな自分勝手な私は、ある年、こんな願い事をした。
 
「好きな人が彼女と別れますように」
 
嗚呼、なんと最低な願い事だろうか。
おそらく最も根性が腐っている初詣の願い事であろう。
 
結果として、その年、好きな人は彼女と別れた。
でも、その彼が私を好きになることはなかった。
世界はうまくできている。
 
そんなことがあった年末、私はインフルエンザになった。
 
忘れもしない12月30日。
朝、目が覚めると、この身体は誰のものだ、と思うぐらい身体が重い。そして熱い。
 
嫌な予感ほど当たる。
これは、もしや、インフルか!?
 
一人暮らしの貧乏学生。頼れる人もいない。
年末で最寄りの病院は休診。
診てもらえる場所は、約3km先の病院しかなかった。
タクシーに乗る選択肢はなかった。
もしインフルだったら誰かに移すわけにもいかない。
 
吐く息は白い。湯気が出るほど身体は熱い。
歩いても歩いても辿りつかない。
いつもはすぐ着くのに、倍ぐらいに感じる。
身体は寒気がしているのに、真夏のような、蜃気楼が見えた。
 
待合室では隔離され、
診察室では鼻の奥に細長い棒を突っ込まれ、
情けなさと、辛さと、痛みで、涙を流した。
 
覚悟をしていた通り、
「インフルエンザA型ですねー」とあっさり言われた。
これで年末年始はインフルエンザと共に過ごすことが確定した。
呼吸をするのも申し訳なく、
なるべく自分の存在を消しながら、最低限の買い物をした。
 
テレビもない、1Kの部屋に閉じこもる。
ただ、寝ていることしかできない。
なんと無力なのだろう。なんと情けないのだろう。
 
気がついたら、12月31日、大晦日。
もう今年も終ろうとしている。
除夜の鐘が聞こえてきた。
 
喉が痛すぎて、ポカリスエットも飲めない。
想像してみてほしい。
布団の上で、タオルにヨダレを垂らしながら、口が空いたまま、年越しをしている女の姿を。
 
年が明ける。煩悩の数だけ、鐘の音を聞いた。
108も煩悩はあるのか、とぼんやり考えていた時に、
蘇ってきた、自分の願い事。
 
「好きな人が彼女と別れますように」
 
私は煩悩のかたまりであった、と反省をした。
 
108もある煩悩のうち、特に人を苦しめる煩悩の中の1つに、
「愚痴」があると言われている。
愚痴とは、妬みや恨み、醜い心のことである。
あの小さな神社の神様は、醜い心を持った私に、戒めを与えているのだろう。
まさに因果応報。
鐘の音が、夜の奥に吸い込まれたあと、新年がやってきた。
インフルエンザが治ったら、あの小さな神社に行こう。
そう思いながら、目を閉じた。
 
回復したのは、三が日を過ぎてから。
すっかり街は正月という行事を終え、
日常の暮らしへと戻っていくところだった。
 
一足遅れて、私は初詣へ向かった。
ひっそりと佇む、小さな神社は、変わらずそこにあった。
病み上がりで体力を奪われた私は、ゆっくりと鳥居をくぐる。
やっぱり、こころが、さわっと震えた。
おじゃまします、神様。
去年は、ごめんなさい。
 
その年から、私の初詣の願い事は決まっている。
誰がなんと言おうと、決まっている。
 
「健康、そして平穏な日々を過ごせますように」
 
子どもの頃は、
仲の良い子と同じクラスになれますように。とか、
あのゲームが買ってもらえますように。とか、
子どもらしいお願いをしていた。
 
親などの大人たちに、
「何をお願いした?」と聞いたときは、
「健康」と一言。
へぇ、なんてつまんない願い事なんだろう。と、思っていた。
 
その時はまだ若かったんだな。
でも、いまなら分かる。
健康が、一番大事だ。
身体が丈夫じゃなきゃ、何にも出来やしない。
そして、願わくば、平穏に何事もなく、過ごせればいい。
 
そうして今年も透き通った新年の空気を胸いっぱいに吸い込みながら、
ひとり、小さな神社へ向かう。
願い事は決まっている。
 
今年1年が健康で過ごせますように。
平穏で何事もなく、過ごせますように。
そして、これを読んでいるあなたも、今年1年、良いことがありますように。
 
 
 
 
***
 
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2022-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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