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ただの英語好きだったのに


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記事:石川良美(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
私は小さな頃から英語が好きだった。
おそらく、洋楽が好きだった父の影響だろう。家の中で父はカーペンターズの音楽をよくかけていた。夜ビールでほろ酔いになった父が、ステレオで「イエスタデイ・ワンス・モア」をかけ、大声で歌いながら私の手を取り踊って遊んでくれたものだった。
そのうち私もカーペンターズの歌を口ずさむようになり、9歳から近所の英語教室に通わせてもらった。そして英語の発音がよくなって話せるのが楽しくて、小学生高学年からは英語スピーチコンテストにたびたび出場していた。
今でこそ、小さな頃から英語を学ばせようと考える保護者も多く、子ども向けの英語教室も探せばいくらでもあるが、40年前はそうではなかったので、私のような子どもは非常に珍しかっただろう。
 
私の英語好きは、音楽や映画とともにあった。
小学校6年生の時、「スターウォーズ ジェダイの復讐」が上映され、ルーク・スカイウォーカーに恋をした。ムック本を買って研究し、夜な夜なルークを思い浮かべ、サウンドトラックを飽きるほど聴いた。
中学生のときには、家で深夜MTVを見て、様々な洋楽を聴いた。カーペンターズも依然と好きだったし、この頃からポール・マッカートニーにはまった。それからマドンナ、ビリー・ジョエル、ブライアン・アダムス、U2などなど。当時「ウィー・アー・ザ・ワールド」や、「ライブエイド」といった海外アーティストの手掛ける大規模な音楽イベントがあったこともあり、どんどん洋楽にはまっていった。FMラジオを録音しては特製のカセットテープを作り、お気に入りのポストカードをコラージュしてそのカセットのジャケットをつくるのを楽しんでいた。
高校生の時だっただろうか。体育の授業で、罰ゲームに当たったことがある。みんなの前で何かを歌いなさいと先生に言われ、選んだ曲がカーペンターズの「スーパースター」という曲だった。スローでメロウな曲調で、おおよそ高校生が好む歌ではなく、おそらく同級生の誰も知らない曲だっただろうし、しかも英語だったが、なぜかそれしか思いつかなかったのだ。それを聞かされた同級生たちは、さぞ困ったことだろう。
 
両親はそんな私を非常に理解してくれて、中学の頃から英語の個人レッスンに通わせてくれたおかげで、私は英語の会話力をどんどんと伸ばしていった。そして私が高校生の時に父が出張でアメリカに行き、お土産でマンハッタンの地図を買ってきてくれた。私は大喜びし、その大きな地図をトイレの壁に貼っていつも眺めていた。大学生になったらアメリカに留学したいとひそかに思っていた。
 
けれども、実際に大学に入ったら、オーケストラでトランペットを吹くことに熱中してしまい、留学する気が全くなくなってしまった。そしてそのまま日本の会社に就職し、大学オーケストラの日本人の先輩と結婚した。
結婚するときに夫と、「新婚旅行どこに行こうか、海外に行こうか?」という話をしたときに、頭の中に浮かんだのは「ニューヨークに行きたい」ということだった。
昔から憧れだったアメリカの大都会を訪れるなんて、これまで現実的に考えることがなかった。けれど、今それがやろうと思えばできる。そして考え出したら、やりたいことが次々に出てきた。
ニューヨークの空気を感じて、街を歩きたい。アメリカの食器や服を買い物してみたい。美術館を巡ってみたい。ブロードウェイを見てみたい。ニューヨークの有名なオーケストラの演奏だって聴きたい。それからメトロポリタンオペラも!
 
この機会を逃したら、次はいつニューヨークに行けるかわからない。私にはそんな不安があった。夫は海外志向ではないし、会社は純粋な日本企業だから、海外赴任なんてまぁ、ないだろう。結婚したら気軽に海外旅行できないだろうし、ましてや子どもができたりしたら、国内旅行するだけでも大変だ。ニューヨークなんて、大仕事じゃないか、と思ったのだ。
だからこの新婚旅行で悔いのないように、とたった3日間だけの滞在なのに、詰め込められるだけ予定を詰め込んだ。朝から美術館に入り、お昼はガイドブックに載っていたデリへ、そこから買い物、いったんホテルに戻り、着替えてからディナーそしてコンサート、といった超ハードなスケジュールを3回転。すると3日目の夜オペラを観に行った時、さすがに夫は疲れ切って、私の隣で大きないびきをかいて寝てしまったのだった。
 
それでも私自身は、その3日間でやりたいことが概ね果たせて、満足だった。
もうこれでニューヨークに行けなくても悔いはない、そう思った。
それがどうだろう。運命というのは面白いもので、新婚旅行から3年後、私達家族はニューヨークから車でほんの1時間という場所に、夫の海外赴任で6年も住むことになったのだ。それも2人の子どもと共に。
そしてその時の経験が回りまわって、今私は「幼児英語教育研究家」として活動している。
 
 
 
 
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2022-01-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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