「数学」を学ぶ前に
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:石井亜寿美(ライティング・ゼミ12月開講コース)
2021年3月末に退職したが、私は25年以上にわたり高校で数学を教えていた。私が勤めていたのは、いわゆる普通レベルの私立高校だ。数学がずば抜けてできる生徒は少なく、反対にそんなことも分からずによくも高校に入学できたものだ、と関心するくらい数学が苦手な生徒が多かった。
数学が分からないと生徒は言うが、若い私には理解できなかった。私は数学がとても好きだったし、こんなに明快で役に立つ学問は他にないだろうと信じて疑わなかったからだ。残念ながら、数学が嫌いな生徒ばかりを相手にすることになっていた。
数学が分からない生徒には、マンツーマンで教えるに限る。どこでつまずいているか、見極めることが大切だからだ。一斉授業はしても、練習問題を解かせている間は困っている生徒の近くでノートを覗き込む日々。これを繰り返すうちに、数学のことをもっと伝えて前向きに勉強してほしいとの思いから、新学期最初の授業で必ず生徒に伝えていたことが二つある。それを皆さんにお伝えしたい。
<数学は覚えることが多い>
これが一番に伝えたいことである。
数学は暗記科目ではない、と言われる。一方で解き方を暗記すれば解けるようになる、ともいわれる。しかしその前に、数学は「言葉や記号を理解していることを前提」に進んでいくことを知っておかねばならない。
数学が分からないという生徒の多くは、
問題の意味が解らない
何をすればいいのか解らない
という。だから手が止まって、問題を解き進めることが出来ないことが多い。
「~を満たす」「整理する」「解く」
などの数学特有の用語はたくさんある。普段の使い方と違うものも多くある。
その数学用語の意味を理解して、覚えておかなければならない。
例えば、「次の方程式を解け」という問題がある。「方程式」は、未知数を表す文字を含む式のこと。「解け」は等式を成り立たせる未知数の値(解)を求めること。
等式の中に文字があって、その文字が何であってもその文字に当てはまる数を答えればいい。ところが、ここでいつも使っているx以外の文字が出てきたら、とたんに何をすればいいか分からなくなったりするのだ。
また、息子が小学5年生の時、「時速」が「一時間あたりに進む距離」を表すことが理解できていなくて、おかしな式を立てていた。速度であることが分かっていても、意味が分からなければ、式も立てられない。
数学の授業では、言葉の意味を繰り返し復習することが少ない。
先生は、前回の授業で説明したんだから、分かっているのが当然でしっかり頭に入れていない生徒が悪いと思う。生徒は、前回やったけど、先生が何度も説明するわけではないので、言葉や記号の意味を軽んじる。
そんな、男と女の「言わなくても分かってよ」「言わなきゃわからないだろ」みたいなすれ違いがよく起こるのだ。
だから、私は声を大にして言いたい。
数学って、覚えることがたくさんあるんだよ。
言葉や記号は繰り返し演習することで理解を深めていけるよ。
それを知っているだけでいい。
知ってたら、分からない場面でちゃんと覚えていないことが分かる。
問題の意味が分からなければ、どの言葉の意味が分からないかを探せる。
そして、どう勉強していけばいいか分かるようになるのではないだろうか。
次に伝えたいことは
<数学は役に立つよ>
である。
「数学って社会に出ても使わない」って意見もよく聞く。
計算だけできればいきていけるじゃん、というのだ。
間違いではない。
でも、数学は計算のための勉強ではない。
純粋に論理を積み上げる訓練をするための勉強なのだ。
論理を積み上げる作業は、私たちが日常の問題を解決しようとするときに役に立つ。
生活の中には、大小さまざまな問題がある。
その問題を解決するときにどうするか、考えてみよう。
まず、様々な条件を考える。資金だったり、人材だったり。次に、そこから何ができるかを考えるのではないだろうか。それを繰り返して、一歩ずつゴールに向けて進んでいく。
数学も、いろんな条件が与えられ、そこからできることは限られている。
できることを積み重ねて、一行一行答えに向けて進んでいく。
問題解決と数学を解く作業と、全く同じである。
数学は、問題解決のための脳トレみたいなものだ。
数学の問題に取り組むめば取り組むほど、数学的考え方が身につく。
いろんな問題を解決するための力がつく。
それは、私たちの生活を支えてくれる力だ。
数学って、役に立つ学問なのだ。
もし、これから数学を勉強するなら、「数学は覚えることが多い」「数学は役に立つ」の二つをどうか覚えていてほしい。数学への取り組み方が、変わるのではないだろうか。
私は本当に数学が大好きで、教員を辞めた今でも、一人でも多くの人に数学の素晴らしさを分かってほしいし、前向きに勉強してほしいと思っている。
***
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