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トイレのドアに手が間に合わなかった話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:喜多村敬子(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
トイレ中、意に反して個室ドアが開く。
こんな目に遭いたい人などいないと思う。
自宅だからと油断して鍵を掛けずに、家族に開けられかけたことはある。
これが出先だったら、どれだけ恥ずかしいか。
幸い外出先でのそういう経験はない……と思う。実は断言できる自信がない。
中学生以降は確実にないはずだが、神様のご加護で運良く忘れているだけかも。
でも、他人の不運はいくつも覚えている。
 
その中の一つは、大学のサークルの20人ほどで夏合宿に民宿に泊まった時の事だった。
他に客はなく貸し切り状態、建物内は土足禁止でスリッパ使用。
一階のトイレは男女共用で、和式の個室2に小便器2、
トイレ入り口にはトイレと書かれたスリッパが2足並んでいた。
男女ともに、ここでばったり出会いたくないと心底思う場所だった。
 
食事に食堂へ行こうとそのトイレの前を通りかかった時、
突如「きゃーー」という叫び声と「ごめん!」という声が聞こえた。
と同時に後輩のA子ちゃんが飛び出して来て、バタバタと目の前を走り去っていった。
一瞬のことで何が起きたのか分からなかった。
もう一つの声の主が出てくるのを待つのは、お互いきまり悪いことになると思い、
すぐにA子ちゃんを追って食堂へ行った。
彼女が言うには、誰も入っていないと思った個室のドアを開けたら、人がいた。
「えっ、入り口のスリッパの数確かめた?
トイレのスリッパ2足あった? 1足なかったんじゃ?」と聞くと、
「確かめました、男子と鉢合わせはイヤだから、ちゃんと見ました」という答え。
「で、誰だったの、それ」と居合わせた数人が口々に聞く。
「丸っとしたお尻の輪郭しか覚えてないです。
びっくりしてそのまま逃げてきちゃったから、分からないです、顔見てないです」
とA子ちゃんがむき出しのお尻が丸っとしたラインを手で表した。
いったい誰だったんだろうと皆で話している所に、
「ごめん、それ僕」と後輩のB君が現れた。
言わなければ分からなかったのに、もうバレていると思って、B君は白状した。
「なんで、鍵かけとかなかったの?」とB君は当たり前の質問をされた。
「大きい方をしたくなって、急いでトイレに入って、
さぁっと力入れようとした時に音がして、
ドアに手を伸ばしたけど、間に合わなかったです」
「鍵かけてなかったの?」
「はい……」
トイレのスリッパを履かずに(まずそれが信じられないが)、鍵もかけない。
それでは、救いようがない、かばいようがない。
そして、B君はひょうきん者だったので、こういう事も彼らしいと皆納得した。
 
これは昭和の終わり頃の話で、今のトイレ環境は格段に良くなった。
よほど小さかったり、古いお店や施設でないと、
あんな公共の男女共用のトイレはもうない。
だから、こんな事はもう起きないと思っていた。
そもそも、本人がうっかり者でなければ、こんなことは起きない。
だが、鍵を掛けずに外から開けられてしまったのではなく、
鍵をかけたのに、中から開けられてしまった話を平成に聞いた。
 
鍵をかけたのに? 中から? 一体どういう状況だったのだろう。
それは多機能トイレで起きたことだった。
車いす利用者が介助者と一緒でも利用できるように広く作ってあるので、
ベビーカーの赤ちゃんや幼児連れには便利だ。
父親、母親のどちらでも使えるし、一緒に入れば子供に目が届く。
この便利なトイレに、ある母親がベビーカーの赤ちゃんと
3歳前の子供を連れて入った。
先に子供たちのおむつ、トイレを済ませてから、自分が用を足していた。
すると上の子供がドアの方へ行く、いやな予感がした。
手を伸ばして捕まえるには遠すぎる。こうなるとトイレが広すぎ。
そのドアは自動式で、車いす利用者にも使いやすいように
ドア横の低い位置に赤と緑の大きな開閉ボタンが設置されていた。
子供はスイッチを押すのが大好き。そこに、ちょうどよい高さの2個の大きな素敵なボタン。
押さないはずがない。
慌てて声をかけたが、子供はドアの「開く」ボタンの方を押してしまった。
母親がドアを押さえようにも、「閉じる」ボタンを押そうにも、
到底手は届かない、間に合わない。
ドアはスルスルと開いてしまった。
 
運良く外に人はいなかったと言う。
もし、外の人と目が合っていたら、その決まり悪さは察するに気の毒で仕方がない。
そんな時に洋式便器に座っていたなら、まだ格好がつくと言った人がいる。
特に長めのスカートなら恥ずかしさも半減すると私は思う。
でも、和式だったらとは想像もしたくないとも言っていた。
本当にそうだ、B君の姿がそうだった。
この母親にとっては、そこが洋式で、人目がなかったのは不幸中の幸いだった。
 
多機能トイレを始め、トイレが快適になってきたのはうれしい。
その恩恵は大きく、これからも色々な工夫がされていくだろう。
でも、それゆえ思いもよらぬこともある。
自動ドアの事ばかりではなく、例えば、
落としたピアスが、自動洗浄であっという間に流されて行ってしまうとか。
新しい技術には、それなりの想定外の事が起きる。
だから最新の安全対策のある車でも事故は起こる。
まずは、トイレではご注意を。
 
 
 
 
***
 
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2022-01-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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