メディアグランプリ

阪神淡路大震災から得たこと学んだこと


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記事:須賀泉水(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
もう20年以上、1月17日に必ずおこなっていることがあります。
それは、家に備蓄している非常持ち出しグッズの点検と、もしも大きな地震が来たらどう行動するべきか? を、子どもと一緒に確認することです。
 
当時23歳。結婚式を2週間後に控えていた27年前のこの日。早朝5時46分。
私は震度7の揺れを経験しました。
地震とは、グラグラと横に揺れるものだと思っていたことと、寝ぼけていたせいもあってか、未体験の大きな揺れがおさまるまで、地震なのだと理解できなかったと記憶しています。
キングコングが私の部屋を両手で持ち上げ、上下左右に振り回しているところを想像し、「やめてー!」と何度も叫びました。
 
揺れがおさまり、何も見えない暗闇の中、「今のはもしかして地震?」と気づき、同居していた母か祖母が助けに来てくれるのを待つことにしました。
さっきまで大声でやめてーと叫んでいたのに、遅れてやってきた恐怖で体が震え、声も出ません。耳を澄まして助けを待っていたのですが、今度は恐ろしいほどの静寂に包まれます。
 
もしかして二人とも……
 
私が助けを待っている場合ではないと、二人を助けに行こうとしたら、部屋のドアが開きません。右足で一蹴り。文字通りドアをぶち破り、通路をふさいでいたピアノを片手で軽々と押しのけ、母の寝ている部屋へ。
そこには、折り重なって倒れたふたつの箪笥の下から、かすかに聞こえる母のうめき声を、呆然と立ち尽くして聞いている祖母がいました。
ここでも私は軽々と、ふたつの箪笥を持ち上げて母の救出に成功。幸い大きなけがはしていませんでした。
 
朝になり、ベランダから外を見てみると、昨日までとは全く違う景色が目に入りました。
グシャっと潰れたマンションが目の前にあることが、うまく理解できませんでした。
 
翌日、私は高熱を出しました。母曰く、「火事場の馬鹿力を出した後には熱がでる」とのこと。
確かに、ドア、ピアノ、箪笥……
普通では考えられない力が出たのは間違いありません。
 
高熱が出ても神経が高ぶっていたせいかじっとしていられず、神戸に住む友人の安否確認にひたすら時間を使いました。
あんな大地震でも家族が全員無事だったことから、「人って簡単には死なないんだ」と言う考えは、時間がたつにつれ、「人って簡単に死んでしまうんだ」に変わっていきました。
 
そしてその時、こう思いました。
この世に生まれてこられたことは、ご先祖様から命が途切れることがなかった奇跡のおかげなのだと。
 
寒いことにも、空腹であることにも、実は足が傷だらけだったことにも、結婚式ができないであろう悲しみにも気づかなかった、完全に平常心を失った数日間。それでもその数日間の記憶は、今でも鮮明に残っています。
 
あの時に経験したこと、感じたこと、得たこと学んだことを、同じ悲しみを繰り返さないために、後世に伝えたい。震災を経験した人は、少なからずそんな思いを持っているのではないかと思います。
 
阪神淡路大震災。あの時被災し、そしてその経験を無駄にしてはいけないという思いから、毎年してきた振り返りは、数年前の大阪北部地震の時に活かされました。
 
震度6の揺れは、わが子にとっては初めての大きな地震でしたが、日ごろから「もし大きな揺れが来たら?」を想定していたため、通学途中の電車内でも落ち着いていられたと言っていました。
私自身も、家の中は壊滅状態でも、気持ちはすぐに立て直すことができ、最善の行動がとれたのではないかと思っています。
 
年に一度点検している非常用備品の中には、当面の食糧やお水があります。
非常用トイレもカセットコンロも懐中電灯も用意しています。
スマホの充電はできるときにしているので、すぐに使えなくなることはありません。
ベッドサイドにはスリッパを置いているので、足の裏を怪我する心配も無用です。
備えあれば憂いなし、なのです。
 
とはいえ、たったこれだけの備えはただの気休めだとも思っています。
年に一度のこの確認作業こそが、防災に対する意識の備えを維持する大切な儀式なのです。
 
子どもが毎年、1月17日に同じ話を何度でも真剣に聞いてくれるのは、「もしあの震災でママが死んでいたら、あなたたちは生まれていなかった」ということを、しっかりと理解してくれているからだと思います。
今ある当たり前に、有難さを感じてくれているのだと思います。
 
自然災害を止めることはできません。いつやってくるかもわかりません。
それでも、だからこそ、いざというときに自分も周りも守れるように。
大切なのは日ごろの備えと平常心。
 
これから何十年たとうとも、1月17日はあの日を振り返り、非常持ち出しグッズをお守りに、すぐに平常心を取り戻せる思考回路を、しっかりと備える習慣を持ち続けたいと思っています。
 
 
 
 
***
 
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2022-01-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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