メディアグランプリ

前進するためのマジックワード


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記事:深谷百合子(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
ズルズル、ザザーッ。
「あっ」と思った瞬間、私は地面に尻もちをついていた。ケガもしていないし、服も汚れていない。幸い周りには誰もおらず、尻もちをついた私のぶざまな姿を人目にさらさずにすんだ。でも、「はぁ」とため息が出た。
 
「正月早々、しかも初詣にきた神社で転ぶなんて、何だか幸先良くないな」
 
今年の元旦は朝から雪だった。初詣に出かけた昼過ぎには、雪はほとんどなくなっていたのだが、日陰に残った雪はとけて氷になっていたのかもしれない。神社の鳥居をくぐったすぐの所にある小さな太鼓橋を渡った時、下りで足をすべらしたのだ。
 
お詣りをした後も、「あれくらいで持ちこたえられなかったなんて、なんだか足腰弱ってるな」とか、「まったく、1年の始まりだというのに」とか、少し気が滅入りながら家に帰った。
 
するとその日の夜、また予想外のことが起きた。メールを開いたらオンライン決済サービスのサイトから、アカウント制限の連絡が入っていたのだ。数か月ぶりに入金があったのを、「著しい変化」と認識されたらしい。制限解除をするためには、身分証明の他に、追加の情報を提供するように記されている。
 
アカウント制限されると、支払いもできなくなるから厄介だ。翌日早速支払先から、「支払いが確認できなかった」との連絡がきた。アカウント制限解除のための対応は、一部不明な点があって、ネットで検索してみてもよくわからない。
 
「あー、もう面倒くさい! なんで新年早々こんなことに」
ゆっくりしたいお正月だというのに、予期せぬことに時間をとられて、私はちょっと苛立っていた。何か解決できていないことが残っているのって、ずっと気になるのだ。他のことをやっていても、気になって集中できなかったりする。神社ですべったことといい、なんだか気持ちの良い1年のスタートを切れなかったような気がして、晴れやかな気持ちにはなれなかった。
 
でも、そんな状況を呪ってみても仕方がない。頭を切り替えることにしてみた。これはいったい何のために起きていることなんだろう? 起きたことは全部「ギフト」だと言われるが、元旦早々から神社ですべった出来事は、一体どんなギフトなんだろうと考えてみた。
 
昨年は年末にかけて、私は結構いいことが続いていた。今まで頑張ってきたことが芽を出したり、結果が出たりして、なかなか好調だった。
 
これはひょっとして、「そこで浮かれるな。もう一度足元をしっかり見て!」
という神様からのメッセージかもしれない。
 
そんな風に思うと、なんだか急に有り難く思えてくるから不思議だ。
「で、どうする?」と自分に問うてみた。すると、「元旦からすべっちゃったよ」と思っていた気持ちが、「そうだ、浮かれずに気を引き締めていこう」という気持ちに変わっていた。
 
さらに決済サービスのアカウント制限の問題は、一人で悩んでも仕方がない。これも一度経験しておけば、今後同じことが起きたとしても慌てずに対処できるようになるだろう。
「で、どうする?」とこれから先のことに目を向けると、次の行動が出てくる。
 
「カスタマーセンターに電話しよう」
「土日は休みだから月曜日に電話しよう」
 
やることが決まれば、もうウダウダ考えることもなく他にやるべきことに集中できるようになった。週明けの月曜日はまだ三が日だったが、カスタマーセンターに電話をするとつながった。
 
入金のいきさつなど、事情を説明すると、電話口のオペレーターの女性は
「こちらで対応しておきますね!」
と言ってくれた。それから数時間後には、私を2日間悩ませていた問題は、あっさり解決してしまった。
 
私は今まで、何かよからぬ事が起きた時、「やっちまったー」みたいなことが起きた時、
「なんでこうなったんだろう」
「あの時あぁしておけば」
「でもあの時は、そうするしか仕方なかったんだ」
などと、グダグダ考えたり、悔やんだり、自分を正当化してみたりして、無為な時間を過ごしていることが多かった。
 
以前はそういう時、「ツイテル!」と口に出していた。起きたことは「ギフト」、問題は「チャンス」という考え方に変わりはない。「あぁ、ツイテル。ここから私は何を得たのか?」という自問を始めるための、「ツイテル」なのだ。
 
だから私は、以前仕事に使っていたパソコンが故障して立ち上がらなくなった時も、「ツイテル!」とつぶやいて、すぐに代わりのパソコンを手配したり、マメにバックアップをとる習慣をつけたのだけど、「ツイテル」と口に出しながら、「いやいや、ツイてないでしょ」と思う自分がどこかにいたのも事実だ。
 
でも、ただシンプルに
「で、どうする?」
と問いかけると、「やっちゃった」、「なんでこうなるかな」みたいな、後悔や怒りといった感情はフッと消えて、目の前に起きていることは「ただの出来事」に見えてくる。そして次にとる行動が思い浮かんでくるのだ。たぶんそれは、行動をとるために必要な情報を、起きた出来事の中から見つけようとする視点に切り替わるからだろう。私にとって「で、どうする?」は前進するためのマジックワードなのだ。
 
何か問題が起きたとき、反省したり原因を追究することも大事だけれど、自分や相手の至らなかったところばかりに目がいってしまうなら、「で、どうする?」と問いかけてみてはどうだろう。きっと思ったより早く、問題は解決するはずだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-01-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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