メディアグランプリ

ニャンドゥティとの出会いが、遠い夢を見せてくれる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:蒲生厚子(ライティング・ゼミ名古屋会場)
 
 
「ニャンドゥティを名古屋で教えてくれる先生を見つけたよ!」
この奇跡にも近い言葉に、私は小躍りして喜んだ。
 
ニャンドゥティとは、南米パラグアイの伝統工芸のレース編みのことだ。
日本ではまだほとんど知られていないかもしれない。
 
日本でレース編みといえば、かぎ針編みのクロッシュレースをさす場合が多いと思う。白や単色のレース糸を用いて、かぎ針で編んでいく。雪の結晶のようにきれいで、ヨーロッパの貴婦人を思わせる気高さがある。
昔、姉たちがよく編んでいた記憶がある。まだ幼かったわたしは、その良さがわからず「面倒くさそうなことをしているな~」と思いながら、編んでいる姿を眺めていた。できあがったテーブルセンターを見ても、興味が持てず「ふ~ん」と思っていただけだ。でも、楽しそうに編んでいた姿は妙に脳裏に焼きついている。
 
その後、大人になってレース編みのコースターやテーブルクロスをいただく機会が増えた。
できあがるまでの時間や愛情がわかる歳になったので、いただいたものは大切にした。ただ、自分で作ろうという気はさらさら起きなかった。セーターやマフラーは編むことがあっても、レース編みはいただくものだった。
 
それが、ニャンドゥティに関しては、がぜん自分で作りたい! と思ってしまったのだ。
なぜかというと、ニャンドゥティはとてもカラフルで見ているだけで楽しくなるから。そして、作ったことがあるという人がおそらくほとんどいないだろう未知の手芸だから。
 
ニャンドゥティはパラグアイのグアラニー語で「蜘蛛の糸」を意味するそうだ。蜘蛛の糸というとちょっと不気味なイメージだが、放射線状に張り巡らされた縦糸に、カラフルな横糸が絡むことで、さまざまな模様が醸し出されるので、まさにぴったりの言葉かもしれない。
縦糸と横糸の配色によって、同じ模様でもまったく違うモチーフに見える。
原色の糸どうしなら南米の陽気な太陽を思わせる派手さを、無彩色どうしなら気品あふれる大人の雰囲気を、パステルカラーの糸ならほころぶ花の優しさを思わせる。
 
最初にニャンドゥティを知ったのは4年前。
友人と一緒に訪れたクリエイティブマーケットでの出会いだった。
一目見たその瞬間に魅せられた。目が釘付けになった。
「なに、これ? すごくきれい」
 
テーブル上には、きれいな色の絵の具を流したように、美しくも楽しい作品が並んでいた。
テーブルセンターやコースター、バックチャーム、ネックレス、イヤリング……。
楽しすぎる。どれもこれも、宝物のようにキラキラ輝いて見えた。
子どもの頃に、大切なものを箱に詰めて宝物にした、あのときのワクワクする感覚が蘇ってきた。見たこともない、でもどこか懐かしいような感覚。
 
隣で見ていた友人と目があった。
お互いに何も言わなくても、同じことを感じているのがわかった。
声にならない感動ってあるんだ。目が、心が、夢中になった。
 
「これ何?」
売り場の女の子に聞いた。
「ニャンドゥティというパラグアイに伝わるレース編みです」
「レース編み? ひらひらしてなくて、ぺったりと固いのはどうして?」
「布に刺した縦糸に横糸を絡めてモチーフを編んで、それを糊でかためた後に、布から外すとこうなるんですよ」
よくわからないが、どうやら刺繍とレース編みのハーフみたいなものらしい。
 
女の子はパラグアイに行ったときに出会ったニャンドゥティが忘れられず、その後しばらく滞在して現地のおばあちゃんたちに教えてもらってきたという。
なるほど、現地の匂いがするぞ。日本でお目にかかったことがないわけだ。
 
私たちは喜々として、バックチャームとネックレスを買ってきた。
それらを身につけて会社に行くと「素敵ね。それ、何?」と聞かれて、ドヤ顔でわずかな知識を披露するのが楽しかったのを覚えている。
 
その後も友人と会うと、ニャンドゥティを出会ったときの感動を語り合うことが何度かあった。だから、名古屋で習うことが出来ると聞いたときは、「やった~」を思わずガッツポーズをしてしまったほどだ。
 
パラグアイ出身の先生が東京にいらして、その先生のもとに通ってインストラクターの資格を取得した方が名古屋で教えているのだ。東京に行かなくても、名古屋で習えるとは、神様の粋なはからいに違いないとまで思った。
 
早速、体験をお願いした。2時間でイヤリングを作るとのこと。
たったの2時間で出来るの? 半信半疑だが、ワクワクが止まらなかった。
 
最初に刺繍糸を2色選ぶ。青色と黄色を選んでみた。ねらいは大人可愛いだ。
まず布に青色の刺繍糸を放射状線に刺していく。縦糸ができると、次は横糸。黄色の刺繍糸を針に通して、一つおきに縦糸をすくっていく。キュッ、キュッ、と横糸を引っ張るたびに模様ができあがってくる。だんだんできあがっていく様子を楽しみながら、ますますワクワク感が増してくる。
 
しかし、目も手もポンコツになっている私には、そう簡単にはいかず、めを飛ばしてはほどいてやり直す、のくり返し。作業自体は簡単なのだが、やる人がポンコツなので仕方が無い。それでも、嫌にならずに進めることができたのは、よっぽどワクワクが強かったからだろう
 
縦糸に横糸が通ったら仕上げの玉留め。縦糸に絡めて、一つずつ玉留めをしていくのだが、やり方がさっぱりわからない。何度きいてもわからなくなる。目と手だけでなく、頭もポンコツらしい。先生はさじを投げずに優しく教えてくれるので、申し訳なくなってくる。
 
どうにか一対ができあがり、ボンドで固めて布から外してできあがり。
すごい! 苦労の跡はみじんも感じさせない、素敵なイヤリングができあがった。糸だけなので羽のように軽い。涼やかだが、圧倒させる存在感あり。私にもできた!
友人は紫と緑の糸で編んだので、ちょっと大人エスニックな感じにできあがっていた。
 
体験したことで更に魅せられ、今では2ヶ月に一度のスローペースで習っている。今でも玉留めのやり方がわからなくなり、先生を煩わせることもあるが、いくつかの作品もできあがった。クリエイティブマーケットで売ることができる遠い日を夢見て、精進します!
 
 
 
 
***
 
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2022-01-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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