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どうか……名前をつけてください!!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:みっこ(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
「うちの夫は、『名もなき料理』が嫌いで食べてく
れないの……。八宝菜には必ずキクラゲを入れ
なきゃいけないし、酢豚にはパイナップルを
入れなきゃいけない。でも、そのためだけに
材料を準備するのは大変なんだよね……」
 
友人からの突然の告白に、衝撃が走った。
 
「名もなき料理」を嫌いな人がいるとは!!
なんと!
「名もなき料理」が大好きな私は驚いた。
 
「名もなき料理」とは、カレーとか麻婆豆腐とか、
一般的に名付けられている料理じゃない料理の
こと。我が家の食卓には、たいてい「名もなき
料理」たちが並んでいる。
 
例えば、冷蔵庫と相談しながら、その日の気分で
作った私の創作料理だ。「名もなき料理」にルール
はない。だから、入れなきゃいけない食材もなけ
れば、入れてはいけない食材もない。残り物の
野菜たちも、おいしい料理に変身するのだ。
 
最近のお気に入りは……大根に醤油などで下味を
つけて、揚げたもの。揚げた表面はカリッとして
いて、中は大根の水分がジューシーさを醸し
出す。最後にふりかけた青のりが、口の中で
ふわっと広がり、良いアクセントになる。
ヘルシーだから、食べた後の罪悪感も感じない。
なんとも素晴らしい、我が家の人気メニューだ。
 
美味しかったら、名前がなくても良いと思ってた
けど……名前ってそんなに大事なの?
そんな疑問だけが頭の中に残った。
 
もしも、名前がなかったら……私たちの生活は何か
変わるんだろうか?
そこで、名前のない世界を考えてみた。
 
その世界では生まれた子どもに名前はつけない。
本や映画にもタイトルはない。
店の名前もなければ、道の名前もない。花の名前も
ない。もちろん、料理の名前だってない。
 
なんだか、この世界は……とっても味気なくて
不便そう。
 
例えば、産まれた子どもには番号が割り振られて、
親は子どもを番号で呼ぶ。名前の由来はないし、
あだ名もない。ラブレターの宛名さえも、番号だ。
 
個人につけられたその番号は、囚人番号のように
管理されている気持ちになる。それでも、親
なら、その番号さえも親しみと愛おしさを感じる
かもしれない。でも、自分の番号ならどうか。
ただ与えられたその番号を、大切にできる気が
しない。
 
物に名前がなければ、「あれ」とか「これ」という
表現が増えそうだ。サンタさんに手紙を書くのも
一苦労。そして、サンタさんも、プレゼントの
正体を突き止めるのに苦労するだろう。物に名前
がなければ、意思の疎通を図ることが難しくなる
のだ。
 
名前には親しみや便利さが隠されている。
身の回りに名前が溢れているから、気付かなかった
けど、名前って、人類最大の発明かも!
 
そういえば、まだ小さかった頃。
私は、ぬいぐるみに名前をつけて遊んでいた。
量産品のクマのぬいぐるみも、「ぽんちゃん」と
いう名前をつけた瞬間、私だけの特別な1体に
変わった。
 
道端に咲いた花にも、名前がある。
名前を知る前は、私にとってただの雑草だった。
でも、「ハルジオン」という名前を知った瞬間、
春を知らせる、可愛い花だと認識するように
なった。
 
こんなことも思い出した。
ある日、理由もなく咳が出て、鼻水が出て、熱も
出てきた。声はかすれるし、頭も痛い。何か深刻
な病気なのではないかと思いながら病院を訪れる。
でも、医師から「花粉症」と診断された瞬間、
「得体の知れないもの」に対する不安から解放され
ていた。病気の名前を知ることで、ホッとしている
自分がいた。
 
名前とは……愛なのではないか。
 
人は、名前を呼び合った瞬間、互いに一歩ずつ歩み
寄ることができると思う。名前のおかげで、相手と
の距離が近づき、相手に親しみを持ち、相手を大切
にできる。
 
それは、人でも、物でも同じだと思う。
病気という人類の敵でさえもそうだ。
名前があるおかげで、得体の知れない病気も自分の
知り合いに変わり、向き合う準備ができる。
 
それこそが、愛だと感じたのだ。
だから、愛で溢れた世界に名前は必要。
 
私はいつも「名もなき料理」の産みの親だ。
その料理の作り方が分かるし、味もなんとなく想像
がつく。だから、たとえ名前がなくても、その料理
ときちんと向き合って、愛することができるのかも
しれない。でも、食べるだけの夫はどうだろう。
 
もしかしたら、口に入れるその瞬間まで、得体の
知れないその「名もなき料理」に恐怖を感じている
かもしれない。友人の旦那さんも、同じだったので
はないだろうか。
 
……だとしたら、「名もなき料理」を好きになっ
て、興味をもってもらうためには名前をつける
ことが大切なのかも。
 
今日から「名もなき料理」には名前をつけようと
思う。まず手始めに、下味をつけて揚げた大根
には「ジューシーフライド大根(青のり風味)」
という名をつけることにした。
 
でも、時には夫や周りも巻き込んで、名前を募集
するのもいいかも! そんな風に思っている。
 
今、この作品を書きながら、私はタイトルを悩み
はじめた。名前をつけずに挫折しそうだ。このまま
では「名もなき作品」となってしまう……。
 
そうか! この作品もみんなにタイトルをつけて
もらおうじゃないか!
 
この「名もなき作品」に……
「どうか……名前をつけてください!!」
 
そして、みんなに愛される作品へと変貌を
遂げてくれ! そんなことを願っている。
 
このアイデアは、「名もなき料理」に頭を抱えて
いた友人にも教えてあげようと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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