メディアグランプリ

大量生産ラインに乗れない40代の再就職活動の記録


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記事:小池恵美子(ライディング・ゼミ10月コース)
 
 
「毎日なにしてるの?」
久しぶりに会う人に100%聞かれるこの質問。
 
前職を退職してから早くも10カ月、そろそろ1年が見えてきた。良く言えば充電期間、悪く言えば毎日プラプラしているほぼニート。
 
ちなみにニートとは「15歳から34歳までの、家事・通学・就業をせず、職業訓練も受けていない者」を指すらしい。家事はしているし34歳オーバーのため私はニートでさえなかった。
 
退職のタイミングで東京から鎌倉へ移住したこともあり、引越しやらなんやらで2~3か月はあっという間に過ぎた。
 
そろそろ活動しようと最初に相談したのは、大手の再就職支援サポート。担当コンサルタントのAさんからは、40代での再就職の厳しさを説明された。
 
その後、希望する業種・業界・年収・勤務場所という条件のヒアリングをして、適正適職診断がサイトにあるのでやっておいてくださいねと一言。それ以上でも以下でもない。
 
「それで十分!」という人もいると思う。自分の目指すところや希望が明確で、あとは紹介だけしてください、だったら何も問題ない。
 
私は今まで再就職支援や転職エージェントを利用したことがなかった。派遣やバイトから契約社員になり正社員となるパターンが多かったのだ。
 
コンサルタントの支援を受けるのも初めてだったので、最初はこういうものかと素直に聞いていたが、相談をしていても特に何の発見もなく、そのうち苦痛になってきた。
 
再就職活動のマニュアルに従って活動をすることに違和感があって、みんなと同じように「右習え!」がどうしてもできなかった。工場にある大量生産ラインのベルトコンベアーに乗せられている気分になるのだ。
 
番号札と履歴書・職務経歴書を持ってクルクル回る、大量生産の再就職活動ラインである。それに乗り遅れて必死にラインに乗ろうとするが乗れない私。想像すると面白い。
 
私の当初の想像では「もっとこういう仕事が合っている」とか、適正適職診断の結果を踏まえて、自分では気づいていないものを、気づかせてくれたりするものかと勝手に思っていた。
 
フタを開けてみたら「保険関係は興味がないから他の業種にしてください」と何度も言っているのに、やたら保険会社をすすめてくる。私の希望はどこへやら?
 
いや待てよ、Aさんは保険会社の仕事に、私の中に何かの可能性を見出しているのかも?!  熟年夫婦じゃないんだから言ってもらわないと分からない。
 
むしろ嚙み合わなさ過ぎて笑えてくる。前職でウエディングプランナーをしていた私は、ほろ苦い新人時代を思い出した。
 
「提案をしてくれなかった」「こちらが質問しないと教えてくれない」と新人時代にご意見を受けた。新人なら誰しもぶつかる壁。お客様の痒いところに手が届かないのである。
 
最初はぶつかっても転んでも仕方がない。先輩や周りにフォローをしてもらい成長し、お客様にも育ててもらった。でもAさんはどう見ても新人という年齢ではない、絶対私より年上だ。
 
いやいや見た目や年齢で判断してはいけない、中途なら新人ってこともあり得るぞ!  Aさんに心を開いていない自分も悪いのだと思い直してみたものの、どうしてもAさんに相談したいという気にはなれなかった。
 
検索データ結果の求人と睨めっこして、数打ちゃ当たるで気になった企業にまず応募して場数を踏む。10社応募して3社書類が通ればOK。さらにそこから1次面接、最終面接と、1社内定をもらうためには15~20社の応募が必要らしい。
 
この現実も私をネガティブ思考にした。突然知らないステージの上に乗せられて、値踏み(評価)されているイメージ。理不尽に傷つき疲弊していく心と体……想像だけでぞっとする。
 
こうして時間が経つと、再就職活動の段取りさえも忘れがちになる。気を取り直してハローワークでたまたま見かけたセミナーに参加してみることにした。
 
そこでセミナー講師をしていたBさんは、まさに私の想像していたコンサルタントだった。元々は民間企業で人事・セミナー研修、カウンセラー等を経験したというBさんは、とてもよく人を見ている人だった。
 
今まで支援をしてきた人の実体験を交え、大人数を相手にするセミナーでも話が上手で面白かった。セミナーで行ったエゴグラムという性格診断テストの結果を見て、「事務職より自分で何かを発信していくとか、楽しいって思える仕事の方が良いんじゃないの?」と言われた。
 
精神的・時間的に安定するであろう事務職、経験を活かして前職と同じウエディング業界、新しい扉を開いてみる? と迷走中だった私は、この人に相談したいとその場でアポを取った。
 
Bさんに相談すると、モヤモヤしていた風景に少し光が見えてきた気がした。前職や前々職を辞めたきっかけ、そもそも何故その仕事をはじめたのか。これからはどのように働きたいのか。
 
なぜ鎌倉に移住したのか、結婚するつもりはないのか、という素朴な疑問まで、話を聞きだすのが上手だった。話すことで自分でも整理がついてくる。
 
「自分には何もない」と自己肯定感の低い私に、「キレイな字を書くのね!書類は手書きにしたら?」と言ってくれたり、「もっとこんなこともできるわよ」と背中を押してくれるのだ。
 
AさんとBさんの違いは、書類だけでなく「私という人間をちゃんと見ているかどうか」そして、「否定しない」という事。否定的な言葉は、どうしても人をネガティブにしてしまう。
 
学歴や職歴、条件だけを見て仕事を紹介するならAIにだってできるし、その方がむしろ確実だ。そこに人が介するからこそ生まれるメリットを活かさなければ意味がない。
 
でも世の中でそれができる人がどれくらいいるのだろう? Bさんのようなコンサルタントは転職エージェントに行けばどこにでもいるのだろうか? 恐らくピンキリだ。
「どこで相談するか」でなく「誰に相談するか」が重要なのだ。
 
残念ながらまだ私の身の振り方は決まっていない。これからが本番になる私の再就職活動。でもどんな業種、職種にするにせよ、Bさんに気づかせてもらったように、自分に自信を持って正直にやっていけば、きっと上手くいくような気がしている。
 
そして人の振り見て我が振り直せ。目の前の「その人をちゃんと見る」「否定しない」ということを忘れずに、これを肝に銘じておこう。
 
もし上手くいかなかったら、それもネタになると思ってしまう私がいる。それはライティングゼミを受けたから。これって良いのか悪いのか……
 
 
 
 
***
 
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2022-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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