poco a poco で行こう!
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:みっこ(ライティング・ゼミ12月コース)
「ここに宣言する!
優秀な指揮者になることを!」
私は、心の中で誓った。
なぜかって??
それが私の「望む人生」を手に入れる、近道だと
気付いたから。
これは、音楽センスゼロな私が、オーケストラの
指揮者を目指す壮大なサクセスストーリー……
ではない。そういった類の話を期待している方
は、そっとこの画面を閉じてほしい。
この話は、何も特別な話ではない。オーケス
トラという特殊な環境の話ではなく、もっと
身近な話だ。
この話を読んでも音楽の技術は上がらないが、
最後まで読んだ時、きっと、あなたも優秀な
指揮者を目指したくなるはずだ。
私が指揮者を目指し始めたのには、訳がある。
話は、2週間前に遡る。
以前勤めていた出版社の先輩と、話す機会が
あった。その先輩も会社は退職して、今は沖縄
でフリーランスのライター、編集者、ディレ
クターなどの仕事をされている。
大学卒業後、周りと同じように就職活動をして、
同じように就職した私にとって、フリーランス
という働き方は未知の世界だった。
フリーランスの働き方について、もっと知り
たい。そう思い、次から次へと質問をした。
今の仕事に至るまでの経緯や、やってみて良か
った仕事、きつかった仕事、それから休日の
過ごし方も……。
話を終えて一人になった時、
私の心に、1つの言葉が残っていることに
気づいた。それは、仕事を「減らす」と
いう選択肢についてだった。
「フリーランスで働くようになって変わった
のは、自分に合わせて仕事を調整できるよう
になったこと。能力に合わせて仕事を増やす
のはもちろんだけど……仕事を減らせるのも
メリットだと思う」
仕事を「減らす」ことについて考えたことが
なかった私は、この言葉がとても心に残った。
会社員時代、仕事は常に目の前にあった。
日々の仕事に追われた私は、いつの間にか
「する」も「しない」も選択しなくなっていた。
ただただ、受け入れ続けるだけだった。
業務の効率化やスリム化という意味では、
会社員時代も仕事を減らしていた。
しかし、それは自分に与えられた仕事を、
ただ受け入れた結果にすぎない。
自分で選んで、自分のためにとった行動
ではなかった。
もし、仕事を効率化することで就業時間が
短くなって、空いた時間でディズニーランドに
でも行けるなら、自分のために、自らその選択
をしていたかもしれない。でも、空いた時間は
また別の業務に充てられるだけだ。それは、
当時の私にとって、あまりにも当たり前すぎた。
仕事をしたい時は、仕事を「増やす」
休みたい時は、仕事を「減らす」
「減らす」のも「増やす」のも、自分で選べば
いいのだ。これは何も、仕事や遊びに限った
ことではない。
勉強も趣味も介護も子育ても……人生における
全ての事柄で言えること。
もっと自分でコントロールできるはずだ!
私の人生に起こるすべてを。
いや……むしろ、もっとしなきゃいけない!
誰かに決められたことを、ただ実行するだけの
人生なんて……つまらないじゃないか!
そう思った瞬間、良い考えがひらめいた。
そうか、それなら指揮者になればいい!
オーケストラの演奏者達に指示を出すように、
人生の中で起こる、あらゆる出来事にも的確に
指示を出せるような……
そんな、優秀な指揮者になってやる!
人生という、壮大な1曲のメロディーは
流れ続ける。
私が優秀な指揮者でなければ……
見せかけの指揮者なら、その演奏はただ闇雲に
続くだけだ。演奏中、予期せぬ出来事が起こっ
ても、ずっと同じように指揮棒を振り続ける
だろう。たとえ、リズムが狂い、音色がくすみ、
全体のバランスが崩れたとしても。
どの音も止められず、うつむいて、楽譜ばかり
を見続ける。
私は、そんな見せかけの指揮者だった。
ただ指揮棒を振り続けるだけの姿は、
ただ仕事を受け入れていただけの、会社員時代
の私と重なった。
でも、まだ間に合う。
今すぐに、演奏を立て直そう。
そして、私の「望む人生」を手に入れよう。
私は顔を上げ、演奏者達を見渡した。
一つ一つの音色に耳を澄ませ、しっかりと
指揮棒を握り直した。自分の人生と向き合った
瞬間、めちゃくちゃだったリズムは、少しずつ
整いはじめた。
これからは、私の演奏を楽しもう。
タイミングを見極めて、自ら指示を出そう。
出番が来るまで、演奏者達には待っていて
もらえばいいのだ。
影で支える音色が、主旋律を引き立てる
ように、私の人生でも「やるべきこと」が、
「やりたいこと」を支えてくれることがある。
けれど、いつからか「やるべきこと」のせい
で、「やりたいこと」を犠牲にしていない
だろうか?
指揮棒を奪われ、好き勝手な演奏をさせては
いけない。私の人生の指揮者は、私しかいな
いのだから。
今の私の楽譜には、こんな文字が記されている。
「poco a poco(ポコ ア ポコ)
=少しずつ少しずつ」
それを心にとめて、指揮棒を振り続けている。
いつしか、自分のために演奏し続けた
メロディーも、自分だけのものではなくなる
日が来るはずだ。
私のメロディーも、誰かの心を癒し、勇気
付けることができるといいな。
***
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