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人生は123(ワンツースリー)~馬からの教え~


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:わこ(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「なんで飛べんと!」
練習しても練習してもうまくいかないことに、自分はもうだめなんじゃないかとか、辞めたほうがいいんじゃないかと日々思っていた。
最近、よく自分を振り返ってみるのだが、この頃のことを鮮明に思い出した。
 
高校3年間馬術部だった。
「馬術部」というだけで「お金持ち」や「お嬢様」とイメージする人は少なくない。
が、しかし、私がいたところは、お金持ちのお嬢様が通うような乗馬スクールとは全く違い、地元の競馬場で部活を行っていた。
その競馬場は、学校から自転車で15分ほどいったところにあった。
他校の生徒と一緒に部活を行う。他の部活とはちょっと違う環境だった。
教えてくれるのは、競馬場の職員だ。学校の先生は、試合以外に来たことはない。
 
小さいころから、父が馬に乗せてくれた。近くの農家が馬を持っていて、乗馬用の馬もいたので時々乗せてもらっていた。
動物が大好きだったからか、自分よりも大きな馬に、なんの躊躇もなく触れ合っていたのだ。
そのせいなのか、学校に馬術部があると聞いたとき、両親の反対もよそに私は馬術部へ入部した。
 
馬術部では、馬房(馬小屋)の掃除から始まる。藁(わら)の上に糞をするので、それをフォークで救い上げ外に出す。時には、コロコロになった糞を手で救い上げ、仲間に投げつけることもあった。
言っておくがこれはいじめではない。雪国で雪合戦をするが、その糞バージョンである。
 
糞取りが終わると湿った藁を外に出し、新しい藁を敷き詰める。
自分が寝転んでもいいくらいきれいで、新しい藁のにおいが鼻をくすぐる。
 
「よし! これで完璧」そう言いながら、馬を馬房へ戻す。
その間の馬との触れ合いも楽しかった。
 
馬との触れ合いは楽しかったが、練習は辛かった。
今の時代なら、親からクレームが出ているだろう。
ハードな練習だった。
 
時には、障害のバーを飛ぶために、馬と一緒に障害に向かってまっすぐ進むと「体の中心で馬に乗れ。両足の鐙(あぶみ)をはずせ! 手綱も離せ!」ってどういうこと?
想像できますか?
 
両足で馬の体を挟むだけで、踏ん張るための鐙もなく、命綱の手綱にも頼れない状況だ。
 
時には、飛ぶタイミングが合わず、馬から落ち、身体をバーにたたきつけれることもあった。それでも這い上がり再び馬に乗っていた。
まわりはできていても、私はできない時期が長かった……。
 
練習は週6回欠かさず行った。テスト期間中は、部活禁止だったが一人でも練習をした。
それでも人よりできるようになるのが遅かった。辞めたほうがいいのか……
諦めたほうがいいのか……「なんでうちだけ飛べんと……」
できない自分を否定した。
 
時には、私の乗る馬が馬房で休憩をしているときに、馬房に一緒に入って体を触りながら私が泣いていると、それを察するかのように、私の頬に顔を寄せて慰めてくれた。
「頑張っているじゃないか」「諦めるなよ」と言っているかのように……
 
ある日、私の師匠が教えてくれた。
「障害に向かったら、障害の両脇にバーをかける支えがあるやろ。その3m手前から「ワンツースリー」と言って飛べ!
その掛け声が合わなければ、もう1歩、馬が踏み込むか、馬が止まってしまうかだ。
距離感だ! 距離の感覚をつかめ!」と。
 
言われたことをやってみた。最初は全くうまくいかない。馬と息が合わない。
無理に合わせようとすると、飛ぶタイミングが合わない。
何度も何度も練習した。
 
何日たったのだろうか。
ある日、いつものように練習しようとしたその時、馬が私に語り掛けてくれたように感じた。
「今日はできるよ」そう感じたのだ。
 
準備運動が終わり、いよいよ障害の練習だ。
障害の前で「ワンツースリー」と掛け声。
馬が宙に飛び、私も身体を前傾し障害を一緒にとんだ!
「タイミングがあった!」
この時のことは今も忘れない。
初めて自分も諦めなければ、できることがあるのだと感じたその瞬間だったからだ。
 
「阿吽の呼吸」
まさしく、この言葉がぴったりだ。
 
それからは、どんな障害も一緒に飛んだ。
一緒に試合に出たのは1年ほどだったが、それからの私たちは、一緒に賞を取り続けた。
まさしくこの時のあの馬は私の良きパートナーだった。
当時すでに10歳を超えていたので、今はもうこの世にはいないだろう。
 
思うにこの3年間、馬と一緒にいたことで、私は人生で役に立つことを教えてもらっていたことに気づいた。
 
職員とかかわることで、社会人になってからの人とのかかわりや、馬を通して諦めないこと、相手を思いやること、自分を責めないこと、自信をもつこと等々……
 
特に、決断するときのタイミングや、人とのかかわりの距離感。
あの時の障害前の「ワンツースリー」の掛け声ではないけれど、これまでの人生の中で、自分で自分を後押しできないときにこの呪文を使うようにしている。
 
人よりできることが少なくても、できるようになるために諦めない自分を励ましてくれたあの時の馬たちに感謝したい。
「なんで飛べんと!」と自分を責める私はもういないよ。みんなありがとうね。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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