メディアグランプリ

​​見知らぬママと、お風呂担当の夫から得た、子育てのヒント


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:夏川ゆき(ライティングゼミ12月コース)
 
 
ある日の午前中、私は疲れた顔に笑顔を貼り付けながら、ようやく歩けるようになりムチムチの手足を必死になって動かしながら歩く息子の背中を、追いかけていた。
時刻はAM10:00過ぎ、今日という一日は始まったばかりであり、まだ疲れを見せるには早すぎる時間だ。
 
しかし私はすでに疲れていた。なんなら、朝起きてもう疲れていた。
 
理由はわかっている。新型コロナウィルスの流行で保育園が休園となり、仕事をセーブしながら家庭保育する日々が想像以上にきつかったのだ。
 
運悪く、といったらアレだが、2歳目前の息子はプレイヤイヤ期とでもいうのか、気に入らないことがあるとはっきりとNO! を突き付け、簡単には折れてくれず、家の中でも外でもスーパーでも電車の中でも、泣き叫ぶ技を身につけた。
今朝は、先日ルミネで意気揚々と購入した明るいグリーンのニットをおろして気分上々の母を指差し、「似合わない!!」とでも言ってるかのように顔を真っ赤にして怒り狂い、母をヒートテック一枚にしたらやっと満足して去っていった。しばらくあのグリーンの爽やかなニットを私が着られる日はこないだろう。
 
休園期間は、予定では7日間で、今は3日目だった。まだ折り返し地点にも立っていないのに、この疲労感。インスタのお疲れママに向けたPR投稿に反応し、藁にもすがる思いで購入した「豊潤サジー」、毎朝飲んでるのに……。もはや「すっぽん小町」にも手を出す必要があるの?と朦朧とした頭で考えつつ公園を散歩していると、見知らぬ親子が目の前を横切った。
 
はしゃぎながら歩く2歳半くらいの男の子と、ベビーカーに乗せた生徒半年ほどの赤ちゃんを連れた、30台前半くらいの、明るいベージュの髪色をしたお母さんがお散歩に来ているようだ。
あぁ。一人を育て上げるのにこんなに疲弊しているのに、二人育児なんて本当に大変だよなぁ、なんて考えながらしばらくその親子を観察していてあることに気がついた。
 
2歳半くらいのお子さんへのお母さんのリアクションが非常に薄味である。塩対応とはまた違う、ものすごく肩の力が抜けた対応。
はしゃぎながら歩き、時々立ち止まってお母さんに話しかけるお子さんに、「そだね〜」など適度にあいずちを打ちつつ、過剰なリアクションがまるでない。私がこっそり見つめている間、お母さんからお子さんに話しかけることはなかった。お子さんはというと、そばにお母さんが立ってくれている安心感を感じながらも、自然と自分で遊びを見つけては楽しそうにはしゃぐ。
 
一方でどうでしょう。疲れ切った私の、今日公園に来てからの行動を振り返ってみる。
歩くのが楽しくてしょうがなく、ずんずんと芝生を突き進む息子を追いかけながら、「おひさまカンカン! いい天気だね〜〜〜〜」「あ、白い小鳥さんいるよ! ちゅんちゅんだねぇ〜〜〜〜」「赤いお花が咲いているね〜〜〜〜?」「ピューっと風が冷たいねぇ?!」と、永遠に話しかけていたではないか。
 
なぜこんなに話しかけているのかというと、息子が0歳の時に読んだ育児本で、「子供の語彙力UPのためにお母さんは子供にひたすら話しかけましょう!」「できれば形容詞も用いると、一文でより多くの言葉に触れられるのでGood!」のようなことが書いてあり、ほほうそういうものか、と納得した私は、雨の日も風の日も公園でも児童館でもショッピングモールでも、息子には極力話しかけ続けていた。
 
先ほどの親子を見て、雷に打たれたような衝撃を受けた私であったが、二児のママから育児のヒントを得たような気がして、少しだけ肩の力が抜けるのを感じた。
 
その日の夜、お風呂担当の夫に息子を任せ家事をこなしていると、お風呂からギャンギャンと息子の泣き声が聞こえてきた。最近はお風呂のために服を脱ぐのもイヤ、頑張って脱がせたら今度はシャワーをかけられるのもイヤときてお風呂に入れるのも一苦労なのである。
「今日も荒れてるなぁ」とお風呂場の夫に同情しながら、洗濯物をたたんでいると、5分ほどでピタッと息子が泣き止んだのがわかった。
お風呂からご機嫌で上がった息子の体を拭きながら、夫に「泣き止んでよかったね」と伝えた。すると
「もうどうしようもないから、俺だけでもお風呂堪能しようと思って「いい湯だな、アハハハン」って歌ってたら「えへへ」って泣き止んだわ」と、夫が教えてくれた。
「か、肩の力、抜けてる!」
思わず唸った。
 
公園で見かけた見知らぬママも、夫も、内容は違えど、程よく肩の力を抜けた育児をしていた。もちろん育児書に掲載されていた声かけを全力でやって、それでも育児というフルマラソンを完走できるのなら、やるに越したことはなのだろう。でも、私のように、今にも生き絶えそうな顔をしながら、「小鳥がちゅんちゅん」とか言っても子供に全然響いてないだろうし、むしろ心配かけるだろう。
 
なぜかいつも、「今私が全力で対応しないと、この子の将来に影響するのではないか?」と、焦りに近い気持ちを抱えながら育児をしていたのだが、子育ては自分一人でするものではないし、ある程度肩の力を抜いて育児するのが、長い長い子育てマラソンを健全に走り抜くたには必要なのかもしれない。
 
保育園休園というピンチに直面したことで、改めて、これから始まるイヤイヤ期本番に備える心構えが、少しだけできた気がしている。
 
さあ今日も、冷凍ハンバーグに納豆ご飯で、息子と夫と笑顔の夜ご飯としよう。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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