メディアグランプリ

「全力で挑むバレンタイン」のすすめ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中江 園加(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
また今年も、色とりどりのチョコレートが店頭に並ぶ季節になった。
「このチョコどうかな? でもさすがにハートは恥ずかしすぎ?」
「かわいい! これもらったらショウくん絶対嬉しいよ!」
「受け取ってくれるかなぁ」
 
そんな中学生くらいの女の子達の会話を微笑ましく聞きながら、自分の学生時代のバレンタインの時はどうだっただろうかとふと思い返してみたが、思い浮かぶのはどれも友達の恋の応援をしている自分だった。
 
そうだ、私にとってバレンタインは恋愛系連ドラの最終回を見ているようなものだった。
ずっと恋模様を見てきた主人公である女友達と片思いしている男の子がくっつくのかどうか、ハラハラドキドキして、すれ違いや恋の駆け引きに目が離せない。主人公の気持ちに自分を重ね合わせ共感して、一緒に泣いたり笑ったりする。
 
けれど、その恋愛ドラマの主人公は私ではない。
私はあくまでもそのドラマの一視聴者だ。
 
主人公にはなれないモブキャラの私は、友達の恋が上手くいくように、無事にチョコを渡すことができるように、放課後の教室で一緒に男の子を待ち伏せしたり、時にはお目当ての男の子を呼びに行ったりもする。友達が上手くチョコを渡せて恋が実った時にはすごく嬉しかったし、無事に自分のミッションをやり遂げたような謎の充実感さえあった。
逆に、どうしても直前で勇気が出なくてチョコを渡せなかった友達が泣いているのを「別にバレンタインだけが告白するチャンスな訳じゃないよ」なんて、分かったような顔をして得意気に慰めたりすることもあった。
自分で好きな男の子にチョコをあげたこともないくせに。
 
そんな風に、思い出すバレンタイン恋物語の主人公はいつだって私ではない。
バレンタインデーはいつも「自分の恋に一生懸命にがんばっている誰か」が主人公で、私自身が主人公になるべく自分の恋の土俵に上がったことなんて一度もなかった。
別に私に好きな男の子がいなかった訳ではない。なんなら毎年好きな男の子はいた。だけど、「バレンタインデーに好きな男の子にチョコを渡す」なんて、そんなスゴイこと自分ができるなんて到底思えなかったし、そんなことができる自分自身を想像できたことさえなかった。だから素直に自分の気持ちを伝えてチョコを渡せる友達は本当に勇者だと思ったし、例え上手くいかずに、渡せなかったチョコレートを自棄になってゴミ箱に捨てて泣いている姿さえ私には最高に格好良く見えた。そんな勇気ある主人公の女友達の恋を全力で応援することで、もしかしたら私は「勇気の出せないちっぽけな自分」から目を背けていたのかもしれない。
私はいつだってそうだった。結果がなんとなく分かって勝算があるような、安全なことしかしない。恥ずかしい思いもしたくないし、ましてや失敗したり、傷つくことなんて絶対に嫌だ。自分の想像できる安心な場所で守られていたい、ただの臆病者だ。
 
しかし、30歳も過ぎた今になって、ようやく「大抵のことは失敗しても成功しても本当はどっちでもよくて、そのことを体験したことに価値があるのではないか」と思えるようになってきた。こうやって過去を懐かしく振り返った時に「バレンタインデーに告白するドキドキした放課後」という思い出が一つくらいあっても良かったなと今更ながらに思ったから。例えその告白が成功しても失敗しても、「その物語の主人公に自分がなる」という体験を欲しがっている自分に気がついたのだ。
きっと当然、その渦中にいる時は好きな子に振られるなんて一大事で、それこそ死んでしまいたいと大袈裟に思ってしまうような大事件かもしれないけれど、きっといつかそのすべてが思い出に変わる時が必ずくる。例え、どれだけ悲しいことでも、どれだけ苦しくても、どれだけ涙を流したとしても、みんなみんな、いつかは思い出に変わって、「そんな時もあったな」って目を細めながら懐かしく過去を振り返る時が来る。その時にどれだけのことを「自分が主人公」で体験できたのか、どれだけ自分の心が動いたのか、何を思って何を感じたのか、嬉しかったことも悲しかったことも、優しい気持ちも、切ない気持ちも、愛おしいと思う気持ちも、その全てが「ちゃんと自分が主人公で選べていたのか」が大切なんだ。
他の人が主人公のドラマに自分の気持ちを重ね合わせて疑似体験するのではなく、あくまで「主人公は自分」になれているのかが大事なのだ。
だって、私に起きる全てのことは、私にしか体験できないことなのだから。
 
今の私だからこそ体験できることは何だろう。
今の私にしかできないことは何だろう。
 
失敗しても、成功しても、どれだけ良くても、どれだけ悪くても、
いつかは全て、終わりがくる。
 
だとしたら、全力で「思い出作り」をしよう。
迷ったら「今の自分」にしか体験できないことを選ぼう。
 
「かけがえのない今」を全力で生きる主人公になるべく、私はチョコレートを手にとった。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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