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たつじ事件

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:あべえみこ(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
かずきが居ない!
30分前「家でテレビを見ている」と言ったかずきを一人残し用事をすませようと出かけてしまった事を母は今、後悔していた。
 
居るはずの家から突如居なくなってしまった5歳になったばかりのかずきを、家じゅう探し「やはり居ない!誘拐?」いらぬ妄想が頭を駆け巡る。
母は背筋が凍る思いで外へ飛び出した。とにかく近所を探しまわる・・・・・。
 
玄関の鍵は開いていた。どんどん浮かんで来るいらぬ妄想をかき消しながら、
かずきが一人ふらっと外へ出ていったのなら5歳児の足、そんなに遠くには行っていないだろう。すぐに見つけ出せると自分に言い聞かせ探すが、なかなか見つからない。
 
家を出るときに電話していた夫からようやく折り返し電話が来た。
事情を話すと「どっかそのへんに居るんじゃないか、よく探してみて」と
まあなんとも呑気な言いぐさ。母は焦りをとおりこし怒りを覚えた。
「とにかく仕事中の夫はあてにならない」
自分で何とかするしかない!「一刻も早く見つけなければ!」
そんな母の願いとは裏腹に捜索は難航。どこへ行ったのか?
 
「さらわれた??」「大通りに出て車に・・・。線路で・・・・」
いらぬ妄想が頭の中を駆け巡り母は泣きたくなる。そんな自分を必死に落ち着かせながら
 
ほんとうは一緒に連れていくはずだった、かずき。
「テレビを見ている」と言ったかずきを、どうしてすんなりそのまま置いて外出してしまったのか。自分を責めたくなる。できることなら時間を今朝まで戻したい!
後悔の念がどんどん溢れ出すが、後悔先に立たず。母はとにかく無事でいてくれる事を祈るしかなかった。祈りながら必死に探した。
 
かずきは姉と妹、女きょうだいに挟まれ、わんぱくと言うよりは優しい雰囲気を持った
一見おとなし気な男の子だった。
昨夜の夕飯の様子が懐かしく母の脳裏に蘇る。母はこころの中で叫んだ「かずき何処?」
 
母は祈りながら探しまわるしかない自分に憤りを感じはじめていた。
そんなとき、公園で遊んでいた小学生たちから「下着姿でさまよっている男の子を見た」という目撃情報が寄せられた。どっちの方向に行ったか詳しく聞き出したいのだが目撃した小学生たちも自分たちの遊びに夢中で、それ以外の詳しい情報を残念ながら覚えていない様子だった。目撃された下着姿の男の子、かずきにちがいない!
 
母はさらに焦りはじめた。近所にはトラックが多く通る道路、踏切までもがある。
いや、とっくの昔に焦りは頂点に達していたがパニックになりそうな自分の精神状態をどうにか必死に落ち着かせながら近所を探し回っていた。
 
ものすごく長い時間が経過した感覚に襲われ、生きた心地がしない顔面蒼白の母
一通りかずきが居そうな所を探したが見つからず……。途方に暮れる。
 
そんな自分を落ち着かせ、とにかく交番へ電話してみることにした。
母「5歳の男の子が迷子になりまして……」
交番「お名前は?」 母「あべかずきです」交番「たつじくんという男の子なら今お預かりしているのですが……」その時「ちがう!たつじ!」と電話の後ろで叫ぶ男の子の声
母は直感した「かずきだ!」慌てて交番へ行くと部屋の奥で椅子に座り足をパタパタさせているかずきを発見! 生きた心地がしない約30分から解放された瞬間だった。
 
「もう逢えないかもしれない」ところまで覚悟していた母は全身の力が抜け一気に地獄から天国へ。
 
「下着姿の男の子が一人で歩いていた」と通りすがりの人が交番に連れてきてくれたらしい。ここが日本でほんとによかった。見ず知らずの親切な人に母は心から深々と敬礼した。
 
交番で名前を聞かれたかずきは活舌が悪いせいか?まだちゃんと発音できなかったのか?
「たつじくん」と聞き取られ「ちがう!ちがう!」と言っていたようだ。
 
それにしてもなんで、かずきは一人外に出てしまったのだろう?
 
どうやら かずきはテレビで流れていたマンガ「赤ずきんちゃん」を見ていて急にオオカミが怖くなり外に飛び出したようだった。大人の感覚で考えると家より外の方が怖くなかったのか?と言いたくなってくるのだが・・・・・・。
 
本人はそうでもないようで、泣きもせずケロっとしていた。
 
5歳頃までは身体的境界線感覚が薄く、「見ている景色=自分」という感覚のほうが強いと本で読んだことがある。5歳のかずきは目の前の自然と一体化し、母の心配をよそに自然との一体感を楽しんでいたのかもしれない。
 
そんなかずきも今年18歳。
勉学が好きな青年へと成長し今春から大学一年生になる。
筆者の甥っこにあたるかずき。未だに親戚が集まると語られる「たつじ事件」
 
当の本人は苦笑い。その時のことはところどころ覚えているようだ。
 
当時、顔面蒼白でかずきを探しまわった母は「たつじ事件」が教訓となりその後の子育ては
後悔のないように!が常となったようで、その効果効能なのか?は定かではないが
かずきを含めきょうだい3人とも身内がいうのもなんなのだがとても素直で伸びやかな人間に成長してきているように思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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