パニックを起こしそうになったら、自分を褒めよう
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:蒲生厚子(ライティング・ライブ名古屋会場)
「あ~、時間がない!」
また今日もやってしまった。出かける前のバタバタ。
さっきまで余裕があったはず。家を出るには少し早すぎる。ちょっとスマホをチェックして、それから、トイレを済まして。そこまではよかった。
あ、コートだ。どれにしよう。
今日は寒そうだから、腰が隠れる長めの丈がいいよね。
あ、このコートならどのマフラーがいいかな。えーっと、これはモゴモゴすぎか?
このへんから頭が冷静さを失っていく。急いで、急いで。
あ~どれにしよう。えっと、まぁいつものこれでいいか。
そうこうしているうちに、時間が砂のように落ちていく。ザラザラザラ。
おっと、手袋がいるかな。あったほうが、物を触ったときの感染予防にもなるし、持って行くか。
あれ? どこにいった? 昨日使っていた手袋。えーっと。ま、なくてもいいか。
早めに出かける心づもりをしていてよかった。今、何時だろ?
あ、でもスマホの時間を見ていると遅れてしまうから、とにかく靴をはこう。
よし、どうにかいつもの時間には出られるはず。
鍵をかけようとしたら、鍵がない。
えっ~、まただよ。いつもこういうことになる。
靴を脱いで、居間の壁に掛けている鍵かけフックのところに戻る。
フックに掛かったままになっているときは、まだいい。
そうでないときが最悪なのだ。
鍵を持って玄関まで行って、無意識にその辺に置いてからトイレに行ったり、コート掛けに行ったりするので、とんでもないところに置いてしまうのだ。
そんなに広い家ではないのに、なぜかポンと無意識に置く場所にはことかかないらしい。
結局時間がなくて、とりあえずスペアキーを取りに行って、それを持って出かけることになる。
出かけるときに落ち着いて一つひとつやることをクリアしていけば、きっと鍵がなくなることはない。せめて、落ち着いて探す心づもりがあれば、そんなに時間がかからず探せるはずだ。なぜなら、スペアキーで帰宅したあとは、「あれ~こんなところにあった」と笑えるほど単純な場所にポンと置いてあるからだ。
毎回、同じようなことを繰り返している自分って何だろう?
今までは情けないとか、学習能力がないとかですませてきたが、真剣に考えてみた。
どうやら、私は時間がなくなってくると、必要以上にパニックを起こして思考が停止する傾向にあるようだ。だから、落ち着いて考えたり、行動したりできなくなる。逆効果だとわかっていても、やたら焦ってじたばたと必要のない動きをくり返し、墓穴を掘っていく。
幼い頃からそうだったかというと、そうではない。やたら焦って失敗したことはないと思う。何でも余裕をもって準備するたちではなかったが、ぎりぎりでも恐ろしい集中力を発揮して良い結果をもたらすことが多かった気がする。夏休みの宿題も、試験前の一夜漬けも、1を10に活かす達成感を楽しんでいたほどだ。
よくよく考えるとひとつ思い当たる出来事があった。
かれこれ30年前くらいになるが、保育士の国家試験を受けたときのこと。その科目は実技試験だった。絵画制作で、課題はちぎり絵だった。
テーマは覚えていないが、問題なく気持ちよく下絵を描き、折り紙をちぎっていた。
あと45分。余裕だ。楽しみながら制作していた。
そして、ふと前の黒板を見た瞬間、凍り付いた。
頭の上に雷が落ちてくるかのようなショック。
あれ、試験の終了時間が違う……。
信じられない思いで、もう一度黒板をよく見た。私が思っていた終了時間より30分早い!
まさか、と机に置いてあった腕時計を見ると、あと15分しかない。
全く予想していなかった展開に、頭は当然パニックを起こしていた。その状況をつかむのに時間がかかった。ということは、あと15分で紙をちぎって貼り付けて仕上げなければならない。完全に冷静さを失っていた。
そして、驚くことに頭の芯がカーッと熱くなって、何も考えられなくなっていた。そんなことは初めての経験だったので、自分でもどうやって落ち着いたらよいのかがわからない。
まず何をどうしたらよいのか。「まだ15分あるじゃない」と頭の中に言い聞かせようとするのだが、頭がその冷静さを聞こうともしない。
背中に冷や汗が流れ、驚くことに手が震えだした。目で見てわかるくらいに手が震えて、折り紙を上手にちぎれない。
そうだ、とにかく糊で貼っていこう、できるところまで」と思い立ち、糊のふたを開けようとするが、手が震えてうまく開かない。
「どうしちゃったの?」完全に気が動転している自分に衝撃を受けた。
ショックから立ち直れないままに「はい、終わりです。手を置いてください」と、あまりに冷静な声に我に返った。
全くできなかったのは当然だが、終了のゴングに救われた気もした。
この経験がトラウマになったのか、その後、時間がなくなってくると落ち着きを失って、何も出来なくなってパニックを起こすことが増えてきたように思う。
心理テストで、コップに水が半分ある絵を見て「あと半分しかない」と思うか「まだ半分あると思うか」で考え方やとらえ方を知るという話がある。これを時間にたとえると、コップの水が減ってくると、「ああ時間がない」と気持ちが焦っているのだ。水量の高さだけ時があると思えればよいのだが、焦っているうちにどんどん蒸発しているわけで。
そういえば、あと5分でExcelの資料を修正しなければならないことがあった。「5分でなんかできっこない!」と思ったが、先輩が近くに寄り添ってくれて「ほら、あと少し。これを入れて、そうそう、ほらできた。もう少し。これを入れて、そうそう。あと3分あるから大丈夫。落ち着いて」と声を掛けてくれて、5分でできたことがあった。
よく「深呼吸して」と言われるが、焦っているとき深呼吸すら難しいことがある。そういうときは、先輩の言葉を思い出して「そうそう。いいよ。その調子。大丈夫。あと3分もあるよ」と自分を褒めながら、調子に乗せてあげようと思う。
そうするときっとうまくいく。
もし、時間切れでできなかったら「残念だったね~」と心の中でペロっと舌を出せるくらいの余裕をもって。
***
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