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自分の心に最大限注意を払う日に起きたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Miyuki(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
2022年2月18日。この日がやってきた。カレンダーには印がついている。
「最大限の注意を払って、心していってきます」
朝、そう肝に銘じて家を出た。
 
いつもの職場、いつもより自分の心に注意を払いながら仕事を進めた。
特に大きな出来事もなく昼になり、私はランチを取ろうと同僚と外に出てレストランに入った。
 
注文を済ませて待っていると携帯に着信がはいった。え! なんで?! 兄からだ。
普段はメールを送っても返事もよこさない不愛想な兄だ。それが平日の昼間、仕事の合間に電話をかけてきた。
ドキっとして電話にでる。
 
兄は開口一番言った「母さんから連絡あった?」
 
「え? ないけど、どうかしたの?」さらにドキッとする。
 
「いや、ほら、今朝は実家の方、雪が降ったみたいで大変そうだったから、連絡あったかな、と思って。連絡ないなら、別に大丈夫」歯切れ悪く兄は言う。兄も私も東京に住んでいる。
 
「え? どういうこと? 何かあったの?」
 
「いや、連絡ないなら別にいいよ。じゃあね」 兄はそう言って電話を切った。
 
確かに今朝は実家のある群馬県は平野部でも雪が降ると天気予報で言っていたけど、そんなことで母が私に連絡をよこす意味が分からない。
 
やっぱり、何かおかしい……。
 
そう思い、席をたって、母に電話をいれた。
2コールで母は電話にでた。
 
「なんで、みゆきまで話がいったの。今ね、救急車乗るところだから、またこちらから電話するから」
 
それだけ言って、電話は切れた。
 
「えっ! ほら! やっぱり! 何かが起きてる!」
 
ドキドキして兄に電話をかけ直す。
 
「今、救急車乗るところだって! 何がどうしたの? 兄には何か連絡がいったの? 何を知っているの?」
 
「俺にも連絡きてないよ。よく俺もわかんないよ」
 
「でも、私に電話かけてきたんだから、何か、知っているんでしょ! 救急車に乗せられたのは父なの? 母なの? なにか知っているでしょ!」
 
「救急車で運ばれるのは父で、母は付き添いだよ。たぶん大したことはないと思うよ」
 
……ほら、やっぱり知ってたじゃないか!
 
それでもそれ以上のことは分からず、電話は終わった。
 
とりあえず母からの連絡を待とう。席に戻るとオーダーしていたランチがすでにきていた。
 
不安な気持ちを抱え昼を終えた。
 
少し経つと母から連絡がはいった。
なんでも父はここ数日お腹の調子が悪く、かかりつけ医に連れて行ったが、そこでは原因が分からず「総合病院に行ってください。救急車呼びますから、そこで検査してください」
と、急遽、救急車で搬送され入院になるとのことだった。
 
 
私は早退届を出し、すぐさま実家のある群馬へ向かった。
 
「今から群馬へ向かいます」と母へ連絡する。
 
「今、検査中。まだ時間かかるみたい」との返事。
 
電車に乗り約3時間、私は実家の最寄り駅に着いた。すでに辺りは暗くなり夜がやってきた。
 
「着いたよ。まだ病院? 家? 必要なことは何でもするから、何でも言って」 とメールをいれる。
 
「まだ検査の結果待ち。だから病院に来て」との返信。
 
駅からタクシーに乗り病院に着く。すでに正面玄関は閉まっていて緊急入口へ回る。
慌てて中にズンズン入ると守衛のおじさんに「何の用! 手の消毒と検温!!!」と荒々しい声で怒られる。
「あ、すみません……」そうだ、コロナ禍だ。気が気でなくて、検温も消毒も忘れていた。
 
母からは「検査の結果はまだです。コロナで病棟に入れる人は一人だけだからロビーで待ってて」と連絡が入りロビーで待つ。
 
少し経つと明るかったロビーも必要最低限の明りだけとなり薄暗くなった。ロビーで一人、待つ。守衛さんに怒られたし電気も暗いし気持ちは鉛のようだ。
 
1時間程、待っただろうか。母が降りてきた。
 
血液検査もMRIもやったけれど、どこも悪いところがない。本人は大したことないから、かかりつけ医にも行きたくないって言ったのに、お母さんが行った方がいい、って言うから、こんなことになった! 大げさなんだ! 入院は嫌だ! って怒ってる、とのこと。
 
「そうか、良かった。怒れるぐらいなら本当に大したことなさそうだ」とようやく心配が薄らいだ。
 
兄からの突然の電話、救急搬送、大急ぎの帰省、様態は不明、暗闇で一人待つ心もとなさ、それらが溶けてゆく。
 
疲れを感じたが母はもっと疲れているだろう。とにかく私は安定して優しい心でいないと。
 
母と一緒に家に帰り、入院に必要な書類や衣類などを整えた。
 
 
 
夜が明けて、朝から母に電話がはいる。父からだ。
「きっと、『早く迎えに来てくれ』っていうんじゃない?」と言いながら電話に出るとやっぱりそうだ。「退院するから早く迎えに来てくれ」と勝手に言い張る父。
 
「そんなこと言ったって、先生がいいって言わないと退院できないよ」と私も母も言うが、父は家に帰る! の一点張りだ。
 
困ったものだ……。
 
命に全く別状がないことが分かり、昨日の心配もほどけると次に頭を悩ますのは「頑固でわがままな父をどう説き伏せよう」ということだ。
 
そうこうしているうちに母の携帯がまた鳴る。父から何度も「家に帰る」の電話がくるので、またかと辟易していると、今度は病院の先生からだった。
 
曰く、昨日の検査結果では悪いところは見つからず、ご本人がどうしても家に帰りたいと言っているので、外来でまた来て頂き、ご家族が大丈夫でしたら退院してもよいですよ、とのことだった。
 
はぁ、そっか。母と顔を見合わせ「では、迎えに行こうか」と車を病院へ走らせた。
 
先生と改めて話すと、昨日の検査は問題無しでしたし、現在飲んでいる栄養剤で腸の様子が乱れることもあるので、とのことだった。かかりつけ医さんもそこで出来る最大限の検査をしてくれたが原因不明で大事をとって総合病院を紹介してくれたようであった。
 
ある意味、一件落着。
 
私の2022年2月18日。大きな心の揺れを経験したが、無事、時は過ぎた。
 
実は易学でみると、この日は壬(みずのえ)寅(とら)の年、壬寅の月、壬寅の日で、壬寅が3つ並ぶ、かなり珍しい日だ。
そして、私はその壬寅の生まれである。
易学的にこの日は、私にとって大きな事が起こる、心して過ごせ! という日であった。
 
そして最も肝に銘じておかなければいけないことは、自分は正しいのに、なんでこんな事が起こるのだ! と怒りの解釈をしがちだから、十分気を付けなさい、ということなのだ。
 
それを念頭に今朝、家を出たのだった。
 
頭に入れておいてよかった。
そうでなければ、きっともっと、心は乱れて、外の世界に不満をぶつけていただろう。
兄にも、かかりつけ医にも、病院の守衛さんにも、それこそ父に対しても、私の心配や不安を怒りという形にして、ぶつけてしまっていたかもしれない。
自分のなかの感情、解釈を野放しにしない。それを人生最大レベルで気を付ける日、それが2022年2月18日だった。
 
確かに想像だにしない出来事があり心が揺れた。でもそれだけで済んで本当に良かった。
 
病院からの帰り道、「まさか、みゆきにまで連絡がいくとは。知らせるつもりなかったのにちょうど救急車騒ぎの時、〇〇ちゃん(兄嫁)から『お義母さん、雪大丈夫?』って連絡がきたから、思わず今救急車乗るところ、って言っちゃった。それで連絡がいったんだね、迷惑かけてごめんね」と母が言った。
 
母も兄嫁も優しい人だ。心に最大限注意を払う日、それは人の優しさに気づく日でもあった。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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