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断食したら海外に行った気分になれた話


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ホシノナオミ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
月曜断食なるものをはじめてみた。
一番の理由は一向に変化しない体重と体脂肪率。
昔は二、三日気をつければ変化があった体重計の数字は今では微動だにしない。
運動だってやってみたが、できても週1回、ジムで1時間程度。
この数字を動かすには全然足りない。
ここはガツンと! と思って、月曜日だけ食べることをやめてみた。
もちろん、ちゃんとそれ用の本と1週間レシピを参考に。
 
月曜日に口に入れるのは、水だけ。
火曜日は、回復食と呼ばれるスープの三食。
水曜日から金曜日は、朝のヨーグルトと野菜中心のメニュー。
土曜日と日曜日は、好きなものを食べて構わない。
ちなみに水曜日から日曜日はお酒を飲んでもOKらしい。
 
そこまで厳密ではないものの、このルーティーンを4週間続けている。
結果を先に言ってしまうと、目的だった体重は多少減ったが、そこまで大きな変化に至っていない。
理由は、入れる方ではなく、使うほうだ。
平日はほぼ在宅勤務が続き、一日100歩歩いたのかすら自信が持てないほど、エネルギーを消費していない。つまり、摂取カロリーは減ったが、同時に消費カロリーも大幅に減っているのだ。
(別の言い方をすると、今まで通り食べていたら、大変なことになっていたのかもしれない)
 
これを失敗と言うかどうかはおいておくとして、私はこの4週間、このメニューを続けてきて良かったと思っている。
 
なぜなら、私はこの生活を通じて、なぜか海外で生活をしているような高揚感を感じているからだ。
 
10代の頃、私は父の仕事の関係で海外に住んでいた。仕事を始めてからもコロナ禍前は二ヶ月に一度、1週間程度欧州、北米、中国のどこかに滞在していた。
大変だったが、そんな生活が大好きだった。
 
この生活の何が好きだったのか、何が恋しいのか深く考えたことはなかったのだが、今回の体験との共通点から見えてきたものがある。
「異なる当たり前に身を任せること」だ。
 
海外である程度不自由になることで、いつもやっている当たり前ができなくなる。または、当たり前そのものが変わる。
 
「ちかっ!」とびっくりするぐらいの人との距離感。
日本では絶対考えつかない食べ物の食べ合わせ。
「食後はコーヒーか紅茶」が当たり前ではない食事。
なぜか別腹扱いで勧められるチーズ。
平日のランチから楽しむビールやワイン。
そんなキザな!と驚くプレゼントの渡し方。
 
もちろんこれらは「おもしろい発見」であるのだが、それより、これらがおもしろいと思う背景にある固定観念に気づくこと、これが海外で異文化に身をおくことの醍醐味だったのだ。
 
「異なる当たり前に身を任せる」場面を作ることは簡単なことではない。
 
国内の旅行だって「異なる当たり前」に遭遇することはできるだろう。でもその裏にある自分の固定概念を見つけられるほど「身を任せる」には、違いの範囲が小さすぎるし、時間も足りない。
 
海外はもとより、外出さえ心許ない今日、私は「食べる」という一番身近な当たり前をやめてみることで、普段とは異なる当たり前を作ってみたのである。
 
「食べる」ことをやめたことで気づいたおもしろい発見はたくさんあった。
空腹に対する自分の体の反応であり、食べるものの味の感じ方であり、水の美味しさである。
しかし、一番壊された固定観念は今まで疑いもしなかった「食べること=食べ物を摂取すること」である。
 
食べないことは、口に固形物を入れないという単純なことだけではない。
朝起きて何を食べるかを考える。
仕事の合間に昼ごはんの時間をどこで捻出するかを考える。
夕飯に何を作ろうか。その材料が揃っているか、揃っていなければいつ調達するかを考える。
そして、もちろん、食事を準備する時間、片付ける時間。
これら全てが必要なくなるということだった。
 
これらから解放されるだけで、1日が27時間あるんじゃないかと錯覚するぐらいだ。
一体自分は一生の内でどれだけ、食べることに関して時間と頭の労力を費やしてきたんだろう。
 
もちろん、食べることは大好きだ。
(多分普通の人より好きなのではないかと自覚するぐらいには)
食べたいものを考えることは、食べることと同じく人生の彩りの一つだと信じている。
だが、外食のままならない昨今、毎日の食事を準備することは、人生を彩るものではなく、必要な栄養補給のための作業だったことに気付かされた。
 
さて、大して減らなかった体重と引き換えに、私は今回何に気づき、何を得たのだろう。
 
食べることをやめることによって、食べることに関する頭のリソースが解放される。
異なる当たり前に強制的に身を任せたことで見えたことだが、これは大きな発見だった。
 
「やること」を考えるよりも、毎日の一部をやめることによって解放できるインパクトの方がはるかに大きいようだ。
毎日、固定費のように自分の思考を削っているものを解放することは、一日に使える頭の容量の総量を増やすことに等しいからだ。
 
考えてみれば、コロナ禍になって通勤、人と直接話す場などの当たり前が劇的に少なくなった。いや、当たり前が変わったということか。
 
しかし、その空いた隙間に入ってきた感情は不安であり、何かが出来ないことへのいらだちやあきらめだった。しかし、そうある必要は全くない。
できないことで、できることはたくさんあるのだ。
1週間のうち1日食べることをやめたことで、海外に行けなくても、自分を成り立っている固定概念に気づく。
そこから今の時代に前向きに向き合うヒントを得た気がする。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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