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フレンドリー接客・アレルギーへの処方箋


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:横井マリ(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
ぼりぼりぼりぼりぼりぼりぼり……。
 
自分が自分の顔をひっかいている音で目が覚めた。またやってしまった。
三寒四温の今日この頃、四音に該当する暖かな日になると必ずやってくる、目のかゆみ、くしゃみ、肌の痒み……。何を隠そう、私は花粉アレルギーだ。
 
春先は杉に、春はダニ、秋口になればブタクサに。季節性のアレルギーをベースに、ハウスダストにやられてちょくちょく咳が止まらなくなり、大好きな犬や猫のアレルギーにやられて目をぼんぼんに腫らしている。
 
そんな私であるが、季節性のアレルギーの症状の出方が少し変わっている。目のかゆみにアレルギーが集中するときは、鼻や皮膚はさほどアレルギー症状が出ず、鼻に症状が多く表れている時は、目や皮膚にはあまり症状が出ないのだ。まるで、体の中で上手にバランスをとっているかのように。
 
娘にも季節性のアレルギーがあるので、この傾向が遺伝していないか聞いてみたが、そうでもないらしい。ちなみに、どの部位の症状なら我慢できるか聞いてみた。
「私は目かな?」
目なら痒みを目薬で抑えられるが、鼻水は絶対に止められないから。確かに、うら若き乙女がマスクの下で鼻の穴にティッシュを詰め込んでいるなんて。ちょっと人には言えない。
 
そして、朝のニュースで気象予報士のお兄さんが、
「3月上旬から下旬並みの暖かさになるでしょう」
と番組を締めたその日から、徐々に症状が出始めた。
アゴが痒くなり、頬がひりついて化粧品が塗れなくなり、目の上が赤くなり……。
今年、私の季節性アレルギーは肌に出ることに決めたようだ。去年とまったく同様の症状なので、以前、皮膚科で出してもらった薬を塗ることにした。やたらベトつくその薬を塗りながら、塗り方を指導してくれたあの看護師さんを思い出す。
「指にた~っぷり出して塗って。で、そのまま15分放置したら、もう肌に浸透してるから、ティッシュで拭きとって。で、いつものお化粧とかしてもらっていいから」
 
帰りの車中、娘がこういった。
「あの人、めっちゃため口だったね」
そう、めっちゃ早口で、めっちゃため口のフレンドリー接客だった。
「病院に務めたばかりの頃、『ですます調』で話しなさいって社員教育受けてるはずじゃん。それがああなったのは、いつ、どうしてなんだろうね?」
私も同じことを考えていた。
 
娘の通っている学校でも塾でも、先生らは子どもらに「ですます調」で声をかけている。子どもの世界はもちろん、大人の世界だって、どこに行っても「ですます」が主流だ。逆に、サービス業に該当する職種で、ため口のフレンドリー接客を実施しているところを探す方が難しいだろう。それが常識ではなかったか?
 
常識。私にとって公共の場では「ですます調」で話すことが常識だ。だがしかし、接客業でため口は使ってはならないという法はない。ため口に違和感があるのは、私のこの常識が間違っているのかもしれない。
 
ついでに言えば、ため口で通っているタレントさんもいる。彼女らは、初めは違和感があったけれど、今やキャラが立っているということで受け入れられている。薬指導をしてくれた看護師さんは、ただキャラが立っていただけなのかもしれない。
 
モヤモヤが続いていたある日、娘が学校で、こんな話を聞いてきた。
「外国には、〇〇先輩って呼び方に当たる概念がないんだって」
人間関係に上下がないから、相手によって言葉を謙譲語や尊敬語に変化させる必要がない。使っている言葉が対等だから、相手とのスタンスも対等になりやすいらしい。
 
そうか、ため口とはスタンスなのだ。「ですます調」というのは自分と相手との間に距離、もしくは壁がある。逆に言えば、お互いこれ以上踏み込みませんよという暗黙のディスタンスがあり、安心感がある。一方、ため口は、近い。私のような生粋の日本人には、近すぎるのだ。会った瞬間、いきなり懐に入り込まれたようで、こそばゆいのだ。
もしかしたら、あの病院の看護師さんは外国籍の方か帰国子女の方で、誰にでも対等なスタンスだっただけなのかもしれない。
 
私の体中では、今、季節のアレルギー物質という違和感を排除しようと、免疫機能が働いている。それと同じで、あの時の私は、公共の場でのため口という違和感を排除しようと、常識という名を借りた免疫機能が働いていた。もし、またあの病院へ行くなら、ため口を排除するのではなく、受け入れられる抗体をつけておきたい。
 
まず、常識を変えよう。あの病院の、薬指導をする空間は彼女のサロンで、彼女はMCを任されたタレントさんのような存在だとしよう。
「ああ、そこに座って。この薬、いい子なんだけど、顔がめちゃくちゃ乾燥して、赤くなるの。でも、そこでやめないで塗り続けて欲しい。いい? 乾燥が気になる時は、ローションを塗って。ジェルはダメ」
ため口のフレンドリー接客、次回は案外、楽しめるかもしれない?
 
 
 
 
***
 
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2022-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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