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そして娘は姉になり、母は子になる


202*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大江 沙知子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「ハッピバースデートゥーユー、おめでとう~。何歳ですか?」
「3歳です」
 
もはやお決まりの、娘とのやり取りだ。ちなみに、握りこぶしをマイクに見立てて「何歳ですか?」と聞くのが娘、「3歳です」と答えるのが、お恥ずかしながら、母である私だ。以前、正直に「29歳です」と答えたら、律儀に訂正されたという経緯がある。理由は知らない。
 
とにかく、わが家の娘は、なかなか予想外な性格なのだ。
誕生日ごっこは、娘が3歳になってからしばらくブームだった。
 
「ママにプレゼントあげる」
「これ、ママに」
「ママ、ママ、いいものあるよ~」
 
矢継ぎ早に差し出される貢物の数々。私のズボンのポケットには、いつも何かしらおもちゃが仕込まれていた。一度や二度、そのまま洗濯してしまったことはもちろん、娘には内緒だ。
 
しかし、『すっかり、ごっこ遊びもサマになってきたな……』と成長を感じていた矢先、娘の赤ちゃん返りが始まった。
 
自分でできるはずの食事や着替えさえ、「食べさせて」「着替えさせて」「自分じゃいやだ」と駄々をこねる。私は『なぜ今?』と訝った。
 
 
思えばこれは、予兆だったのだ。娘の第六感とでも言うべきだろうか。
わが家にコウノトリが舞い降りたことを、私は程なくして知った。
 
 
私は、2人目の妊娠に、しばらく苦悩した。夫婦だけの時は自分のことだけを考えていればよかったけれど、娘がいるとそうともいかない。娘は私が体調が悪くても容赦しないし、保育園の送り迎えや食事の支度など、子どもがいるからこそ手を抜けない用事はたくさんある。それに、
 
『娘にはいつ伝えたらいいのだろう? 娘は困惑するだろうか? 保育園で言いふらされても困るし……』
 
赤ちゃんが生まれると知った時の娘の反応が気にかかった。吐き気と疲れを感じて横になりながら、悶々とした毎日を送る私。しかし、その憂いは思わぬ形で吹き飛ばされた。
 
「知ってる? ママのおなかに赤ちゃんがいるんだよ」
 
妊娠3ヶ月、何ということもない夕食時に、夫が何気なく言ってしまったのだ。私は『ええっ? 今?』と内心呻きつつ夫に目配せをするが、娘の反応は私たちの予想の斜め上をいっていた。
 
「赤ちゃんがいるの?」
「うん」
「ママが赤ちゃんなの?」
「う……うん??」
 
一体どういう意味なのだろう。親2人がポカンとする中、娘は勝手に何かを理解したようだった。
 
 
ここから、「母」の赤ちゃん返りが始まった。
正確に言うと、娘が母を赤ちゃん扱いし始めたのだ。
 
娘はことあるごとに、「ママは赤ちゃんだから寝てて」「髪の毛とかしてあげるね」さらには「オムツ替えてあげるからね」などと、甲斐甲斐しく私を育児した。しまいには、
 
「娘ちゃんがお姉ちゃんで、ママは赤ちゃんね」
 
などと、保育園でも言いふらしているようだ。お姉ちゃんの自覚が芽生えているのは喜ばしいことなのだが、やはりどこか斜め方向に間違えている気がする。
 
 
そこである日、私は娘に話しかけた。
 
「ねえ、ママのおなかに赤ちゃんがいるんだよ」
「そうだよ」
「ママは赤ちゃんにならないよ」
「ん? ママは赤ちゃんだよ」
 
埒が明かない。この頃になると、私のおなかもふっくらとしてきている。そこで私は娘の手を取って膨らみに当てた。
 
「ここにね、赤ちゃんが寝てるの。時々動くんだよ」
 
目を輝かせる娘。
 
「いつ出てくるの? 明日?」
「いや、明日はさすがに無理だよ」
 
素直で純粋な娘の反応には感嘆すべきだが、やはり色々と誤解はあるようだ。その日から、娘は毎晩布団の中で訊ねるようになった。
 
「赤ちゃん、動いた?」
「うん。今、モゾッとしたかな」
 
慌てておなかに手を当てて胎動を感じようとする娘。話しかけてみたら、と促すと、
 
「みかんは好きですか? ぶどうは好きですか?」
 
などと、これまた予想外の質問だった。しかも、グニョリと赤ちゃんが反応したのだから、これまた驚きだ。上の子が天然なら、下の子も、というところだろうか。
 
娘と赤ちゃんの驚きの交流はしばらく続いた。
 
 
現在、妊娠7か月になった。娘は相変わらず「ママが赤ちゃんね」と斜め上の発言をするものの、「赤ちゃんのオムツね、替えてあげるの」としっかりお姉ちゃんらしいことも言うようになった。
 
 
出産予定日まで、あと3ヶ月。
天然娘がお姉ちゃんになるまで、あと100日を切った。
 
その時、娘はどんな反応をするのだろう。
下の子を可愛がってくれるだろうか。本当にオムツを替えてくれるだろうか。
 
そして、娘はまだ知らないけれど、産後の母の身体は動けなくなる。
その時は、娘が私を世話してくれるだろうか。
 
娘はお姉ちゃんに、母は赤ちゃんに。
そうなる日は少しずつ近づいている。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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