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メディアグランプリ

パートのおばさん、お客様を激怒させる


202*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事: 油井貴代子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「あんた、何考えてんだ!」
お客様の目に入らないところに呼ばれて、私は叱責された。仕事で大失敗してしまった、どうしよう…… どうして良いかわからず、ただただ謝るしかなかった。
 
今の仕事を始めて、もう26年になる。それまで事務の仕事をしていたが、子供連れでもできる仕事ということで、レンタルモップの定期交換の仕事についた。それは家庭でお掃除モップを利用されているお客様の家を訪問し、お掃除モップの定期的な交換や、お掃除道具や洗剤などの販売をする仕事である。対面セールスということで、お客様の顔を見ながら話を合わせ、生活に沿ったセールスを行う。もともとおしゃべり好きであったこともあり、そこそこの営業成績を上げることができていた。
5~6年そんな生活を送り、私は企業向けの担当にシフトした。子供が学校や保育園に行くようになり、子供連れで仕事に行く必要がなくなったからだ。今度はご家庭のお客様だけではなく、小さなお店や事務所から、全国的に名前の知れた大きな会社まで、様々な業種に対して定期レンタルとセールスに回るようになった。しかし以前に比べて問題が発生し、怒られることも多くなったのである。
家庭のお客様、と言えばほとんどは私と同じような主婦か、私の母親のような高齢者がほとんどである。話し方や接し方のひとつをとっても、先方がお客様という立場はわきまえる必要はあるが、同じ主婦の目線で話をすることが多い。自分の主婦としての経験からこの商品の良さをアピールできるのだ。
だが、企業相手となると違う。主婦という目線は持っていてもかまわないが、あくまでも会社の看板を背負ったビジネスとしての取引となる。今思えば、その時の私はその心構えがなかったのだと思う。私に向けられる注意やクレーム、また時々受ける理不尽とも思える怒りを「なんで私はそんなことを言われないといけないんだろう? ただのパートのおばちゃんなのにねぇ?」と心の中で呪いながら、怒りが収まるのを黙ってやり過ごしていた。
 
スポーツジムの交換に行った時のことである。開店時間の前に交換をすべて終えるようにとジムの支店長から言われていたが、その日はどうしても終えることができそうになかった。大手のスポーツジムで複数の商品を交換しなければならず、いつもは交換の終わった汚れたマットを一旦外に出し、何度も店内と外を行き来しながら、万が一にもジムのお客様が入ってきたときに邪魔にならないように、細心の注意を払っていた。でも、今日は全ての交換が間に合いそうにない。焦った私は交換を終えた汚れたマットをその場に置いたまま、交換を続けた。すべての交換を終えた時、既にジムの営業時間は始まっており、私がそのままにしていた汚れたマットは、どこかに移動させられていた。
どこに片付けられたのだろう? そう思いながらフロントに出向いた時だ。
「ちょっと、こっちに来て!」と支配人に声をかけられた。そして、お客様の目に入らない場所に移動した途端、「何考えてんだ? 営業開始しただろ? あんなとこに汚いマット置いてたら邪魔だし、お客様もどう思う?」と、かなり強い口調で厳しく叱責された。私は言い返すこともできず、ただただ謝るしかなかった。やっと解放され、気分が落ち込んだままこれを上司に報告すべきかどうか悩んだ。黙っていればわからないかもしれない。でももしクレームの電話があったら? これを理由に解約を言われたら? 黙っていることで私の信用がなくなる気がした。恐る恐る上司に電話をし、今あった出来事を詳しく伝えた。すべて私が悪かったこと、自分の考えが非常に甘く、迷惑をかけてしまったこと。そして上司にわびた。
一日中もやもやした気持ちのまま仕事を終え会社に戻ると、上司が「スポーツジムに謝りに行ってきたから。もう大丈夫だよ。次から気を付けてね」と言ってくれた。すごくホッとして泣きそうになった。
そして以前に上司と一緒にクレーム対処に当たったときのことを思い出した。
怒るお客様に対してただ頭を下げ、言われることに「ごもっともでございます」と謝っていたが、落ち着きを取り戻したお客様に対し、「注意していただくことで、こちらの気が付かなかった問題点を指摘していただきました。ありがとうございます」と感謝していた。そのお客様とは信頼関係が強くなったように思う。
 
数日が経ち、スポーツジムの訪問日がやってきた。ドキドキしながら恐る恐る交換を終え、フロントに受取りのサインをもらいに行った時だ。支店長が現れこう言った。「この間のこと、ちゃんと上司に報告したんだね。びっくりしたわ。自分が怒られたことなんて、黙ってたらわからないのに、ちゃんと言えるのはすごいな」
びっくりしたのはこっちだ。そんなことでほめてもらえるとは思いもよらなかったのだ。
私の仕事に対する問題点を指摘してもらい、その都度きちんと上司に報告し、改善につなげていく。そしてそれが信頼につながっていくことを学んだ。
 
それからの私は、お客様からの小言も注意も𠮟責も、平気で受けることができる。これが私自身の問題点をよくしてくれるんだと、感謝の気持ちで聞き流すことができる。叱られるということは、まだまだ私には伸びしろがあるということなのだ。
もちろん先方の言い方によっては気分が悪くなることもある。どう考えても自分が悪いわけではなく、お客様のエゴな時もある。そんな時も、黙って頭を下げ、最後はニコッと笑って「ご指摘ありがとうございます!」と言い切ってやる。これも私の仕事のうち、と割り切れるようになった。頭を下げてなんぼ、である。
 
 
 
 
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2022-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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