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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:園田玲花(ライティングゼミ・2月コース)
 
 
それを持って散歩することが好きだ。
いつもの通勤経路が、特別な道に変わってしまうから。
それを持って景色をみることが好きだ。
その時の気持ちも、一緒に持って帰ってくることができるから。
 
それと出会ったのは、7年前。
友人とお酒を飲んだ帰り道、酔いが回って私の見える世界はぐわんぐわんと歪んでいた。
新宿の大通りを多くの車がランプを光らせながら走る。
いつも素通りしていたその景色が一本の線になったように見えた。
 
この景色をずっと忘れたくない。
 
次の日にはそれに会いに家電量販店へ行っていた。
それについての知識は全くなく、初体験。まずはどれにするか選ぶところからだ。
「持ち運びしやすいものが良いと思いますよ」
「音で決めると良いですよ」
熱心に紹介してくれる説明は頭に入ってこず何時間も悩んだ結果、
理解できた言葉通り
自分の手に収まりきり、音も好みのそれを迎えることができた。
 
私が酔っ払って見たその景色を切り取る為には、どうやらシャッタースピードを遅くすることが必要みたいだ。
説明書を読みながら、さっそくそれを使ってみる。
……
手で持っていると、微妙な揺れが伝わってしまい
どうしても一本の線で切り取ることができない。
 
「三脚があるとブレずに撮影することができるよ」
Google先生に聞いてみると先人たちが教えてくれた。
 
一通り必要なものを揃え終わり、私は新宿の大通りへと急ぐ。
歩行者が止まれる中央分離帯にそれを設置し、シャッターを切る。
3秒後、おそるおそる撮影出来たデータを覗き込んでみた。
……これだ。
酔っ払った私が見た世界と同じものが表示されていた。
 
楽しい。もっと詳しくなりたい。
それと出会った、最初のきっかけだった。
 
この出来事があってから、カメラに魅了された私はどこに行くにも手放さなくなっていた。
カメラを持つだけで、ありとあらゆるモノに興味が湧いてくる。
なんとなく歩いていた道。
ポストや三角コーンがぽつんと寂しそうにしているその表情を
友人が自分に向ける笑顔を、いちいち写真を撮りたくなってしまう。
 
そのうち、最初は満足できていたのにただ切り取っただけでは
満足できなくなって、SNSで流れてくるプロのカメラマンの写真を見て、
落ち込んだこともあった。
しかし、プロの人の写真で、私もレンズ越しの世界を見ているような気持ちになっていることに気が付いた。
 
ただ撮影したいものをうつしただけの私の写真と、プロの写真。
何が違うんだろう。
 
考えさせる余白があることだ。
 
そこからは少しだけ、シャッターを切る際考える癖がついた。
そうするともっと、もっと、写真を撮ることが楽しくなった。
 
カメラの凄いところはそれだけではない。
私の嫌いだった雨の日も、好きにさせてしまう。
雨は、外に出ることも億劫になるし洗濯物も乾かない。傘を持つこともあまり好きではなかった。
 
梅雨の時期に友人とのカメラ散歩の予定を立ててしまった私は少し後悔した。
この日はカメラも、傘も持っていかなければならない。
選んでいた場所は新宿御苑。地面もぬかるんでしまい、良いものは撮影できないのではないか。
それでもその日はやってきて、キャンセルするわけにもいかなかったが、あまり気の進まないまま公園へと足を運んだ。
雨の新宿御苑は人も少なく、貸し切り状態だった。
傘を持った友人が映えて、絵になる。
この景色を何度も見ることができるのか、持って帰りたい瞬間がたくさんある。
夢中でシャッターを切った。
 
雨の音。シャッターの音。友人の笑い声。
その日から雨の日も好きになった。
草花が濡れている表情、泣いているような曇り空、水溜りにうつる傘。
そのすべてが雨の日にしか出逢えないものだった。
 
カメラを好きになってから7年。
毎日のように持ち歩くことはなくなってしまったが、上記の考え方はカメラだけでなく
文章を読むときにも、映画を観るときにもカメラを好きになったあの瞬間の気持ちがよみがえってくる。
 
作者の想いがどの部分に込められているのか、受け手に考えさせる余白はどこに持たせているのだろうか。
そんなことを考えながら同じものをみると違った視点で味わうことができるのだ。
 
新しい世界と出会わせてくれたカメラに、私はいつまでも感謝していくことになるでしょう。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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