メディアグランプリ

デリカシーのないトンデモ男と物好きなブッダ、彼らが教えてくれたたった一つのこと


202*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:早川実花(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「……痩せたら?」
 
彼はベッドの中でそう言い放った。
18年も前のことなのに、未だに鮮明にその時の様子、心情を記憶している。
 
初めての彼氏だった。まだ若かった私は、奈落の底まで突き落とされたような気分だった。
その当時にタイムスリップできるなら、私は迷わずに言うだろう。
 
「やることやった後に、何なん? その発言」
 
そしてその場で、サヨナラである。
 
当時18歳だった私。まだピュアだった私。好きな人に、その言葉をそのシチュエーションで投げられたショックは計り知れなかった。
 
その当時の私はダンスをしていて、筋肉質な身体だった。
細っそり、とは言えないが、体重も標準くらいだった。
しかも、その当時私はダイエットをしていた。まさに追い討ちをかけられたのだった。
結局、その彼とは長続きせずにお別れした。
 
トンデモ男の話はなんだか気分が悪いのでこのくらいにしよう。
 
 
次は、物好きなブッダの話。
 
こちらは私の夫のことである。
顔の造りがブッダ像にそっくりだということで周囲からはブッダと呼ばれたりしている。
 
夫は控えめに言っても、中身も仏様である。
自由奔放な私を咎めることもなく、束縛もせず、好きにさせてくれている。
歳が離れていることもあるのだとは思うが、私のチャレンジしたいことには、
「まだ若いんやから、なんでもやってみたらいい」
と、静かに応援してくれる。
また、本当にやめておいた方が良さそうなことにはきちんと物申してくれるところもGOODなポイントである。
簡単な料理もできず、これといった取り柄もなかった私。
その当時は精神を病んでいたし、「私のどこがいいんだろうか」と、結婚して数年、詐欺にあったのだろうか、何かのスパイなのでは、などと本気で思い込んでいたほどだった。
 
そんな夫とはもうすぐ結婚10周年を迎える。
10年前、私の体重はMAXに近かった。正直に言うと、結婚後MAX体重を更新した。
保険適用で病院にお世話になって減量することができるくらいの高度肥満だった。
 
その当時私は、精神を病み、ダイエットもうまくいかず、様々なことを相当こじらせていた。
太っている自分をとても恥じていたので、
「痩せることは身なりを整えることと同じ。私は身なりすら整えられていないんだ」
という思考にまでなっていた。
このように考え方も物事の見方もかなり偏っていた。
なにより自分のことが大嫌いだった。
でも、夫はそんな私でもよかったし、愛してくれていたのだ。
自分に自信なんて1ミリも無く、自己肯定感のかけらも無かった私はそれに気づくのに相当な時間がかかった。
 
 
 
「デリカシーのないトンデモ男と物好きなブッダ」
一見相反しそうな二人が教えてくれたこと、たった一つのそれは、
「価値観は人それぞれ」
ということだった。
 
 
トンデモ男には彼なりの価値観があり、物好きなブッダにも彼なりの価値観がある。
もちろん、私にもだ。
 
価値観を侵害しないこと、また、価値観を押し付けないこと。
 
まずはすべて受け入れることから始める。受け入れられない時は、サッと一時的にでも離れることも必要だ。ここを変にまわりくどくなり、負のスパイラルにはまらないようにするのが大切なのだ。
 
だから、価値観が合う、というのはパートナー選び、こと結婚においてはとても大切なのだと思う。それだけで、結婚後のトラブルのリスクは減る。
 
蓼食う虫も好き好き(たでくうむしもすきずき)ということわざがあるが、人の好みなんて十人十色。
 
例えば、
 
痩せている方がいい。モテる。
太っていたらだめだ。モテない。
 
こういう考え方があるとしても、こんなものは常識でもなんでもないし、もしそれが自分の型だとしたら、それに他人を当てはめないほうがいい。
また、自分を自分の価値観で括り付けるのも、自分を苦しめることになる。
私たちはもっと自由でいい。
 
そして、ガチガチに思考も思想も偏っていたちょっと前までの私は、何事も白か黒か、0か100かとジャッジしまくっていた。
自分のこともジャッジするし、口には出さないけれど他人のことも相当ジャッジしていた。
 
 
他人は他人、自分は自分。
 
 
これに気づき、心の底からそう思えるまで、腹落ちするまでには相当な時間がかかった。
 
カギは「自己肯定感」だった。
 
自分を認め、愛し、尊重できるようになったら、自然とジャッジを手放せたし、偏ってる自分すら認められて、丸ごと愛せるようになった。そうなると、他人のこともスッと認められるようになった。
 
以前の私はまさに、「他人のタイムライン上」で生きていた。
他人のタイムラインとは他人軸と言い換えてもいいだろう。
 
自分のタイムラインは置き去りで自分軸などなく、目の前の人に合わせては、その時々でタイムライン、軸を乗り換えていた。
 
精神的に疲弊してしまうのも仕方ないのは今ならよく理解出来る。
 
紆余曲折を経て体感したのは、じんわり上がる自己肯定感は人生の潤滑油になるということだ。
しかも自分の中から湧き上がるナチュラルな自己肯定感なら枯渇しにくいはずだ。
この時に持つ自分軸は、巨木の太い幹のようなものよりも、竹のようにしなやかに曲がるものだと、強い雨に打たれても、強い風が吹いても、しなっては元に戻ることが出来る。
 
 
「価値観は人それぞれ」
こう書いてみると、この一つの気づきから幾重にも気づきが広がっていた。
つらい経験も、苦い過去も、しょっぱい失恋も、無駄なものなんて一つもなかったのだ。
 
 
本当に自分に必要なものが詰まった宝箱は、息も絶え絶えで必死に潜った先の、深くて暗い深海の底に眠っていた。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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