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日本人の“ロボット化”を止めるには?


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記事:寺野 智和(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
「この光景、まるでロボットの行列じゃないか!」
 
立ち並ぶ大勢の人々
頭を突き出し
手を突き出し
無言のまま、ゲートをくぐっていく
 
ただただ、それが決まった自然の摂理であるかの如く。
 
最近読んだある本を踏まえながら、その情景を眺めながらふと思い浮かんでしまった冒頭の言葉。
あまりに本に書いてあることに当てはまりすぎていて、薄気味悪く感じたのだ。
 
2020年から急激に広がり、未だ収束にいたらない新型コロナウイルスから2年以上たった今、イベントやショッピングモールの入り口での検温や消毒をする人の姿は、ごくありふれた情景になっている。
 
なんのためにするのか?
 
それは言わずもがな、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためである。
目には見えないウイルスなので、兆候である発熱の検知で感染の可能性を感知し、消毒することで仮に人体に付着していても広がらないようにするための取り組みだ。
 
ただ……
 
あまりに無言で、自動的に人が進んで取り組むように見える、その様にある概念が浮かんだ。
 
“パノプティコン効果”
 
フランス出身で20世紀を代表する哲学者であり、歴史家であるミシェル・フーコーが見出した権力の捉え方の概念の一つである。
 
聞き慣れない“パノプティコン”とはなにか?
それは、全ての人が知らず知らずのうちに入っていると言われる、見えない“監獄”である。
 
元々は功利主義でお馴染みのイギリスの思想家 ベンサムが考案した監獄の建築様式だ。
 
想像してみて欲しい。
円筒状の監獄があるとして、そこにひしめくように牢屋が配置されているとする。
よくハリウッド映画に出てくるような牢屋同士が向かい合っているようなそんな建物だ。
その真ん中に窓がマジックミラーで覆われた監視部屋があるとする。
つまり、監視者から牢屋の様子は丸見えだが、牢屋の囚人からは監視室に人がいるのか? 自分たちを監視しているのか? すらわからない。
そして、監視者が囚人の違反行為を見つけたら、なんらかの罰を下す。
そんな仕組みだとする。
 
そうすると、囚人も当初はルールを破ったりして罰に処されていると、自然に罰を受けないために、ルールを破らないよう徐々に行動が矯正されていく。
最終的には監視者がいてもいなくても、囚人が自然と、疑うことなくルールを破らなくなるわけだ。
それを“パノプティコン効果”という。
 
それは監獄だけの話でしょ? と思ったらどうにも違う。
今の世の中は、まさにパノプティコン。
法律など明文化されたルールの他に“社会の空気”という見えないルール、家庭や学校、会社、そして、クレジットカードの利用状況やネットでの振る舞いなど、様々な目に、耳に、監視され、はみ出すことがあろうものなら、やれ炎上だ! 通報だ! 許せない! と袋叩きにあう。
 
私の周辺でもよく見かけるのは、SNSで頻繁に投稿していた人が、一つの心ないコメントに心折れて、急に投稿するのをやめてしまったり、テレワーク中心になり、せっかくの対面の機会だからと良かれと思い雑談などを積極的にしていた人が「話しかけてきて、うざい」という陰口で怖くなり、話しかけることに消極的になってしまったりと、オンライン、オフラインでも、そのような事例に溢れている。本来、自分がしたいことに批判があったとしても、それと行為を継続するか否かは関係ないことのはずなのに……
人はルールを破り、罰を課されること、後ろ指をさされることが怖いのだ。
 
検温、消毒の行列を眺めていて、まさにその“パノプティコン効果”が起きている結果ではないのだろうか?
そんなことを思ったのである。
 
マスクしない、検温しない、ワクチンを打たないなどと主張した人が、テレビやネットニュースなどのメディアを通じて、時に炎上し、時に非難される様子がたくさん伝えられている。
他人がそのようになる叩かれる様子をみて、反面教師として自ら矯正した、と考えられないだろうか?
それが過剰となり自粛警察、なんて言葉もあった。
 
『自分が、自分を監視している』
これもフーコーの言葉だ。
世間の様子をみて、無意識のうちに自分が自分をコントロールする、ということらしい。
そこには自分の意志が、無い。だって、無意識だから。
 
検温器を持った人
置かれた消毒アルコールのボトルや消毒機材
 
それを見て、何も考えずに、
頭を突き出して検温をしてもらい
手を消毒している
としたら、自分で自分を監視している、自己監視状態の可能性が高まるだろう。
 
自己監視していると言って、何が問題なのか?
 
無意識の監視は、自分の人生を拘束する。
端的に言えば、“常識”、“普通”、“生活様式”、など、あるのかないのか、よくわからないことに自分を支配され、自分を誰かのいいように使われることになる。
自分の人生を“操りロボット”にされてしまう可能性が高まるのだ。
 
ロボット化の圧力は、あちこちに溢れている。
 
なぜ、“前にならえ”をするのか?整列しなければいけないのか?
なぜ、皆同じ学生服を着ていかなければならないのか?
なぜ、台風の中、会社に出社しなければならないのか?
 
コロナショックで、一部のロボット化が外れつつあるが、それでも、今までさして疑問にならなかったことはたくさんある。
そういうものだ、受け入れたところからロボット化は始まっていると言っても、言い過ぎでないと思う。
 
ロボット化はどうすれば止まるだろうか?
 
まず、「ロボット化していないか?」と意識を持つことだろう。
 
そのうえで、一つのことを問い直すことかもしれない。
 
「なんのため(目的)にしているんだっけ?」
 
“目的”は、ロボット化阻止の最後の希望である。
 
ロボットに、“目的”を創ることはできない。ある決まったパターンに従うだけである。
“目的”がわかれば、今の行動が、それに適しているのか、そうでないのかがわかる。
そして、今させられようとしていることが、目的に適ったことではなかったとしても、わかったうえで行動を選択できる。
例えば、手が荒れていて痛いから消毒したくないけど、周りの目が気になるから、どうしようか? と迷った時も、感染拡大防止が目的と認識したうえで、保湿剤入りの消毒クリームを持ち歩いて使ったりできる。
 
気がつかずに、自分は誰かに監視されているかもしれない。
気がつかずに、自分で自分を監視していることもあるかもしれない。
だけど、目的を問うことを忘れなければロボット化することなく、自分に自分のコントロール権を取り戻すことができる。
 
「その目的はなんだっけ?」と問うていこう!
自分で自分の人生を切り拓いていくために。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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