メディアグランプリ

「何を言っているか分からない」と言われ続けた私が、話し方の先生になるまで


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:藤崎奏(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「ちょっと何言ってるか分からない」
……サンドウィッチマン富澤の持ちネタではない。
転職した5年前、私が上司に言われ続けた悪魔の言葉だ。この言葉に心を削られ、自己肯定感はダダ下がり、私は卑屈を極めた。言葉が通じないとはこれほど惨めで苦しいものなのか……と異邦人さながらのことを考えていた。
そんな私が、なんと現在は話し方の先生として多くの人に「伝わる話し方」なるものを教えている。
ここに至るまでに何があったのか?「伝わる話し方」とはどういうものなのか?
これから順にお話ししていきたい。
どうか、必要な方に届きますように。
 
 
私はこの3月から、スキルシェアサイトで話し方の講座を開講している。
本職はコンサルタント、今の会社に転職してからもうすぐ5年になる。
 
転職前は、通信制の高校で先生をしていた。毎日教壇で授業をし、個人面談なんかもこなしていた。1クラス30人の前での授業もへっちゃらだったし、1対1の面談では、どんな生徒にでも合わせて話すことが出来た。そのため、自分は話すことが得意だと思っていた。何せそれが本業だったのだから。「授業がわかりやすい」と評価されて、理科の模範授業なんかを担当させてもらい、若干天狗になっていた部分もある。
 
だが、転職をして未経験のコンサルという世界に飛び込んですぐ、天狗の鼻はへし折られた。上司に報告をしている時、「何を言っているかよく分からない」と言われたのだ。衝撃だった。なぜ? ちゃんと話しているのになぜ伝わらないんだ? 私は必死に言葉を紡いだ。話せば話すほど、上司の顔は曇っていく。最終的には、「ちゃんと話をまとめてから、改めて報告して」と言われてしまった。
こんなことが1度だけではなく何度も続き、私の鼻っ柱も、心も、音を立てて完全に折れた。ぽき。
 
 
高校の先生をしていた時、話をする上で一番大切にしていたものは「熱い想い」だった。想いさえ持っていれば、私の言いたい事は必ず伝わると信じていた。授業中だるそうにしている男の子にも、自分からは全く話さない女の子にも、私は想いを伝え続けた。
ある意味、それは正しかった。「先生ってなんかいつも楽しそうに授業するよね。理科って嫌いだったけど、ちょっと好きになったよ」と言ってくれたあの子。閉ざした心が少しずつ溶けていき、明るい笑顔を見せてくれるようになったあの子。これは、私の「熱い想い」が伝わった証拠だ。
 
しかし、高校という場所を出て、ビジネスの世界に身を置いた今、それは全く通用しなかった。自分が言いたいことを伝えるためには、「想い」以前に「理論」が必要らしい、ということが何となくわかってきた。
でも、どうすればいいのか全く分からない。上司の不機嫌な顔が怖くなり、私は上司に話しかけなくなった。そして、ホウレンソウを怠った私は、当然ながら小さいミスを連発した。「自分はダメな人間だ……」自己肯定感はどんどん下がっていく。
このままじゃまずい! 私は、こんなところでうつろな目をして小さくなっているために転職をしてきたわけじゃないのだ。
 
入社して半年、私は重い腰をあげて先輩のSさんに相談した。「私の話、分かりにくいって言われるんです……どうしたら良いですかね?」
Sさんは教えてくれた。「藤崎さんの話は、正確に言うと『何を言っているか分からない』と言うより『何の話をしているのかわからない』んだと思う。まず結論から話すといいよ!」
……めちゃめちゃ仕事ができるSさんが、めちゃめちゃいい解決法を教えてくれると思っていた私は、正直拍子抜けした。「結論から話そう」ということは一般常識として聞いたことがある。志望校のエントリーシートを書く生徒に、同じようにアドバイスしたこともある。
でも、できていなかった!? 知っていてもできていないなんて。
具体的にどうすれば良いか、もう少し詳しくSさんに聞いた。
 
Sさんが私に授けてくれたのは、“PREP(プレップ)法”というフレームワークだった。
 
P:(Point)結論、主張
R:(Reason)理由
E:(Example)具体例、事例
P:(Point)結論、主張
 
この順番で話すと伝わりやすい、とのこと。そして私は「E(事例)→R(理由)→P(結論)」という逆の順序で話す傾向がある、ということも教えてもらった。本当か?と半信半疑ながら、その日から全てPREPで話してみることにした。とてもじゃないけど瞬時にはできないので、上司に話しかける前は必ず手元のメモにPREPで言いたいことを書き付けた。
 
初めは怖かった。結論を言った直後の、「は? なんで?」とでも言いたげな刺すような上司の視線。でも負けずに、上司が口を開く前に先回りをして「なぜかというと!」と理由を繋げる。「例えば!!」と事例を繋げる。
そうすると、なんと「わかった」とすんなり上司が納得してくれるようになったのだ。すごい。なんなのだ、PREP。
 
良いことは他にもあった。お客さんとのメールのやり取りがスムーズになったのだ。今までは、言葉を尽くしてメールを送っても、とんちんかんな返信が返ってくることが多かった。「そこじゃないんだよ……こっちのことについて答えてくれ……」という趣旨のメールをまた送る。この手間が、PREPでメール文を書くようにしてから激減した。つまり、何を言ってるか分からないのはメールでも同じだったようだ。
 
PREPを始めて半年、事前に紙に書かなくても話せるようになり、さらに半年後には意識しなくても自然にPREPで話せるようになった。
転職からここまで、実に1年半もかかってしまった。成長した私を見届けて、Sさんは安心して転職していった。
 
 
「何を言っているのかわからない」と言われ続けてしんどいあなたへ。
話が上手い下手というのは、生まれ持った性質ではない。話し方の「型」さえ知っていれば、いくらでも分かりやすく話すことができるのだ。いわば、知識の問題だ。
かつての私のように、型を知らないばっかりに自信をなくし、心が縮こまってしまっている人を一人でも減らしたい。そういう想いで、私は今話し方の先生をしている。
 
とはいえ、PREPは万能ではない。犯人や動機が冒頭に書いてある推理小説は読む気が失せるし、初めにオチを聞かされる面白い話はもはやおもしろくない。PREPは一つの武器なのだ。必要なときに取り出して使いこなせればそれで良い。そんな武器を広める、私はいわば武器商人だ。
 
一人でも必要な人に届きますように。そう願いながら、私は今日も話し続ける。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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