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もしかして私も常連さん? 


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:林 菜緒(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「桃のポタージュがすごくおいしいの!」
普段は物静かな職場の先輩が、興奮気味に話してくれる。先輩には、予約するだけで季節のおすすめ料理を食べさせてくれる行きつけのフレンチレストランがある。「桃のポタージュ」のように意外な食材を組み合わせた料理が特徴で、訪れるたびに新しい味に出会えることからリピーターが多いらしい。
 
行きつけのレストランがあるなんて、素敵な大人の証だと思う。友人の誕生日や仕事で落ち込んでしまった同僚を励ましたりする時に使っているというのが、いつも優しく穏やかな先輩らしい。40歳を過ぎても一人で外食することもできない私には、羨ましくもあり、憧れでもある。
 
私は外食があまり得意ではない。子どもの頃から家族で外食する機会もなかったし、社会人になってからも友達と買い物に行くときにランチをするくらいで、特別なレストランにいくことはなかった。結婚してからも夫婦そろって出不精なことに加え、子どもが生まれてからは少しくらい騒いでもOKなショッピングセンターのフードコートかマクドナルドを選んでしまう。そんなこんなで、行きつけのレストランなんてあるわけがなかった。
 
そんな私にも唯一お気に入りの店がある。自宅から300mのところにあるパン屋さんだ。最近では珍しくなくなったが、ハードパンがたくさん置いてあり、中でもバケットとレーズンパンが飛びきりおいしい。私は昔から硬い食べ物が好きで、ふわふわの食パンや菓子パンより断然ハードパン派である。夫は結婚する少し前に行ったドイツ・フランス出張でハードパンのおいしさに目覚めた。ハードパンを好きな人が周りにほとんどいなかったのに、これから一緒に暮らす人がハードパン好きで本当にラッキーだった。
 
夫と一緒にいろいろな店を回ったけれど、自宅近くのお店が一番おいしいという結論に至り、毎週土曜日に通うのが日課となった。
 
そのお店は店主と奥さんの2人で切り盛りされている。時々、小学生の娘さんがお手伝いをしているのも微笑ましい。店主がパンを焼き、奥さんがお店の運営をしている。奥さんは物静かな感じだが、テキパキと仕事をしている。いつも「カットしましょうか?」と聞いてくれるので、お願いしていたら、そのうちそんなやり取りもなく、バケットをカットしてくれるようになった。最近は、バケットをトレーに載せると、すぐに「先にお預かりしますね」と言ってカットしてくれる。
 
ある日、誕生日やイベントに合わせてキャラクターパンやクッキーをかわいく盛り合わせてくれるらしいとパン屋から帰った夫が教えてくれた。ちょうど娘の卒園式が近かったので、予約することにした。後日、パンの盛り合わせを予約したいと伝えると、「あぁ、先週ご主人が聞いてくださったものですね?」と言われた。私はびっくりして「ヒェ~」と叫んでしまいそうだった。ふだんは夫と私のどちらかと子どもの組み合わせでお店に行っており、私と夫が一緒にお店にいくことはないのだ。それにも関わらす、家族だと認識されていたことが分かり、本当に驚いた。
 
また別の日には、いつもと同じようにバケットとレーズンパンと子供用のパンをトレーに載せてレジへ行った。すると、奥さんから「さっき、ご主人が同じパンを買って行かれましたよ」と。またまた「ヒェ~」と驚いていると、「同じパンが2つもあったら大変ですもんね」と笑っていた。夫はバケットとレーズンパンしか買って行かなかったそうなので、子ども用のパンだけ買って帰った。そういえば、どちらがパンを買いにいくか相談していなかったが、めちゃくちゃ恥ずかしかった。
 
さらに別の日には、いつものぶどうパンが見当たらなかったので、聞いてみると売り切れてしまったとのこと。奥さんは思い出したように店の奥に行って、「残りの生地で焼いた小さなサイズならありますよ。」と言って持ってきてくれた。もちろん購入したのだが、ちょっと特別扱いをしてもらったような嬉しい気持ちになった。
 
これって、もしかして「常連さん」? わが家の消費パターンを知ったうえで、気を遣ってくれたり、サービスに反映してくれたりする。サザエさんのように家族ぐるみでお付き合いとまではいかないが、一個人と認識した上で大切なお客さんとして扱ってくれている。憧れていた「行きつけのお店」が私にもあったのだ。
 
スーパーマーケットやチェーン店が普及して、個人からモノやサービスを買う機会が少なくなった。そのおかげで買い物は効率化され、とても便利になった。それでも「行きつけ」や「常連さん」に憧れるということは、根底に人とのコミュニケーションや安心を求めているのだと思う。人とのつながりが希薄になりつつある今だからこそ、大切にしたいと思うのかもしれない。
 
ある時、お店がすごく混んでいたので「今日はカットしなくても大丈夫です」と言ったら、最初は驚いた様子だったけれど、「忙しそうなので」とつけ足すと、にっこりして「ありがとうございます」と言われた。私も少しは「常連客」のふるまいができただろうか。
 
 
 
 
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2022-03-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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