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丸腰の私がリングに上がるにはアッコちゃんの魔法の言葉が必要だった

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山田 真知子 (ライティング・ライブ名古屋コース)
 
 
あんなにひどい顔で電車になったのは後にも先にもあの1回きりだろう。
電車に揺られながら、あふれ出てくる滝のような涙を流しっぱなしにしている。
よくある「涙ぽろり」なんて綺麗なものではなく、涙だけでなく鼻水も垂れていた。
 
ことの発端は3か月と15日前に、どストライクの彼と付き合うことになったことから始まる。
高身長で顔も声も服装も完全に私のタイプ、とても優しく話し方もとても穏やかで居心地がいい。
歴代彼氏たちには大変申し訳ないが、私の今までの人生史上ここまでどストライクな人はいなかった。
(過去の彼氏たちゴメン)
ようやく婚活のリングから、結婚という新たなステージに向かっていくかに見えたこの出会いは、
結婚というステージはおろか、婚活というリングにすら立てていない丸腰の私をリングに立たせるための事前強化合宿となった。
 
事前合宿における強化ポイントは、ネガティブマインドの克服だ。
―こんな素敵な彼が、私なんかが好きなんて―
―きっと騙されてるに違いない―
―既婚者かもしれない、結婚詐欺師かもしれない―
―どうせ私なんか遊びに決まってる―
気づけば8年間彼氏ナシで楽しく過ごしてきてしまった私は恋愛における自己肯定感をどこかにおきわすれてきてしまったようだ。
彼氏がいるのにどうしても自分に自信が持てない。
すこしでも自信を取り戻そうと恋愛自己啓発本や恋愛系コラムを読み漁った結果、納得のいく手段にたどり着けず迷走してしまったのだ。
また彼の仕事が忙しく会うことが難しくなり、私のネガティブマインドを加速させる。
 
そんなネガティブキャンペーン中の私をすべて受け止めてくれたのが友人のアッコちゃんだ。
ネガティブキャンペーン真っ只中の私にアッコちゃんが言い続けた言葉は一つ
「マチコのことを大切にしてくれる人を選ぶこと」
ネガティブトークを放ち続ける私にアッコちゃんは繰り返し言い続けた。
最初はサラーっと聞き流していた私だったが、繰り返されることによりジワジワ効果を見せはじめたのだ。
 
「彼はなんで〇〇してくれないんだろう」という、“彼”と“私”しかいない凝り固まった考えから、
「私のことを大切にしてくれる人が彼以外にもいるんじゃないか」と“私”と “彼”と“誰か”というような、広い視野で考えるようにシフトしてきたのである。
ネガティブキャンペーン中の主語が「彼」だったのに対し、だんだん主語が「私」で考えられるようになってきたのだ
 
―私が目指しているところはどこか―
―私がが求めているものはなにか―
―そして、今私は幸せか―
 
まだ完璧とは言えないが、ネガティブマインドは克服され、人の言葉に左右されず、自分で相手を見極める力をくれた。
 
アッコちゃんが繰り返し言い続けた「マチコのことを大切にしてくれる人を選ぶこと」は、ここで終わらなかった。
 
―大切にしてもらうためには自分自身も磨かないと―
 
手始めにスカートを買ってみたのである。
デニムにTシャツ、スニーカーで日々過ごしていた私からするとかなりの大冒険だ。
いきなりデートは着ていく勇気がないので、予行演習をかねて近所のデパートへいったのだが、
ふと鏡で自分の姿ををみて愕然とした。
びっくりするぼど顔だけ黒いのだ。
5年近く同じようなメイクを繰り返していた私は、小麦色だった肌が白肌になっていることにも気づかず、顔は茶色浮きしていたのだ。
 
女磨きを欠かさないアッコちゃんに話すと激怒。
話を聞いてくれる時は菩薩のようだが、女磨きを怠ると般若と化すのだ。
「いつまで古臭い化粧してるの? メイクも時代とともにアップデートしなきゃだめよ!」
 
怯んだ私は、急いでファンデーションとアッコちゃん一押しのピンクパープルのアイシャドウを買いに向かった。いままで使ったことがない未知数のピンクパープルアイシャドウを持つ手が震える。
初めてこっそりメイクをするかのように、夜な夜な繰り返し練習し、ようやくしっくりきた。
 
アッコちゃんによるマインドの強化により、自分の本当の気持ちと向き合うだけでなく、自分を大切にすることを学んだ。
彼と付き合い始めのネガティブマインドだった私はそこにはおらず、前向きできらきら輝いている自分がいた。
なんだか毎日が楽しい。もう何も怖いものはない。
ようやく婚活というリングに立ち、結婚という舞台を歩み始めたかに見えた私だったが、
強化合宿の成果を披露することなく、彼氏と別れることになった。
何とも言えない結末である。
 
あの日、電車に揺られながら、あふれ出した滝のような涙は、彼氏と別れて悲しいからじゃない。
アッコちゃんとの努力が披露できなかったことへの悔しさだ。
この3か月と15日の強化合宿は決して無駄ではなく、少なくとも今後の私の人生には大事な期間だった。
次にリングに上がったときは、アッコちゃんの魔法の言葉を武器に、最高の私をおみまいしてやろうと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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