メディアグランプリ

嫌いな食べ物を口に詰め込んでも好きになるわけじゃない


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Allie(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
どうして運転席は車の真ん中に付いていないのか?
右ないし左に寄っているせいで反対側が見えないし、やりにくいことこの上ない。
そう思うのは私だけ?
 
私はとにかく運転が苦手だ。機械全般が苦手なので、何がどういう仕組みで動いているのか説明されても眠くなるだけでまったく頭に入らない。でも物事の流れや仕組みを知らずに何かをやるのは嫌いなために、余計に悶々としてしまう。
 
私の実家はかなりの田舎なので、生活に車は欠かせない。そのため18歳になったら車の免許を取得するのは優先事項だった。大学に進んだあと、私は友人と免許合宿に参加してわりと短期間で普通自動車の運転免許を取得した。しかもマニュアルだ。今考えるとよく取れたな、としみじみ思う。
 
数年前のことだ。そんな私が、海外で運転するためペーパードライバー講習を受けることになった。行き先はニュージーランド。コロナ禍になる前は友人と2人で毎年訪れており、レンタカーで街から街へと気ままに旅をするのがお決まりだった。ニュージーランドには手つかずの自然が数多く残っていて、緑に囲まれているだけで、出発前に悩んでいたことがどうでもよくなって、大いにストレス発散になる。
 
ニュージーランドはバックパッカーが多く訪れる国なので、公共の移動手段は比較的整えられている。町から町への移動手段としてバスを使う人も多いのだが、私と友人は時間にすらとらわれず好きに動きたかったので、移動手段としてレンタカーを選ぶようになった。当然ながら運転が苦手な私はナビ役、友人がドライバー、という役割分担になる。しかし1日にかなりの距離を移動することもあり、さすがに申し訳ないな……と感じることもあった。
 
友人の負担を減らすため、ニュージーランドは日本と比べて道も広めで車も少ないので、運転しやすそうな道は私がハンドルを握ることになった。そうは言ってもペーパードライバー歴数十年の人間がぶっつけ本番で運転するわけにはいかない。そこで出発前に運転慣れをしておこうということで、ペーパードライバー講習に申し込んだのだった。
 
迎えた講習当日。都内の駅で待ち合わせをして、講師の先生が車でやってきた。先生が運転席から降りて、代わりに私が乗り込む。ここでまず問題に直面した。乗ったはいいけど、何をどうすれば?
 
そんな様子を感じ取ったのか、固まっている私に先生はこう言った。
「まずは座席の位置と、ミラーの見え方を確認しようか」
 
な、なるほど。それが必要なのね。基礎の基礎の基礎くらいの段階からつまずいている私が、本当に運転なんてできるのか? 緊張が増してきて、指先が冷たくなっているのを感じた。
 
人通りの少ない脇道に止めた車を、いよいよ発進させる。
人はいないよね? 出てこないですよね? 私、動きますよ?
アクセルを踏む塩梅がわからず、恐る恐る踏み込んでいく。
 
「もう少し踏まないと動かないねえ」
 
もう少し? 具体的にどれくらい? やりすぎたら急発進ですよね?
更に踏み込むとエンジン音が大きくなり、車が少しずつ動き出した。
 
そろりそろりと車が前に進み、景色がカメの速さで後ろに動いていく。
しばらく直進していると、赤信号で止まった。
「次は左に曲がってみようか」
先生が提案する。左折のコツを教わって、なんとかクリアすることができた。
「じゃあ次は右折だ」
先生がどんどん課題を出す。右折も先生のアドバイスに従って何とかクリアできたが、比較的大きい交差点だったために冷や汗が出た。
 
30分ほど走らせたところで、「コンビニに入ってみよう」と言う。
目的のコンビニは道路の右側にあった。つまり反対車線から来る車をやり過ごして入らなければならない。幸いにも車通りは少なかったので、すんなりと入ることはできたが、駐車するまではかなり神経をとがらせた。
 
たった30分の運転で腕も肩も痛い。どれだけ力が入っていたのだろうか。
休憩しても心は全く休まらず、あっという間に出発時間。再びアクセルを踏んで発進する。最初よりはすんなり動かせたが、まだ居心地の悪さは残ったままだ。
 
そのあとも運転の練習は続き、あっという間に指定の時間が経過した。
「じゃあ待ち合わせをした駅に戻ろう」と先生が言い、駅に戻る道に入ったのだが……。
なんと片側に5車線くらいある大通りだった。時間は午後だったので、交通量もかなり多い。
 
最後の最後にしてこの難関!
車線変更は運転に関する動作で一番といっていいほど苦手だ。大縄飛びで飛ぶタイミングを見計らうのが大の苦手だった私にとって、車線変更は同じくらい苦行でストレスのかかる行為だった。隣の車線に移れる気配が微塵も感じられない。
 
何も出来ない私を見かねて先生が横から助け船を出す。もはや私は運転席に座る邪魔な人形状態。一刻も早く運転席から離れたいとしか思えなくなっていた。何とか車線変更して待ち合わせをした駅に戻り、ドライバー講習は修了した。
 
運転に慣れる名目で申し込んだドライバー講習だったのだが、嫌いな食べ物を無理矢理口に詰め込んでも好きになれないのと同じで、最終的には運転に対する苦手意識が増しただけだった。幸い、旅行先では片側4車線もあるような大通りもなく、走っている車の数も圧倒的に少なかったので無事に運転することはできた。でも私が運転を楽しめるようになる日が来るのは、まだまだ先のようだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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