メディアグランプリ

息子の浪人が決まった日

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記事:ゆみエール(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
3月20日、午前10時に、ある大学の後期試験の合格発表がある。息子が受けた大学である。既に、3月上旬に第一志望には落ちていた。第一志望の大学はムリだろうと思っていた。模試の結果はずっとE判定。本気で勉強しだしたのは、高校3年生の夏から。
真面目に受験勉強していない息子のことを、友達は「なめろう」と呼んでいた。「受験をなめている」という意味だ。
本人は、第一志望受験の手ごたえを「五分五分」と言っていたが、案の定不合格だった。まぁ、想定の範囲内である。
そして、間もなく後期試験の発表がある。第一志望からは、ぐんとランクを落とした大学である。息子達の間で勉強しないでも行ける大学のことは「身の丈大学」と言われていた。後期試験で受けた大学は、息子にとっては身の丈大学だった。さすがに受かっていると本人は思っているようだ。
 
息子は、中学受験をして、関西屈指の進学校に中高6年間通っていた。幼稚園のころから家庭学習を始めて、小学校4年生で中学受験専門の塾に通い出した。十分な準備の末に勝ち取った合格だった。親にとっては、先行投資である。中学受験のための塾代、中高一貫の私立の授業料は、サラリーマン家庭の我が家にとっては、決して安いものではない。だから、私はずっと言い続けてきた。
「浪人はない! 勉強しいや!」
そして、「国立大学に行くように!」と。
 
息子の学校は、生徒の自主性を尊重した学校(放任主義ともいう)で、一定のルールと秩序を守れば、文化祭、体育祭も生徒たちが自由に作り上げられる。親からも見ても、楽しそうでいい学校だった。なんせ、自主性に任せた学校なので、勉強するもしないも自由なのだ。息子は6年間、全く勉強をしてこなかった。成績はずっと下から数えて1割の位置だった。
 
中学校時代には、「勉強しなさい」と私も口うるさく言っていたが、言ってももちろん言うことをきかない。
個人懇談で担任の先生に相談したら、「親の言うことなんてきかないでしょ? じゃあ、もう言わなくてもいいんじゃないですか。自分で気がつかないと勉強しませんよ」と、アドバイスを受けた。だから、もう「勉強しなさい」って言うのもやめた。
 
そして、勉強しないまま、高校3年生になり、あっと間に大学受験を迎え、予想通り第一志望に落ちたのだ。
今、後期試験の発表を迎えた。10時になり、インターネットで発表された合格者一覧の中に、息子の受験番号は見当たらなかった。本人は、後期試験の大学には合格していると思っていたようだが、「あぁ、やっぱりな」と私は思った。
 
さあ、10時から家族会議である。この日のために、単身赴任の夫も帰ってきていた。
息子、ムスッと腕組みしたまま「浪人するわ」と言う。
私は、「はぁ? 浪人ないって言ったけど」と言い返す。
「浪人させてください」と、腕組みしたまま息子が言い直す。
「それが、人にものを頼む態度なのか?」
こんなやり取りから始まった家族会議は、2時間半に及んだ。
浪人する限りは、第一志望だった学校を再度目指すと息子は言った。
「どうして、その大学を選ぶのか」
「その学部で、何を学びたいのか」
「どんな職業につきたいのか」
「大学での学びを仕事に生かせるか」
どの質問にも、「わからん」「そんなことを考えたことはない」と、息子からは頼りない答えが返ってきた。
自分の人生を自分事として捉えていないのだから、そりゃ受験勉強も真面目にしないよなと、息子との会話でつくづく思った。
会議の最後に、「今から何をする?」と聞くと、インターネットで予備校を探すと言う。
この答えに、私はまたカチンときて
「インターネットで探してないで、自分で行って説明を聞いて、パンフレットをもらってきなさい」と叱った。
息子は小さな声で、「そんなんネットで調べても、直接行っても一緒やん」と言ったが、私は聞く耳を持たなかった。
 
実は既に、もう予備校には仮申し込みがしてあった。私は、息子の「後期は受かっていると思う」という言葉を信じてはいなかった。
ママ友や先輩ママからの情報によると、人気の予備校はすぐに定員がいっぱいになるというのだ。だから、息子が呑気に卒業旅行で北海道に行っている間に、手配をしたのだった。息子の学校から浪人した仲間の多くが通うというS予備校である。
大手予備校3校の説明を聞きに行くという息子には、最後にS予備校に行くようにと伝えた。
さぁ、息子、予備校に既に申し込みがしてあると知って、どう思うだろうか。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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