メディアグランプリ

ネットワークビジネスで億万長者になれるかもしれないと誘われて


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:清野千聖(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
4年半前、私は、SNSでの地元のイベント情報をもとに、そのイベントが開催されている小さな喫茶店に出掛けた。
そこでは、地元で大人気の手作りの洋菓子を出張で販売してくれるらしい。
 
「こんにちは」
笑顔で挨拶しながら店に入った。店内はたくさんのお客さんで賑わっていた。出張販売に来ていた私と同年代らしき女性が販売していた。
いくつか商品の選び、会計を済ませ、店を出ようとしたところ、イベント情報をまた知らせたいので会員登録してほしいと頼まれたので登録し、店を出た。
 
翌日、携帯電話に電話帳登録していない知らない番号からの着信があった。
電話に出るのをためらったが、当時、母親が入院していたので、親戚関係かもしれないと思い、電話に出た。
「もしもし……」
「昨日は、お買い上げいただきありがとうございました。ふわふわ○○のMです」
「あー、こちらこそ、ありがとうございました。美味しくいただきました」
私、何か悪いことしたかなぁ? 何の用だろう? そう思いながら、電話に応対した。
「ちょっと、耳よりな情報があるんだけど、少しお時間空いていますか?」
私は「少しならば」と話を聞くことにした。
 
「私と一緒に億万長者、目指さない?」
Mさんは言った。
怪しい!! でも、面白そうだから、話だけ聞いてみよう。
ネットワークビジネスの勧誘だった。
健康マットが主力の会社で、マットは1枚約25万円もするが、かなり価値があるとのこと。
また、東京オリンピックまでには爆発的なヒット商品になり、。世界中から集まる選手村で使用する予定にもなっているとのこと。
「もっと詳しい話をしたいわ。早くこのビジネスに関わった者が勝つのよ!」
そう言われ、私は迷ったが、話だけ聞いても無駄ではないと思った。
 
一週間後、Mさんが指定したファミレスへ予定の時間に出向いた。
そこには、Mさんだけでなく、隣りの席に若いイケメンの男性がいた。
 
「はじめまして」
私は、二人に挨拶し、席に座った。
イケメンの若い男性から名刺を渡され、初めて、商品を扱っている会社を知る。
Mさんも名刺を持っていて、洋菓子を売る仕事とは別の顔を持っていた。
二人は「代理店」として、毎月、かなりの報酬を得ているらしい。
話を聞けば聞くほど、本当に億万長者になれるのか疑問点はあったが……
「あなたなら、挨拶がしっかりできるし、人当たりが良い。明るいから、絶対たくさんの人に売ることができるよ。1年後には億万長者になれるかもしれないよ」
自己肯定感が高められたような気分になった。
 
少し迷ったが、お金持ちになれるという夢を抱き、代理店契約を交わしてしまった。
25万円もする高額なマットを1枚購入するだけで、代理店契約ができるシステムである。
 
後日、自宅に届いた健康マットは、半永久的に使用できるなら安いように感じた。人に勧めたくなり、当時は、新興宗教の勧誘のように、多くの友人に声を掛けた。
全国で売り上げ上位者の体験談を聴くセミナーにも積極的に参加し、商品の説明の仕方や売るためのコツなどを学んだ。
度々のミーティングやグループLINEでは、何人に声を掛けて、何人買ってもらえそうかについての報告をした。
 
しかし、活動して2か月経っても、なかなか成果に繋がらず、結果、25万円の健康マットをもう1枚購入した。
私が、会社の商品を買えば買うほど、買ってくれる人を集めるほど、ファミレスで会った二人や同じピラミッドで繋がっている私より上に立つメンバーが儲かるシステムなのだ。
 
親しくしていた友人が、私に会うと商品を勧誘されると思うのか、だんだん会ってくれなくなった。
 
活動して3か月後、私は我に返り、誘ってくれた二人に代理店契約を辞めたい旨を伝えたが、ファミレスで会ったときと同じように、言葉巧みに代理店契約の継続を勧められた。
私の意志は固く、無事、契約解除することができた。
購入した2枚の健康マットは使用しているので返品できないとのことだった。
 
購入した健康マットを見るたびに、ネットワークビジネスを思い出すが、製品自体に問題はないので愛用している。
 
数年経ち、コロナ禍で2021年に1年遅れで開催された東京オリンピックでは、その健康マットは選手村で使用されなかったようだ。
騙されたような複雑な気持ちになった。
 
果たして、勧誘したMさんは今、億万長者になっているのだろうか?
ふと気になって、FacebookのMさんの投稿から近況を確認した。
まだネットワークビジネスを続けているのかは定かではないが、洋菓子を作る仕事は辞めたらしい。
身体を壊したようだ。
経営が大変であるような投稿を読む限りでは、億万長者にはなっていないようだ。
 
確かに、参加したセミナーで講師をしていた人は億万長者かもしれない。
でも、ネットワークビジネスで成功している人はごくわずかではないだろうか。
ネットワークビジネスをやるかやらないかを決断したのは自分自身であるが、簡単に億万長者になんてなれるものではない。
私は億万長者になれなくても良い。
 
先日、とあるイベントで、ファミレスで会った人とは違うイケメンの若い男性から、同じようなネットワークビジネスの誘いを受けた。
「オバサンはイケメンに弱い!!」
でも、学習能力を活かし、しっかり断ることができた。
「もう、引っ掛からないぞ!」
そう自分に言い聞かせた。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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