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10年間勤めた会社を辞めた、本当の理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小西 裕美(ライティング・ゼミNEO)
 
 
「いきなりどうしたん? なんかあった?」
話したいことがある、と電話で伝えたら、マネージャーはその日の仕事終わりにすぐ時間をとってくれた。心配そうに私の顔をのぞき込む。
 
マネージャーは、ヘルプを出すとすぐにヒーローのように飛んできてくれる。この日もそうだったから、私はぐちゃぐちゃに泣いてしまった。
 
 
これまで10年間、一度も仕事を辞めたいと思ったことがなかった。新卒1年目に頑張りすぎて入院したときも、お店の食洗機が壊れてひとりで夜中の3時まで手洗いしたときも、店長の1年目に26人中20人のスタッフが入れ替わって絶望を感じたときも、不思議と「辞めたい」という言葉は頭にまったく思い浮かばなかった。
 
どんな状況に陥っても、絶対に誰かが私のことを信じてくれる。手を優しく差し伸べてくれる。そんなみんなの姿が眩しくて、かっこよすぎて、嬉しくて。私もそんな先輩たちと同じ目線で仕事ができるようになりたかった。追いかけるのに、いつも必死だった。だから、まさか自分がこの会社を退職する日が来るなんて、思ってもみなかった。
 
 
きっかけは結婚だった。結婚とは夫婦になることだけど、それだけじゃない。私にとっては自分の価値観をぐるっと回転させるものだった。
 
これまで、私の最優先はいつも仕事だった。シフトを出すときは、いつも忙しい日と休みがかぶらないように気を遣っていた。だから、私にとって元旦やクリスマス、ゴールデンウィークは勝負の日。休むなんて1ミリも考えていない。なのに、結婚した途端、めちゃくちゃ休みたくてしょうがない……!
 
私も家族でゆっくり連休を過ごしたい。実家の母や弟は元気かな? 年に数回しか会う機会がない、おじいちゃんやおばあちゃんにも、もうしばらく会っていない。シフト制のため、同じ家に住んでいる夫ともすれ違ってしまい、私は家族団欒タイムに飢えていた。
 
年を重ねるごとに家族のありがたみを実感してしまう。とにかく気を遣わなくていいから、とっても気楽。まさにありのままの自分を見せることができる。店長試験に3回も落ちたダメダメな私でも、社会人経験を重ねると、自分がいいと思ったことでも、相手にとってはNGなこともあると知っている。だから、言葉をちょっと濁したり、飲み込んだりするようになっていく。
 
相手のために言葉を曲げるのは思いやりだから、とっても素敵なことだと思う。でも、時にはそういうことを全部無視して、自分の思うことを自由に語りたい。それを叶える手っ取り早い方法が、家族との時間を過ごすことだ。その時間はなにものにも代えがたい、大切な時間であるような気がしていた。
 
その後、介護の問題などもあり、私は土日休みの仕事へ転職することを決めた。
 
「辞める」っていうことを言いたくて、マネージャーを呼び出したのに、一生泣き続ける私は、さぞ迷惑だったと思うが、マネージャーは相槌を打ちながら、やさしく話を聞いてくれた。そして、応援してくれた。
 
それから私は、えいやー! と未経験でIT企業に飛び込んだ。プライベートを大切にする自由な働き方に憧れたからだ。もちろん土日祝はお休みだ。
 
カスタマーサポートとして入社した。手持ちの仕事に慣れてくると、製造管理をやったり、アルバイトさんの採用をしたり、他にはコンテスト企画や新商品の発売準備、htmlやCSSのコーディング、プレスリリースや社内ブログの執筆。気になることや、やってみたいことは、片っ端から全部やらせてもらったように思う。
 
その中でも、私はライティングが好きだった。書いてるとあっという間に時間が経ってしまう。いつまでも悩んでいられるほど、まったく苦にならない。良かったよー! と誰かに私の文章をほめてもらえるものなら、もう一日中ずっとにやにやしてしまう。そして、もっともっと上手くなりたい、と思うのだ。
 
 
いま、私はCRMチームでメルマガを書いている。これからもずっと、書く仕事をしたいと思っている。新しい会社でいろいろな経験を積ませてもらったおかげで、ようやく大好きだったあの会社の代わりになるものが見つかったような気がする。目の前の霧がスーっと晴れていく感覚があった。
 
私は自分らしく過ごせる時間が欲しいと思い、10年間勤めた大好きな会社を退職したが、3年たったいま、改めて考えてみると本当の理由は違う気がしてくる。私は家族の時間が1番大事なのに、なぜ、こんなにがむしゃらにずっと挑戦してきたのだろう?
 
たぶん、諦めていなかった。私はずっと、言葉を濁したり、言葉を飲み込んだりせずに、伝える方法を探していた。ひとつ間違うと、おせっかいやマウンティングに捉えられてしまうようなことも、自分が心の底からすごい! と思ったことは、本当にいらない言葉なのか、その答えが知りたい。その好奇心が、私をいまの仕事へ導いてきたように思う。
 
 
 
 
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