メディアグランプリ

タイプライター開発秘話が教えてくれた伝わるための取材の仕方


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:深谷百合子(ライティング・ゼミNEO)
 
 
取材時に録音した音声を再生しながら、私は記事を書いていた。ところが、ある所で手が止まってしまった。何度再生しても、話されていることのイメージが湧かないのだ。それはタイプライター開発の秘話だった。
 
「タイプライターにとって、活字は要の部品です。くっきりとした活字を出すために苦労したわけですが、おこしもんにヒントを得て、コイニングプレスという機械を完成させたんです。振動させながらプレスしていくと、グググっと先端が出てくるんです」
 
取材の時は、展示パネルと展示品を見ながら説明を受けたので、何となく分かったつもりになっていた。「へぇ、そうなんだ」と思っただけなのに、なぜか分かった気になっていたのだ。ところが、いざ記事として人に伝えようとしてみたら、どう伝えたらよいのか見当もつかない。
 
そもそも「おこしもん」とは何か? から説明しなければならない。「おこしもん」は、名古屋周辺の地域で桃の節句の時につくられるお菓子である。鯛や梅の花などをかたどった木型に、お湯で練った米粉を押し込む。その後、型から外してそのまま食べたり、お餅のように焼いて食べたりするものだ。
 
それはなんだかイメージできる。でも、それの何にヒントを得てくっきりとした活字をつくることに成功したのだろう? 「振動させながらプレスしていくと、グググっと先端が出る」と言われても、それと「おこしもん」に何の関係があるのだろう?
 
「しまったな。取材の時にもう少し詳しく聞いておけばよかった」
悔やんでみたところで仕方がない。私はもう一度調べてみることにした。
 
くっきりした活字というのは、どんなものか? 例えばA、E、L、Mなど曲がっている部分の角(かど)を鮮明にするということだ。つまり、タイプライターの活字をつくる時、開発者は、鋭角の部分はキリっとした鋭角に、直角の部分は直角に角張っている活字をつくりたかったのだ。けれども、開発を目指していた1950年代当時の日本には、タイプライター用の活字をつくる技術は乏しかったようだ。それで、開発者は日夜知恵を絞っていたという。
 
一方、「おこしもん」をつくる際、木型に米粉を押し込む時にコツがあるらしい。ただ力で押し込んだだけでは型の隅々まで米粉が行き渡らず、角が丸くなってしまうのだそうだ。例えば、木型に彫られた鯛の背びれや尾びれの形も、先端まで米粉が行き渡らないと、くっきりした形が出ないという。ところが、手のひらでもみながら押し込むと、先端まで米粉が行き渡り、型から抜くと角がくっきりとした「おこしもん」ができる。
 
開発者は子どもの時に「おこしもん」をつくったことがあった。「おこしもん」もタイプライターの活字も、「どうしたらくっきりとした角を出せるか?」という点で課題は共通している。「おこしもん」は、米粉を手のひらでもみながら押すと米粉が木型の隅々に行き渡り、角が出るということを、開発者は子どもの時に経験して、知っていたのだ。
 
「それならば、同じ原理で金属をプレスしたらよいのではないか」
そうひらめいた開発者は、この原理を応用することを社内で検討し、遂にコイニングプレスという機械を完成させたのだ。これが「振動させながらプレスしていくと、グググっと先端が出てくるんです」の正体だった。
 
「そういうことだったのか」と私は思った。私は愛知県の出身ではあるけれど、自分で「おこしもん」をつくったことはない。もし自分でつくったことがあり、木型の先端まで米粉を行き渡らせるために工夫した経験が私にもあれば、「おこしもんにヒントを得た」と言われたところでピンときたかもしれない。
 
やっぱり、イメージできていないことは「分かっていない」に等しいんだ。自分の見聞きしたことを誰かに伝えようとするなら、ボーッと聞いてちゃダメだなと思った。だって、「伝える」って相手とイメージを共有することなのだから。
 
「おこしもんにヒントを得て」と言われた時に、私は「へぇ、そうなんだ」と思っただけだったけれど、本当は「具体的にどういうところにヒントを得たのか?」をもっと詳しく聞けばよかった。そして、「例えばこういうことですか?」と自分の抱いたイメージと相手のイメージとを摺り合わせていけばよかったと思う。そうやって、映像として見えるくらいにまで相手の話の解像度を上げていく質問をすればよかったのだ。
 
だから次からは、聞いただけではイメージできない話に遭遇したならば、徹底的に質問しよう。そして、4K8Kくらいの解像度の映像を描くように書いていこうと私は思っている。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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