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どうしても自分に甘いあなたに

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:伊藤 浩一(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
自分の甘さを振り切って一歩前に進んだ時、私は美ら海水族館の巨大な水槽を思い出す。
見たこともない美しい海の世界。
光射す巨大な水槽の中で悠然と泳ぐ海の生き物たち。
その圧倒的なスケールの前に佇み、私は開放感と高揚感に包まれる。
 
美ら海水族館は沖縄中部の本部町にある。
羽田空港から那覇空港まで約2時間半。那覇からはレンタカーで沖縄自動車道を通り、2時間近くかけてようやく水族館が見えてくる。
館内にはいくつもの海の生き物たちの施設があるが、なんといってもメインスポットは黒潮の海を再現した大水槽だろう。
熱帯魚の水槽を通り過ぎ、暗い通路を抜けると突然青く眩い光とともに視界が開け、巨大な水槽の中に悠然と泳ぐジンベイザメが姿を現す。
まるで別世界に入り込んだかのような感動の瞬間だ。
 
来ちゃった……
圧倒的な美しさの前に呆けたように口から出る一言。
少し時間を作って一歩踏み出せば、こんなすばらしいところに来ることができる。
世界を変えるなんて意外と簡単なことだと思えてしまう。
 
いつもの環境いつもの自分でいると見えない世界がある。
日々の生活や仕事の延長にはない世界。
ここまでやればいいかとか、自分には無理と思っているとたどり着けない場所。
それでも、いつもより少し手を伸ばせばすぐにでも届いてしまうところにそれはあったりする。
 
正直に言えば、私は自分に甘い人間だ。
もう少しがんばれば良いのだと頭ではわかっていても、あと一歩のところでどうしても甘さが出てしまう。
例えば、筋トレをしている時。
筋トレは負荷をかけて筋肥大を促すのがポイントだが、これ以上やったらつらいなと思うと、ここまででいいかとそれほど負荷をかけずに甘えてしまう。
毎日続けることを目標に始めた英会話も、今日は仕事で疲れているからと甘えてレッスンをさぼってしまう。
ダイエットのために食生活改善だと意気込んでも長続きせず、結局体重は元通りなんてことは幾度となく繰り返している。
 
意志が弱いのだろうか、自分の甘さをどうにかしたいと思ったことも何度もある。
ただ漫然と同じことが繰り返される日々。
自分への甘さが原因だ。自分を責める。甘さをなくすことは難しい。
どうすれば良いのか……暗いトンネル。暗中模索。自己嫌悪。
 
しかし、どんな暗闇にも光は射す。
自己流の筋トレに行き詰まった私は友人の勧めでパーソナルトレーナーがつくジムに通うことにした。
トレーニングは人に習うよりも自分でやるものと意固地になっていた考えをあらためることにした。
担当のトレーナーは爽やかイケメンの若者だった。
見るからに優しそうな顔と話し方。
これは気楽にできそうだと甘く考えた……のは最初の挨拶の時だけだった。
 
「足上げて腹筋いきましょう!30秒3セットいきまーす」の掛け声とともに始まったパーソナルトレーニング。
「はい、あと10秒。しっかり頭あげていきましょう!」「ラスト1回、もう10秒追加しましょう!」と、元気に爽やかに追い込んでくる。
鬼だ、と内心思いつつ、自分なりに鍛えた成果を見せつけてやるとばかりに食らいついた。
腹筋の後も、自分一人では絶対にしない回数、時間、重量のトレーニングを約1時間。最後にはバトルロープトレーニングで全身の体力を使い果たした。
我ながらよくやったと自分で自分を褒め称えたい。
ゼーハー肩で息をしている私に、終始爽やかな表情のイケメントレーナーが次回またお待ちしております、と明るく言った。
苦笑いを浮かべながら私はまたお願いします、と頭をさげた。
 
その後、しばらくジムに通いトレーナーの追い込みにも慣れ、教わったトレーニング方法を自宅で自主練もした。
そしてある時トレーニング後にシャワーを浴びながらハッとした。
かつての自分であればやれなかったことが今できている、いつの間にか一歩先どころか二、三歩先を進んでいることに気がついたのだ。
自分の甘さから自分で決めつけていたここまででいいかという限界をとっくに超えていたのだ。
過去の自分とはまったくの別世界に自分が立っているような気がしてうれしくなった。
 
自分の甘さをどうにかしようとか、意志を強くしたいと自分を変えようとがんばることも大切だとは思う。
ただ、かつての私のままであれば、自分一人で自分を変えなくちゃともがきいまだに同じことを繰り返していただろう。
私は私のままで、甘えを抱えたままで、パーソナルトレーニングに一歩踏み込んでみた。
そこには私を常に励まして追い込んでくれるトレーナーがいて、いつの間にか以前は越えられなかった壁を越えて違う場所に立たせてくれている。
無理に自分の内面を変えようとしたわけではない。一人で悶々と悩み苦しんだわけでもない。
他の人の力に後押しされて、今までとは違う景色がみえることもある。
 
自分の甘さを振り切って自分の世界を変えることは、少し時間を作って美ら海水族館に行くようなものだ。
そこにはいつもとは違ったすばらしい世界が広がっているけど、そこに行くのはそれほど難しいことじゃない。
ちょっと行ってみるかくらいの気持ちで一歩踏み出してみるだけだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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