満開のさくらの花は、いいねの数
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記事:萩原りえ子(ライティングゼミ・4月コース)
今年も桜の季節がやってきた。
日本人にとって桜という花が、単に美しいだけでなく、その中でも特別な存在であることは、子どもの頃から何となく感じとっていた。
国の花だからということだけではなく、多くの大人たちが毎年毎年、この花が咲くことを
今か今かと待ちわびている様子を見続けていたからかもしれない。
『花見』と生じて多くの場所でまつりが行われ、目を引く出店が軒を並べる。
多くの観光客が花を見るためにわざわざその場所を訪れようとする。
連日のテレビのニュースでは、「○○で桜が開花しました!」とリポーターがその様子を現地にまで訪れて伝えている。まるでその様がまつりのようだ。
そもそも『花見』の花といえばイコール “桜” と相場が決まっていること自体この花がいかに特別視されて注目度が高いかということが分かる。
一般的に “花” といえば、国内で流通しているもので、季節毎に生花店に並べられている切り花だけでもその数2万品種もあるというのに、その “花” という敬称を独り占めしている桜はやはり特別な存在だとつくづく実感する。
桜の季節に花見に行こうと言われて他の花を思い浮かべるひとはほとんどいないであろう。
さてその花には、その数だけ花言葉が存在する。細かく分けると500品種もあるという桜のそれぞれにもまた異なった花言葉がついているのだが、この桜全般の花言葉は、「精神美」である。
私はこの花言葉が、好きだ。
花言葉は、花の数以上、色別でも存在していて、その数はとても数えきれない。無数にあるとも言っていい。その中でもこの言葉に特別惹かれるのは何故なのだろう?
それは、「精神の美しさ」という外からでは決して見ることができない内面の美を外見の美しさに重ね合わせた花言葉というもので表現しているからかもしれない。何よりもそういうものに憧れている自分がいる。
日本文化の中には、華道、茶道、武道など、道と名前がつく伝統文化があるが、日本人の持つ感覚の根底には、この伝統文化の影響が少なからずあると思う。
ここには共通して古来受け継がれている型があり、その教えの中には少なからず神道や仏教などに沿った人の善悪を判断する基準等の考えも含まれている。礼儀や作法を身に付けながらそれぞれの伝統文化では、それを習得するための鍛錬の道こそが大切とされている。
同じ一つのことを長くずっと続けていくことは、身体と心を鍛えることを伴っている。精神を鍛え磨きながら腕を上げるまでの道は、遠く細く険しい。この道を歩み続けることこそがそれぞれの文化の名称につく “道” なのかもしれない。研鑽を続ける道を歩き続けることこそがとても大切な教えの柱なのだろう。
華道家であった母の影響を受けた私にとって日本文化は、神の道へ通じているという感覚を得ながら育った。幼少期からずっときちんとしていなければいけないと思い続けていることは、きっと私の神様への承認欲求なのかもしれない。
言葉の多くは、はるか昔に生まれて、ひとからひとへと言い伝えられてきたものである。
新たに生まれたり、使われなくなってしまったり、例えば「やばい」のように途中で意味が変わってしまったり、または使われなくなってしまった言語もあるけれど、その中でも季節に根付いている言葉は、長い年月をかけながらも消えゆくことがなかった。
それは、人の暮らしをささやかながらも支え続けてくれる存在だったからなのかもしれない。
かつて桜は人の暮らしに欠かせない生活を占うような存在の木であったと言われている。田んぼの脇に植えられた桜の木は、種まきの時に満開となればその年は豊作になる目印になると言われたそうだ。農耕民族であった私たち日本人にとって生活に必要なツールの1つだったのだろう。そして元々は、さくらの “さ” は稲の神、”くら” は神の座を表す言葉に由来していたそうだ。さくらをモチーフにした言葉は今もなおたくさん使われ続けている。
現代の私たちでもとても多くの人が桜に特別な思いを持つのはどうしてなのだろうか?
満開の時を経てすべての花が散ってしまっても若葉を茂らせそしてまた再び花を結ぶ。一歩前進しては後退しながらもそれでも少しずつ大きく成長していく木の様が人の一生とリンクするからなのか? 桜の咲くそもそもこの春の季節が多くの人のスタートの時期を象徴しているためなのか?
いずれにせよ、淡いピンク色の花が咲き誇る満開の花の色は気分を高揚させる。厳しい冬の季節を抜けて温かい春を迎え、自然の神様からのギフトを与えられたようにも感じる。
桜とは、私にとって「人生の道」と例えても良いのかもしれない。桜の花の開花するその様は、ひとの人生の縮図を現している様に思えてならない。
無数の花が咲き誇る。満開に咲き揃った桜の花は、1年間頑張った自分へのご褒美だ。
今年も桜の咲く道を歩くことができた。
そして今日もまた、葉桜の道を歩き続ける。
参考文献: 『心ときめく言葉の12か月』
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