メディアグランプリ

踏み出した一歩は、希望に満ち満ちて


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:秋篠奈菜絵(ライティングゼミ・4月コース)
 
 
ずっとモヤモヤしていた。何も行動できていない自分に。
 
2月24日、戦争が始まった。ニュースから得られる情報は信じ難いものばかりで、思わず目を逸らしたくなる。新聞を見るたびに、信じられない光景と信じられない残酷な事実が目に飛び込み、胸が押し潰されそうになる。
 
「戦争が1日でも早く終わってほしい。もう誰も死んでほしくない。」
 
そう思えば思うほど、何もできずに今まで通りの生活を送っている自分が嫌になった。反戦デモに参加するのか、募金をするのか、SNSで発信をするのか…色々思いつくものの、どれにも動けず、悶々とした日々を送っていた。
 
そして気づいた。私にできることは、目の前にいる12人の子どもたちと共に学び続けること、それしかないのではないかと。
 
私が「学校を創りたい」という夢を持ち、動き始めたのは5年半前だ。3年前に小学校の教師を退職し、二人の子育てをしながら仲間と共に「ここのね自由な学校」という民間の学校を立ち上げてきた。三年間かけて1人、2人と生徒が増え、今では小学生から中学生までの12人の生徒が学校に通ってきてくれている。
 
目の前にいる子どもたちに、今こそ平和の大切さを伝えたい。戦争の真実を伝えたい。それが、今の私の大切な大切な役目だ。
 
しかし、困ったことに私は歴史に全く詳しくなかった。詳しくないどころか、学生時代歴史が嫌いすぎて、授業は寝てばかりだったし、テストはいつもひどい点数だった。そんな私なので、なぜこの戦争が始まったのか、背景にどんな真実が隠れているのか、調べても調べてもどんどんわからなくなった。
 
「このままだと、子どもたちにどんな風に伝えたらいいのかわからない…」
 
悩んだ私は一緒に学校を立ち上げた仲間に相談することにした。いつも子どもたちと関わっているスタッフは私を含めて4人。経営担当のこうちゃんと美術担当のばんちゃん、プロジェクト学習担当のももちゃんと基礎学習を担当している私の4人だ。
 
「戦争について、みんなで一緒に学べる授業をしたい。私だけではどうしても自信がないから、一緒に内容を考えてもらえないかな?」
 
3人は、すぐに快諾してくれた。そして、歴史が得意なこうちゃんは、「これが全て真実とは限らないけど」と前置きをしてから、ソ連時代から現在に至るまでの歴史的な背景をとてもわかりやすく教えてくれた。「そのまま子どもたちに伝えてほしい!」と私たちが大興奮するほどわかりやすく、こうちゃんの存在がとても心強かった。
 
「日本のメディアは視点が偏っていると思う。もっと色んな視点で戦争を捉えられるようにしたいね」
「昔、日本でどんな戦争があったかも知ってほしい。夏休みに長崎平和記念公園にみんなで行くのもいいね」
「少しずれるかもしれないけど、私たちが日常的に買っているものがどうして安いのか、フェアトレードの問題も扱っていけたらいいな」
 
 
話せば話すほど、数回の授業ではとても終わらせられない、壮大なテーマが私たちの中から溢れてきた。そこでこのテーマは1年間かけてみんなでじっくり、しっかりと取り組んでいこうと決めた。
 
みんなが同じゴールを目指して授業案を考えていくために、「3月に子どもたちがどんな姿になっていたらいいと思うか」を出し合うことになった。それから長い話し合いの末、三つの姿が決まった。
 
一つ目は、「自分の命を大切にできる人」
 
自分の命を大切にできる人は、自分以外の人の命も大切にできる。そしてそれは、「人の命を簡単に奪ってはいけない」という気持ちにも繋がっていくと思うからだ。そこで、8月に出産予定のスタッフももちゃんのお腹周りや赤ちゃんの体重を計算したり、グラフに表したりする授業をすることにした。妊婦さんの気持ちの変化や産まれた後のお母さんの気持ち、そしてさらに子どもたち自信が産まれた時のエピソードをお家の人に聞く活動もとってもいいなと思った。
 
二つ目は、「平和に向けて行動できる人」
 
先日、ある男の子が「戦争で亡くなった人たちのために千羽鶴を織りたい」と伝えてきてくれた。自分に何かやれることはないかと模索しているのは、子どもたちも一緒なのだ。自分たちに何ができるかを考え、少しでも行動できること。それが本当に大事なことで、実はとても難しいことなのだと思う。そこでスタッフのばんちゃんが言った。
 
「子どもたちに悲観的なことだけを伝えて終わりじゃなくて、希望も伝えたい。今新しく始まっている地域通貨を使ったコミュニティづくりや地球に優しい物々交換をして助け合っている人たちのことも伝えて、安心も届けたいな」
 
現実を伝えることはとても大切だけど、それで終わってしまったら、あまりにも悲しい。それに、私たちが想像できないくらいの希望をつくっていけるのは子どもたちなのだ。
 
 
最後に「多面的・多角的な視点を持つことができる人」
 
新聞やテレビから流れてくるニュースを鵜呑みにせず、一つの出来事を色んな側面から考えられる人になってほしい。人の意見を素直に聞き、受け入れるという柔軟さも大切にしながらも、人の意見に流されずに自分なりの答えを見つけることができたらどんなにいいだろう。そのためにも、色んな知識をもとにスタッフも子どもも混ざり合って意見を出し合い、考えを深められる授業ができたらいいなと思う。
 
 
「自分の命を大切にできる人」
「平和に向けて行動できる人」
「多面的・多角的な視点をもつことができる人」
 
この3つの姿を目指していくと決まったとき、私の心は震えた。
こんな人が育つ学校をみんなでつくれたら、きっと世界は平和に近づくと思う。
 
私は何も行動ができていないと思っていた。確かに、今の戦争を止めるために行動はできていないかもしれない。だけど、今は、目の前の子どもたちと一緒に平和について仲間と共に考え続けることが、私にできる「行動」なのだと思う。
 
そして子どもたちに求める前に、まずは自分が3つの姿に近づける大人になろう。
 
今、その一歩を踏み出したんだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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