メディアグランプリ

好きでもない人に「A型の人は無理なので」と振られた話


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記事:川端彩香(ライティング・ゼミNEO)
 
 
A型は几帳面で、B型はマイペースで、O型は大らかで、AB型は二面性があり少し変わっている。というのは、血液型占いに興味がない人でもなんとなく知っているのではないだろうか。
 
血液型占いが流行り出したのは、いつ頃だっただろうか。私が中学生の頃には、血液型別に性格やら何やらが分析された本が人気で、書店によく並んでいるのを見ていた。私も、自身の血液型の本を買った記憶がある。
中高生が血液型占いでキャッキャ言っているのは微笑ましく、可愛らしいなと思うが、大人になってからは血液型で人を判断することもなくなり、「○○さん、O型でしょ? 大雑把だもんね~」なんて冗談で笑い合うくらいのネタにしかならないだろう。
 
血液型占いは、過去に論文が発表されたことはあるが、科学的根拠はないらしい。そして、血液型占いというものが世間で知られているのは日本や、日本文化が浸透している台湾や韓国くらいらしい。
 
確かに、人間を血液の種類だけで4つのタイプにくっきり分けてしまうのは難しいだろう。A型でも、大雑把な人はたくさんいる。ちなみに私の妹はA型なのに大雑把だ。めちゃくちゃ部屋が汚い。私は妹によって、血液型占いを信じなくなったと言っても過言ではない。
 
少し脱線したが、血液型だけで「この人はこういう人だ!」と判断するのは、至難の業だと言えるだろう。
 
ある日、会社の休憩スペースでお昼ご飯を食べていたら、先輩が同席してきた。
先輩は3歳年上で、何年かお付き合いして同棲した彼女と結婚し、そして離婚した。話は自然と「結婚(先輩は再婚)したいね」という流れになった。
 
結婚したいけど出会いがないだとか、30歳以降はなかなか出会いがないものだなとか、そういう結論の出ないことを二人でぶつぶつと喋っていた。ぶつぶつ喋っているうちに、話題は先輩の元嫁や歴代彼女の話になっていた。正直先輩の好みのタイプやら元嫁との破局原因やら歴代彼女のうんぬんかんぬんやら、まったく興味はない。興味はないが、「はー、へー、そうなんすねー」と適当に相槌を打ちながら聞いていた。
 
適当に相槌を打って話を流し聞きしているうちに、話題は先輩のNGタイプの女性の話に話題が移っていた。これも大して興味がない。いや、大してどころか、まったく興味ない。
私の心情を察してくれない先輩は、自分のNGタイプの女性の条件をツラツラと話してくれた。その中の一つが、なんと血液型だったのだ。「僕、A型の人とは絶対に合わないんよね~。だから、A型の人は無理!」と。
 
いや、まじか。まじで言ってんのか、こいつ。あ、先輩に対して「こいつ」とか使ってしまった。いや、でも、まじか!!
この時代に、この年齢にもなって、しかも男性で、血液型を異性のNG条件として挙げる人がいるのか!? いや、いたわ、ここに! 私の目の前にいるわ!
 
なぜA型の人が無理なのか、そこには少し興味が湧いたので聞いてみた。聞いてみたが、パッとするような答えは返ってこず、「なんか合わないんよな~」と、ぼんやりした答えが返ってきた。面白くないなぁ。私は再び興味を失った。が、次の瞬間だった。
 
「まぁ、とにかく僕はA型の人と付き合うのは無理やねん。川端さん、A型やんな?」
 
……は?
 
おいおいおい、おい!!!! おい、待て!!!!!
 
先輩の退屈な話で思考停止していた脳が、急速に回り始めた。今、何が起こった? 私、何を言われた? A型やんな? って言われた? お? ということは、ちょっと待て。私、もしかして振られた……!? A型だという理由だけで、振られた!?
  
いや、というかツッコミどころがたくさんある。
まず、私はこの先輩に対して異性として好意を抱いたことは、一度たりともない。残念ながら、異性として魅力的に感じたことはない。それゆえに、そんな素振りを見せたこともないし、誤解されるような言動を取ったこともない。いくら私の結婚願望が強いと言えども、誰でもいいわけではないし、好意を抱いたことのない相手でいいわけも、もちろんない。なんで先輩の中で、私は先輩のことを好きなことになっているのだ? なんかちょっと気持ち悪いな。
 
そしてこれは一番重要なことだと思うが、私はO型だ。A型ではない。
何を持って先輩が私をA型だと決めつけたのかはわからないが、残念ながら私はこの世に生を受けてからかれこれ30年間、O型でしかない。A型になったことはない。もちろんB型にもAB型にもなったことはない。
「A型は無理」だと、先輩はO型の私に向かって言い放ったが、A型ではない私にそれを言うということは、先輩の中でA型=自分と付き合えない奴という認識がなされていて、A型ではない私をA型だと決めつけて「A型は無理」「A型やんな?」と言ってきた。ということは、A型は無理=私はA型=A型である私は無理、という非常に失礼な式が完成してしまっているのではないか? そしてこの一連の流れをまとめると、私は告白もしてないのに、先輩に振られたということになる。
 
いや、なんで振られているんだ? なんで振られないといけないんだ? 告白もしてないのに。っていうか、好きでもないのに。なんで好きでもない人に、振られないといけないんだ!!!!!
 
と脳内で憤る思いを吐き出したあと、「あの、私O型なんですけど……」と少し気まずそうに先輩に告白した。「あ……、すみません」と謝られた。いや、何に対しての謝罪だ。謝るなら全A型民に謝罪しろ。私はO型だけれども。
 
血液型占い、楽しむだけなら良いが、あまり囚われすぎるのはよくない。人類を4タイプだけにパックリ分けて枠にはめ込んでしまうなんて、無理なのだ。何型だから、こういう性格! なんて決めつけるべきではない。同じ血液型でも、個性があるから人は面白いのだ。
それから、人の血液型も決めつけるべきではない。今回のような気まずい惨事が稀に起こる。
 
科学的根拠のないものは、娯楽として楽しむ分には面白いと思う。だけど、信じすぎてしまうのも、これまた問題だ。
何事も程々にが良いんだろうなぁ、と思う、水曜日の昼休みだった。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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