メディアグランプリ

僕が本当に欲しかったおめでとうの言葉


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記事:早藤 武(ライティング・ゼミNEO)
 
 
自宅の電話で何度かの会話の後に、受話器を置いてから僕は胸につっかえていた言葉を口にする。
 
「少しくらい良いじゃないか!」
 
真夏のミンミンと鳴くセミたちのうるさい音が、やっと静かになってきた時期に僕はクラスの友達に電話をかけて何度も何度も悔しい思いをしていました。
 
「本当にごめんね、家の用事でどうしても行けなくて」
「天気予報で台風が来るかも知れないから両親が外は出ちゃダメだって」
 
1週間後にやってくる僕の誕生日会によかったら来ませんかと誘ってみたのです。
しかし、仲の良い友達に電話をすると大体が行けないという返事。
むしろ誰も来れないのは当たり前で悔しい気持ちを通り越して諦めている気持ちも半分くらいありました。
 
夏休みに入る前には声はかけていました。
それだけでは足りなかったのかもしれません。
 
幸いなことに家族には毎年祝ってもらっていたので、とても恵まれているのだと思います。
小学3年生を迎えて、周りの子と誕生日に祝ってもらっている姿や形が違うことにクラスメイトたちの話を聞いて気がつきました。
 
小学校でのクラス単位のお楽しみ会の時間枠の中で、その月が誕生日の子をまとめてお誕生日会を開いたことがあったのです。
 
みんなに囲まれてハッピーバースデーの歌を合唱してもらいながら、ロウソクの火を消して、みんなからおめでとう! という言葉をかけてもらって嬉しそうにしている光景を目にして、自分も1度で良いからやって欲しいなって思ってしまったのです。
 
頑張って友達には声をかけてみたものの、時期は夏休みの終わり間際なのがタイミングが良くなかったのかもしれません。
もっと早く声をかけようと思っていたのですが、8月のお盆シーズンでほとんど連絡がつかなかったのです。
 
夏休み中なので、他の子とは違って学校の中でお祝いをしてもらう会を開いてもらうことはありません。
そして夏休みの宿題のラストスパートをしている子もいたり、家族旅行で遠くに何泊も出掛けていたり、そして今回は台風が近づいてきているので外に出たら危ないので自宅でお誕生日会を開こうと思っていても、外は非常に強い雨と風で出歩くことはできなかったのです。
 
1年に1回しかやってこない自分の誕生日は特別な日なのだからこそ、その日におめでとうって言って欲しいのに。
 
そして誕生日の当日、家族は僕の誕生日を祝おうとケーキや大好物の唐揚げの山などの魅力的なごちそうを用意して祝ってくれる準備をしていました。
幼稚園児の弟は、兄である僕を喜ばそうと幼稚園で習った折り紙でリングをつなぎ合わせて飾り付けまで母親と一緒にしてくれています。
 
家族の気持ちは心の底から嬉しいけれど、正直な気持ちは1度で良いから友達に囲まれてリアルタイムで誕生日を祝ってもらいたかったのです。
 
「私たちがみんなが来れない分、いつも以上にお祝いしてあげるから料理が冷める前に早く食べましょう!」
 
元気づけてくれる母親の声に、少し元気が出て家族で慣れ親しんだお誕生日会を開始しました。
部屋を暗くして、ケーキの上に乗った自分の歳と同じ数のロウソクの火を消しておめでとうと祝いの言葉をかけてもらいました。
 
テーブルの上に並べられたごちそうを食べ始め、いつもは兄弟で争奪戦になる唐揚げの山も今日は弟が、僕に先にどうぞと譲ってくれる気持ちが嬉しく思います。
しばらくすると家の電話が鳴り、母親が電話をとりにパタパタと移動していきます。
 
冷めないうちに食べてて良いからねと僕ら兄弟に言葉をかけて鳴り響く受話器の向こう側の相手と話を始めました。
 
せっかくなので、今日はお腹いっぱいに好きなものを食べて良い気分になろう。
そう思って盛り付けていたところで、電話をしていた母親から呼びかけられます。
 
「美味しく食べているところごめんね。お友達からの電話だったの」
 
今日は友達のみんなはそれぞれの事情や天候の影響で来れないことは知っていたので、何だろうと思って母親から受話器を受け取って耳に当てて、電話を替わりました。
 
「今年はお誕生日に行ってあげられなくて、ごめんね! だから、電話でおめでとうって伝えようと思って!」
 
今日来れないと断ってきた友達からのお祝いのメッセージでした。
誕生日の当日におめでとうと言ってもらえることを諦めていたので、嬉しい気持ちでいっぱいになり、ありがとうと何度も返事をしながら電話を終わりました。
 
家族が嬉しそうにしている僕をみて、良かったねと声をかけてきました。
 
その後も何度も電話が鳴って、全員ではありませんでしたが友達がお誕生日おめでとうのメッセージを伝えに連絡をくれました。
 
自分が本当に欲しいと思って行動したものは、最初に欲しいと思っていた形とは違う形で自分の元にやってきてくれるのかも知れません。
 
翌年はひっきりなしに、お誕生日おめでとうのメッセージを直接だったり、手紙の形でもらうことになりました。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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