メディアグランプリ

うまい棒1本差だから、マスクは高級品を


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記事:村人F(ライティング・ゼミNEO)
 
 
「マスク50枚、300円!」
 
コロナ初期の大混乱を知っている者にとって、これほど魅力的な広告はあるまい。
品薄かつ凄い金額で取引されていた当時を考えると、ついつい手が出てしまう安さである。
私も毎日使うからと衝動買いしてしまった。
 
しかし、この選択は大失敗だった。
マスクの質が悪すぎたのである。
紐のかかる耳が痛いのはまだいい。
問題はニオイだ。
だいたい1時間で「いつもこんな息をばら撒いているの?」と泣きたくなる程に臭くなる。
こいつが付けている間ずっと続くんだから、とにかく不快だった。
そして口臭をこれだけ吸収するわけである。
ならばバイ菌だって掴んで離さないに決まっているではないか。
これでは何のためにマスクを付けているのかわからない。
完全にムダである。
だから50枚使い切るまでの日々は本当に地獄だった。
 
この経験のせいで安いマスクを買うことに抵抗を持ってしまった。
もちろん全てが酷い品質ではないことはわかっている。
しかし、こうなるかもしれない恐怖と戦うのは辛い。
だから某通販サイトで予算を上げて探したのである。
 
出会ったマスクは有名メーカーの物だった。
かけ心地も柔らかく、医療従事者向けだからウイルス防止力もお墨付きだ。
そして値段は100枚入り1800円である。
 
「1800円ってことは300円マスクの6倍だから高いな」
一見、こう感じるかもしれない。
確かに手を出しにくい高級品に見える。
 
しかし、これは罠である。
やるべき割り算はこうだ。
値段÷枚数。
この式で1枚あたり何円かを計算するのである。
 
すると50枚300円の安いマスクは6円。
100枚1800円の高級品は18円となる。
つまり、1枚あたりの価格差は12円だ。
 
この金額に見覚えはないだろうか。
最近の経済ニュースに詳しい方ならばピンとくるかもしれない。
 
そう、うまい棒の値段である。
値上げしたがそれでも安く、子どもから大人までみんな大好きな駄菓子。
これ1本分の差なのだ。
 
よって、どちらを選ぶべきか論争は、
安いマスク&うまい棒
V.S.
高級マスク
この対決になるわけである。
 
では両サイドの戦力分析をしていこう。
安いマスク&うまい棒のデメリットは、マスクを付けている時間が辛いことである。
ずっと口臭やら、耳の痛みに耐えなければいけない。
しかし我慢の先にご褒美が待っている。
うまい棒だ。
味のバリエーションが豊富で、大ボリュームのこいつを毎日買えるのである。
これは魅力的だ。
 
一方、高級マスクはどうか。
柔らかい紐だから、耳に負担がかからない。
対ウイルス性能も強いし、口臭も寄せ付けない。
そして呼吸も楽。
この快適時間を過ごせるわけである。
しかも、これが付けている間ずっと続くのだ。
うまい棒だと選ぶ時間も含めて1分くらいしか持たないことを考えると、はるかに長い期間楽しむことができる。
さらに何も食べないからカロリー0だ。健康にもいい。
 
これには流石のうまい棒も太刀打ちできない。
残念ながら高級マスクの勝利である。
今回は相手が悪すぎた。
ごめんなさい、うまい棒。
コロナ禍が明けたらいっぱい買うよ……。
 
このやりとりを脳内で行い高級マスクを購入したわけだが、評判通り最高だった。
おかげで快適なお出かけ時間を過ごせている。
いい買い物とは、こういうことを言うのだと思った。
 
しかしこのマスクを選んだ感覚は、現代ではより重要に感じる。
物価の上昇が続いているせいで「安ければ正義」という方向に行きがちだからだ。
これは安さが何かの犠牲の上に成り立っていることを忘れさせてしまう。
しかし、それはいずれ身体への負担という形で表れる。
例えば安いマスクの場合は付けているストレスにより、さらに仕事が辛くなるだろう。
そのせいで休職してしまったら、節約した金額があっという間に吹き飛んでしまう。
 
しかしこの状況の回避が、わずかうまい棒1本分の投資で可能なのである。
こう考えると、やはり使うべき場面があることに気付かされる。
節約は大事だが、貯めたお金を適切に放出するのもやはり重要なのだ。
今回のマスクは、まさにその場だった。
だから「いい買い物だった」と自信を持って断言できる。
そしてこの選択をする能力はインフレが進む今、より必要になるのだろう。
 
「無理をして節約していないか」
「不快感はどの程度の投資で回避できるか」
買い物でこういった判断をする機会は、これからどんどん増えていくだろう。
このとき、うまい棒を指標にしてみてはいかがだろうか。
なぜならマスクなど毎日使う物の場合、1回あたりの値段差が高級品ともこの程度である場合が多いからだ。
そして「節約の苦痛はうまい棒1本で許せるレベルか?」という問いは、わかりやすい基準になる。
 
私もこの感覚を頼りに、適切な節約と投資をしていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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