それは感動の玉手箱でした ~12代目天狼院秘本作者先生にお会いして~
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:むぅのすけ(ライティング・ライブ大阪会場)
その日は起きた時からソワソワしていた。
待ちに待った日がやって来た。
2022年4月17日の日曜日
なんと○○賞に選ばれ、○○賞にもノミネートされ、おそらく現在あちらこちらの本屋さんにコーナーができているであろう、 『あの本』 の作家さんのお話を直に伺うことができるというイベントに参加できるのだ。
あわよくばサインしてもらえるかもしれない……という俗な期待も込めてしまい、とにかく浮かれていたのだった。
(○○は実際の文字数とは関係ありません)
『あの本』 とは、知る人ぞ知る12代目天狼院秘本のことである。
なんのことか少し紹介すると
このイベントを開催した天狼院書店は、
『本の先にある体験まで提供する』 と謳っている、私のお気に入りの本屋さんだ。
そこではカフェに畳スペースまで併設されていて、購入した本を片手にゆっくりとくつろいだり、またはおしゃべりしたりと、好きに過ごすことができる。
それだけではない。
写真やライティングを始め、デザイン等々、数えきれないほどの大人向けゼミが開講されている。
少し、いやかなり変わっている。
そしてその書店は独自の売り方をする本がある。
タイトルと作者を隠して売られている、その名も 『秘本』 と呼ばれる本で、その独特の販売方法ゆえに、買った人もその秘密を明かしてはならない、というのだ。
そのシステムがまた、かなり面白い。
このイベントは、その最新作である12代目天狼院秘本の作者を招いて、天狼院書店店主が直々に
『創作について根ほり葉ほり聞いちゃうよ~ みんなも一緒に聞きましょ 質問も出来ちゃうよ~』
という趣旨の初めての試みらしい。
思うに
初めて、というのがポイントだ。
またこんな企画があるかもしれないし、二度とないかもしれない。
これはものすごいチャンスなんじゃないか?
思い返せば、子ども時代から本を読むたびに
作家先生の頭の中はどうなっているんだろう……
どんな風にお話を紡ぎだして、それを沢山の文章にしていくんだろう……
いつか聞いてみたい……
でもそんな日なんて来ないよねー
と思っていた私は、今から約一ヶ月前、このイベントの存在を知った日に参加を決めた。
あんなにも憧れた、どなたかまだ知らないけど作家先生のお考えが聞けるんだ。
そもそも、どんな物語なのかもわからない状態だったが、素晴らしいに決まっていると確信していた私は、心の中で小躍りしながら12代目天狼院秘本を読むことにしたのだった。
イベントは書店の一部をカーテンで仕切って行われた。
その場所、そしてその時間だけはネタバレもありのルールだったので、12代目天狼院秘本作者の先生も、店主も、お客さんも、秘密を気にする必要がなく、心置きなく作品について、先生について、語られていった。
このことは、きっと先生以外の全ての参加者が、特別な意味を感じたのではなかっただろうか。
『秘本』として扱う中での秘密の縛りは、性質としては面白いのだがやはり何も明かせなくて苦しいこともあるはずだ。
あらゆる場面で、ネタバレというものがご法度な場合があるのは周知のことだが、あらすじどころか、タイトルと作者まで内緒のままでは、なんだか語るに語れないし、知人におススメするのも難しい……と、軽く困ったことがあるのは私だけではないだろう。
だから私はあの場を共にした読者の皆さんが、同志のような気がして勝手に嬉しく思っていた。
店主はインタビュアーとして、グイグイと切り込んだ質問をして、先生はごく自然体に答えていらっしゃるように見えた。
少なくとも、その時はそう信じていた。
私にとって先生の答えてくださることは、大きな驚きであったり、さすが作家先生なんだなという感嘆であったり、時に全く信じられないという思いであったり、少しはわかるかもという喜びであったりと、大きな波と小さな波が心と頭に打ち寄せ続ける、なんとも贅沢な時間だった。
実は読み終えた後、しばらくして読み直した私は、もっとこの作家先生のことが知りたくなって、前作を探して読んでみた。
テイストは全く違う物語なのだが、表現の仕方というのだろうか文章の成り立ち方と言えばよいのか、全体に流れる描写の仕方のイメージが
ああ、この先生ならではだな、と感じるものだった。
それは、他の作家先生にはそこまで感じないことだったが、ちょうどこの日に12代目天狼院秘本作者の先生が仰っていた
『自分にしか書けない文章を書きたいと思っている』
というような言葉で、ストンと腑に落ちるというか、理解できた気がした。
そのお言葉に僭越ながら、作家のプライドというものを感じた気がして、もう何度目かわからないが、胸が高鳴ったのを覚えている。
最期に質問できることになり、どうしても伝えたいことがあった私は、幸いにもそのチャンスを得ることができた。
ここではストーリーには触れられないのだが、ある武道の経験者から見える、経験のない人の動き方の描写部分に、私個人の長年の疑問が思いがけない形で解けたことの感謝と、先生はもしかして経験者だからご存じだったのですかという質問をした。
幼かった息子が7年間ほど、その最強説もあるらしい例の武道をしていたことから、今まで身近な経験者(指導者)の方々に、どんな世界が見えているのか、いったい何が他の競技と違うのかと伺うも、皆さん感覚でとらえているようで、その説明はどの方のものも、素人の私にはイマイチどころかサッパリわからなかったのだ。
それが先生の的確な描写によって、物語を読む最中に突然理解できたのだ。
このことが、物語で受けた感動とは別の感動をもたらしてくれていた。
それに対する先生のお答えは
お身内にその武道をしている方はいたけど、ご自身は経験はなく別の武道をなさっていたということだった。
その辺りの描写のために、その武道の本は何冊か読んだということも教えてくださった。
そして私を見ながらこのようなことを仰ったのだ。
『(あなたが)そう感じてくれたのなら、うまく(読者を)騙せたなと』
そうだったのだ。
私はキレイに、見事なまでに騙されたのだ。
物語の中で、作家先生に騙していただけたのだ。
あの時の先生のお顔は、マスク越しにも誇らしげに見えた気がした。
実は最前列で先生の一番近くに座っていた私は、それを見て作家先生の、してやったりという冥利に尽きるような場面に、今まさに遭遇できた気がして、涙が出るほど更に違う感動をいただけたのだ。
このことは一生忘れないだろう。
そしてふいに思った。
決して嘘ではないのだろうが自然体に見えた中に、燃えるような創作への想いがおありだということ。
リアルに垣間見えたそれこそが、作家の姿というものかもしれない。
やはりこの場でも、私たちはある意味なにかしら騙されているのかもしれないな、と。
またしても、僭越ながら私個人の考えであるので、プロの作家さんが聞いたら笑われてもおかしくないと、そこはわきまえている。
12代目天狼院秘本作者の先生
サインをいただいた12代目天狼院秘本と、前作の文庫本、そして先生のあのお顔とこの感動は、物語で得た感動と共に私の宝物になりました。
ありがとうございました。
今後のご活躍をお祈りしています。
そして、終始近くでガン見し続けたことを、他愛のないファンのしたことと、どうぞお許しください。
***
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