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いつも心にデスノート ~ 悲しみをこじらせないために ~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:レティシア(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「死ねばいいのに」
軽い口調で発せられる不穏な言葉に、未だにギョッとしてしまう。
 
本当に相手の死を願っているわけではないことがほとんどだと思う。「もう関わりたくない」「自分の視界からいなくなってほしい」といった気持ちで口にしているのだと思う。嫌いな人が優遇されていたり幸せそうに見えることへの腹立たしさなのかもしれない。学校や職場など、毎日顔を合わせなければならない人へのマイナス感情を持て余した時に、ふと口をついて出てくることが多いのではないだろうか。
 
現に、ここ数十年、殺人事件は増えていない。むしろ減少していることを考えると、ほとんどの人は毒づくだけで実行には移していないことがわかる。
 
本気で相手の死を願うこともあるだろう。虐待やいじめ、DVなどの被害者が、加害者を許せないのは当然のことだ。
 
「憎んじゃいけない」と自分自身に言い聞かせたり、「自分にも悪いところがあった」と自分を責めたり、「あの人にだって、いいところがあるはずだ」などと、自分の感情に蓋をして無理をするのは極めて不健康だ。自分をだまし続けると、違和感が澱のように溜まっていき、いずれは自己不信につながっていく。無視されたマイナス感情は、いつしか発酵して異臭を放つ。
 
人を呪いたくなる自分を責めなくていい。だけど、人を呪わば穴二つ。誰かへのマイナス感情に自分自身が蝕まれてしまうのは避けたい。
 
人を呪ってしまう時、私たちの内にあるのは、ひどく傷つけられたことへの怒りや悔しさだけではない。心の奥底のやわらかな部分に、大切にされなかった悲しみが広がっている。理不尽な扱いを受けても対処できなかった自分への情けなさやもどかしさもうごめいている。
 
「この人、嫌いだなぁ」と思いながら、距離を置いて、必要最低限の関わりを礼儀正しくこなす。……それが健康的な在り方だろう。しかし、そううまくはできないから、きな臭い言葉が出てきてしまう。自分から出た言葉に、自分が傷ついたりもする。
 
なので、そんな時は、誰かに吐き捨てたり、SNSでつぶやいたりするよりも、心の中に「デスノート」を作るといい。心の中なら「壁に耳あり障子に目あり」といった事態も避けられる。
 
デスノートとは、「名前を書いた人間を死なせることができる、死神のノート」のことだ。それが出てきた漫画のタイトルでもある。映画化やドラマ化もされ、今も人気が高い作品だ。
 
一方で、正義の名のもとに凶悪犯の抹殺を続けるのは独善的だという批判もある。是非が問われながらも、多くの支持を得てきたのは、私たちの中にある「自分の手を汚さず、相手を不幸な目にあわせたい」という呪いの願望を刺激したからかもしれない。
 
「呪い」の歴史は長い。陰陽師とか、五寸釘を使った丑の刻参りとか、呪いの御札とか。なお、日本で最初に呪いを使ったのは、日本神話に登場する神様の「イザナミ」だというから驚きだ。ギリシャ神話でもたびたび呪いが登場する。人類の歴史は、呪いとともにある。
 
「デスノート」には、細かなルールがある。書いた名前は消せないとか、死亡時刻を指定できる、とか。でも、そうしたルールは色々と面倒なので、この際、ざっくり改変してしまおう。
 
ルールは2つ。
1)書いた名前は消せる
2)こわい呪いはかけない
 
デスノートに書いた名前を消せるというのは、「呪うのやめた」と気持ちを変更する自由である。
 
相手との間に誤解があって関係がこじれていた、というのもよくあることだ。なのに、誤解が解けても呪い続けなければならない、というのは、なかなかにしんどい。
 
また、人を呪い続けるのはエネルギーが要る。なので、時間が経つと薄れていくのは自然なこと。新しい恋人ができたり仕事が充実してきたりすると、嫌いなやつのことなんか、どうでもよくなっていくことが多いだろう。
 
気持ちは変わっていくのが当たり前なのだから、書いたり消したりすればいい。「デスノートに書いてやったぜ!」と思うだけで気分がすっきりすることもあるはずだ。デスノートは一時的な心の置き場として使うのがいい。
 
かといって、デスノートに書いた相手が、本当に亡くなってしまったとしたら、どう思うだろう? どんなに嫌いだったとしても、清々しい気分になれる人はほとんどいないのではなかろうか。自分の呪いのせいだろうか、とこわくなったり、罪悪感に苦しんだりするかもしれない。嫌いな相手と永遠に紐づけられたように感じるかもしれない。うしろめたさを抱えてしまうリスクは極力排除したいものだ。
 
なので、呪いは、できるだけダメージの少ないものにしよう。
「ウンコの後にトイレットペーパーが切れていることに気づきますように」とか、「うっかりレゴを踏みますように」とか、「足の裏を蚊に刺されますように」とか。
 
呪いを下方修正して「バチが当たりますように」程度に毒抜きすると、万一、呪いを返されたとしてもたいした害にはならない。呪いのリストが増えるにつれて、どんどん楽しくなってくるかもしれない。
 
心の中にデスノートを常備するのは、悲しみをこじらせて、自分をきらいにならないため。圧倒されそうな強い感情から距離を置くためのツールとして活用しよう。
 
というわけで、この記事を最後まで読んでくれた皆さまにも、呪いをかけておくことにする。
 
「たくさん苦労しますように。そして、いつか必ず、努力が実を結びますように」
 
「呪い」は「まじない」とも読む。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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