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泣かなかった私、はじめて泣いた私


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記事:島田 弘(ライティング・ゼミ NEO)
 
 
「お父さん、治らない病気なんだ」
 
と母から告げられたのは、私が中学生のとき。
 
「あっ、オレがしっかりしないとなんだ」と覚悟し、
そのためか反抗期がなかった私。
 
その後、10年以上にわたる闘病の最中も、
父が亡くなったときも、泣かなかった私。
 
 
20代のとき、付き合っていた彼女が
治らない病気であることを知った。
 
ある日、仕事中に彼女のお父さんから携帯に着信があった。
携帯で話すことができない場所だったので、
休み時間に公衆電話から電話をした。
 
彼女の体調が急変したため、緊急入院したことを聞かされた。
そして、「もう連絡しないで欲しい」と電話を切られた。
 
その後すぐに、彼女の携帯、そして彼女のご両親の携帯番号は
連絡がつかなくなってしまった。
住んでいたところも誰もいない。
 
なんとかしてもう一度彼女に会いたい。
そう思って探偵などをお願いして、
彼女が入院している病院を探してもらった。
 
手がかりになるものは何も見つからなかった。
 
こんな私でもショックが大きすぎたのか、
そのときから2、3ヶ月の記憶がない。
今でも思い出せない。
そんな状況でも、やっぱり一度も泣かなかった私。
 
私は泣かない男というわけではない。
 
息子とドラえもんの映画を観て泣くし、
YouTubeなどで感動の映像を観て泣くし、
本を読んで泣くこともある。
 
自分とダイレクトにつながっていない人、コトについてなら泣くのだ。
 
しかし、自分がダイレクトにつながっている何かで
勝ったり、負けたり、感動したり、悲しんだりしても泣かなかった。
 
いつからそうなったのか分からない。
 
 
2021年3月、私は淡路島にいた。
 
1ヶ月ほど前に、まこっちゃんから
「Tさんにお願いして、淡路島で合宿をしてもらうんだけど、
こうちゃんも行くでしょ?」
って誘われた。
 
何をやるのかも聞かされていなかったと気付いたのは、
会場となるホテルに着いてから。
 
1泊2日の合宿の中身が発表された。
 
この2日間で、3つのワークをやるみたいだ。
一人で取り組む時間もあれば、ペアで行うワークもある。
 
何かを学ぶというよりかは、
自分とトコトン向き合い、気づきを得るような合宿。
 
自分自身が気付いていない「思い込み」に気付いて、
それを手放す合宿。
 
ワークの説明を受け、そして取り組んでみて分かったことは、
この2日間で自分の知らない、気付いていない、
自分の「思い込み」に気づき、
それを書き換えるためのワークだということ。
 
「思い込み」は、「自分とはこういうものだ」「世界とはこういうものだ」と
私たちが無意識に決めてしまった、その人固有のもののような気がする。
 
自分が変わるために「思い込み」を変える。
 
例えば、「勉強とはこういうもの」「仕事とはこういうもの」
「結婚とはこういうもの」という「思い込み」を変えるってこと。
その「思い込み」を変えなければ自分を変えることは出来ないってこと
なんだと思う。
 
 
合宿最後のワークをペアで行っていたとき、
亡くなった彼女のことが私の内側から出てきた。
 
実は、彼女のこと、いや、彼女のお父さんに公衆電話から
電話をしているところを、もうひとりの自分が見ているという、
自分が作り出した映像が、毎日必ず、私の脳内で再生されていた。
 
20年以上経った今でも。
このときまで、誰にも言ったことがなかった事実。
 
「こうちゃん、なぜ毎日思い出すんだと思う?」
 
なんでなんだろう?
 
沈黙が続いた。
 
ワーク終了の時間になり、集合場所へ向かっているとき、
無意識にこんな言葉が、私の口から出てきた。
 
「生きていて欲しいのかもしれない」
 
言語化できなかった、言語化したくなかったものが、
このとき言葉になってしまったみたいだ。
 
私は、彼女が治らない病気で入退院を繰り返していたことは
知っているが、亡くなったという連絡をもらったわけじゃない。
 
もちろん、冷静に考えたら、その病気で今日まで生きている確率は
ゼロに限りなく近い。
 
「昔付き合っていた彼女が亡くなったんだ」って
人に話したことがあるけれど、どこかでそれを受け入れることが
できていなかったんだ、って気付くことができた。
 
会場に戻って、この2日間の感想をシェアすることになった。
 
私の番がきた。
 
立ち上がって話を始めた瞬間から、涙が止まらない。
 
自分のことを話しながら、号泣している。大号泣している。
 
「生きていて欲しい、無意識にそう思ってる自分に気付けた」
 
 
この合宿で、私の「思い込み」が少なくとも3つ上書きされた。
 
人前で、自分のことを語り、大号泣してわかったことがある。
 
私が人前で泣かなかったのは、その行為を「みっともないこと」だと
思っているから、自分ではそう理解していた。
 
しかし、違ったみたいだ。
 
予期せぬ形で、人前で大号泣して分かったこと。
それは、本当の自分を知るのが怖かったから。
そして、そんな自分を知られるのが怖かったから。
だから、人前で泣かなかったんだ。
 
号泣事件のあと、私は自分でも認知できるほど変わった。
 
本当の自分を知りたいと思うし、
そんな自分を知ってもらいたいと思うように変わっている。
 
今は自分のことを話しながら、フツーに泣く私。
 
この文章を書きながらも。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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