メディアグランプリ

好きなもののことを語っていたら、自分の恥に気づいた話

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:よしかたよしこ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
ゲイダンサーが好きだ。
 
こう言うと差別や偏見のように思われるかもしれないが、そういうつもりではない。
 
私は20年以上ダンスのレッスンを受けている。
はじめは大学のストリートダンスサークルから。
その後、いくつものダンススクールに通い、様々なジャンルのインストラクターのレッスンを受けてきた。
 
そのうち渋谷のとあるダンススクールには、12年ほど通った。
そこは女性専用のスタジオ。
レッスンを受けられるのは女性だけだが、インストラクターは男女共にいる。
そして、ゲイダンサーのインストラクターも多かった。
 
ゲイダンサー達のダンスは、力強く、セクシー。
セクシーさはそれはもう露骨なほど。女性には出せないメスらしさというか。
女性が隠す淫靡な女らしさを、彼らだからこそ丸出しに表現する。
発表会の作品演出ともなるとその独創的な世界観は他を圧倒し、極彩色の濃密な空気で観客の目のやり場を困らせたかと思えば、恐ろしくなるほどダークな世界観で会場を黙らせる。
 
そんなインストラクターのクラスはとても人気が高い。
ゲイダンサー達は皆ファンキーであけすけで、レッスンはパワフル。
中には「ちゃんと踊りなさいブス!!」とか平気で言うインストラクターもいて、女生徒達は皆それに喜んで真剣に踊る。新宿三丁目のゲイバーにいる気分か。
女性にとっては体の使い方にしてもメンタルにしても、レッスンの学びが深いのである。
 
 
さて日本がコロナ禍における初めての緊急事態宣言下におかれた頃の話。
件のダンススクールは、スタジオレッスンができない代わりに、オンラインダンスレッスンを配信していた。
そのサービスの一部に、インストラクターによるトークライブというコンテンツがあった。
 
私も暇だったのでトークライブをいくつか見ていた。
そのうち、最高に面白かったのが、ゲイダンサー達による暴露トーク。
「アタシの前の男ったらァーーー!!!」
「彼の◯◯を▲▲したらァーーー!!!」
それはそれは放送禁止ギリギリの内容で、声に出して笑った。
 
本当に、ゲイダンサー達って、なんでこんなに明るくやかましく面白く、他人を楽しい気持ちにさせるんだろう。
そういえば通っている美容室でも、「聞いて聞いてーーー!!」とかしましく美容室内の注目を一点に集めているお客さんがいると思ったら、話の内容からゲイの方だとわかった。
 
ん??
 
彼らはいつからこんなパーソナリティなのだろう?
子供の頃からこうなの?
ゲイとカミングアウトしてからなの?
 
ふと思った。
 
これは90年代のコギャルと似ているのではないだろうか。
同じような服やメイクをして、同じような喋り方をして、やかましく世の中に存在感をアピールし、居場所を確立する。陣地を広げる。
自分を強く見せるための鎧。同じ時代に生きて同じものが好きだよね、とお互いに認識することができる記号。
同じ鎧をまとった集団でいれば、「コギャル」として存在を強く認められる。
 
LGBTの中で、一番カミングアウトしている方が多いのはゲイという印象だが、
それはこの「記号」が世の中に広く認知されているからではないだろうか。
 
私には、レズビアンの友達も何人かいる。
でも、彼女達にこういった記号はない。
「実は彼女がいるんだ」とこっそり打ち明けてくれた友達もいれば、本人からは聞かされず、周りの友達から「あの子といつも一緒にいるボーイッシュな子、あの子の彼氏なんだよ」と教えてもらったこともある。
 
記号がある方が本人達が生きやすいのかどうなのか。
それは私にはわからない。
だけど私は、彼ら彼女らを「記号」で見てはいけないんだ。
 
 
冒頭、私は差別や偏見ではないと言った。
だけど、「好きだ」と言いながら無自覚に世の中の人を自分の物差しで分類している。
これは偏見に間違いない。
少しその世界に知った人がいるからといって、全部知ったようなフリをして物を断言するおこがましさ。
何かちょっとかじったくらいの時ほど、偏見の種が芽生えやすいのではないか。
 
恥ずかしい。
何を知ったかぶっていたのか。
これは私の反省文だ。
自分の行いを省みるための告解だ。
 
「ゆとり世代って、こんな人。だから仕事しにくい」
「関西人って、こんな人。だから面白い」
「シングルマザーって、こんな人。だからすごいよね」
誰だって、よく知らない人にひとくくりにされて言われたら嫌だろう。
それが好印象にせよ悪印象にせよ。
 
何か世の中に名付けられた分類ごとに人を判断するのではなく、人ひとりひとりに向き合う。
それが本当の多様性の尊重なのではないか。
 
だから、私はこれから「ゲイダンサーが好きだ」とはもう言わない。
「ダンサーの◯◯さんと▲▲さんが好き。だって……」
 
 
 
 
***
 
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2022-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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