なくした蓋パッキンで、人生が変わった話
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:岡部みほ(ライティング・ゼミ4月コース)
「ミッケ!」だ。いや「ウォーリーを探せ」か?
鬱蒼と緑生い茂る草むらは、私のモヤモヤした気持ちを逆撫でした。
なぜ私がそんなところにいたかというと、息子がなくした水筒の蓋パッキンを探すためだった。
昨年から通い始めた青空自主保育。
帰宅した息子の水筒から水がポタポタ漏れている。
あれ? 蓋パッキンがない。
息子や、その日の当番に聞いた話をまとめるとこんな経緯だった。
その日も元気いっぱいに里山で遊んでいた子どもたちだったが、なぜか、お友だちKに蓋パッキンを取られてしまった。
一度は取り返すことに成功したものの、また奪われてしまった。
泣きじゃくり、それは自分のだ、と大人に伝えられなかった息子。
最終的に、蓋パッキンはKのものだった、ということになってしまい、息子のもとに蓋パッキンが戻ってくることはなかった。
と、大体こんな感じだった。
いや、切なすぎません?
自分の蓋パッキンが取られてなくなった上に、Kが持ってるものが欲しいと駄々をこねて泣いている子、と見られていた彼。
いやいや切なすぎる。
そんな彼の切なさを払拭するため、母ちゃん立ち上がりました。
よし! 蓋パッキンを見つけ出そう!
Kによると、「奪った蓋パッキンは、トイレの裏の草むらに捨てて来た」とのこと。(ますます切ない)
そしてその現場である草むらの前に立った時、
「ミッケ!」だ。いや「ウォーリーを探せ」か?
と思った訳である。
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暖かい日も多く、草が鬱蒼と生い茂る。
何のためかはわからないが、木の枝がうずたかく積まれている。
この中から大きさ2cm程の蓋パッキンが見つかったら、奇跡だな、と思いながらも、一応、探した。
掃除の方にも、一応、聞いた。
草むらだけでなく、行き帰りの道も、一応、探した。
だけど、蓋パッキンは、見つからなかった。
まぁ、あの草むらじゃあ無理だよな、と初めから若干諦め気味ではあったものの、やはり少し落ち込んだ。
あぁ、息子の切なさを払拭してやりたかったなぁ。
そんな思いで、帰り道を歩いた。
歩いていたら、なぜか笑えてきた。
だって、リアルウォーリーを探せなんて、やったことないし!
グレーの、石ころみたいにまん丸な蓋パッキンを、自然界から探し出すなんて、そんなのあり!?
もう、悲しいけど、笑うしかないか。
そう思った時に、いいことを思いついてしまったのです。
「もう、これネタにしちゃえばいっか!」
ライティング・ゼミの課題テーマを何にしようか、どんなことを書いたらいいのか悩んでいた私は、もう、こんなに切ない気持ちになることってそうそうないだろう、という思いで、
その切ない気持ちを読者の方に伝えるには、どう表現したらいいだろう? と考え始めた。
すると、ムクムクと思い浮かぶ文章!
あの草むらを目の前にした時の敗北感を表現するには?
悲しくなりすぎず切なさの中に面白さを取り入れるには?
そんなことを考えていたら、なんだか楽しくなってきて、ニヤニヤしながら畦道を早足で歩いていた。
やはり私がライティング・ゼミに感じた、ビビビ! は間違いじゃなかった。
まさかこんなに早く「人生が変わる」とは。
すごくちっちゃなことだけど、日常のちょっとした悲しみとか切なさとか不安とかって、人生につきものじゃないですか。
色々な発散方法があると思うけど、葛藤にはとことん向き合って解決したいタイプの私に、うってつけな発散方法を見つけてしまったのだ。
そう、「書く」こと。
あんなに切なかった出来事が、書くことによって、ネタになって、なんだかちょっと笑えて、前向きになれて。
そしてその文章を誰かが読んでくれて、クスッと笑ってくれたら。
わかるーそれあるよねー、そっかー、そう考えたらいいねー、なるほどそんな考えもあるよねーなんて、共感してくれる誰かがいたら、もっと。
それだけで、切なさ成仏!
ちなみに、帰りにはもうすっかり前向きになっていた私、ホームセンターに片っ端から電話をかけて、新しい蓋パッキン探しました。
すぐに見つかり、買って帰宅。
僕のだ! と言えなかったモヤモヤと、なくなってしまった悲しみを全て受け止め、パッキンを渡したら、とっても嬉しそうな笑顔を見せてくれていましたとさ。
起こってしまったことにクヨクヨしてても仕方ない。
人生、色々あるよね。
でも、前向きに笑顔で捉えることができたらこんなに人生変わるんだ。
「書く」ことに、こんな効力があったとは。
ライティング・ゼミ恐るべし。
小さいけれど、大きな変化。
日常のモヤモヤを昇華できる方法。
「書く」ことを武器にできたら、人生をちょっと笑顔に、ちょっと前向きに、できるかもしれない。
トイレの裏の草むらに今でも隠れているであろう蓋パッキンさん。
誰かが「ミッケ!」してくれたかな?
見つけてあげられなくてごめん。
でも、あなたのおかげで、人生が変わったよ。
ありがとう、蓋パッキン!
***
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