fbpx
メディアグランプリ

おばけとの戦い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:南波 圭(ライティングゼミ・ゼミ集中コース)
 
 
正体不明のものって、体験したことありますか?
私は、あります。
五年位、一緒に暮らしていたと言っても過言ではありません。
いつからだったのか、正確には覚えていないくらい、自然にそばによってきて、気がついたらいつも一緒にいなければいけなくなりました。だんだん私の気力は無くなって、夜眠れなくなり、朝方少し夢うつつになりますが、そのぼんやりした頭のまま仕事へ行く。
なんとか帰ってきて、雪崩れ込むようにベットにダイブしても、寝られない負のループ。
当然、家事も適当ですから、体はどんどん痩せていきました。
まさにおばけに取り憑かれているような状態でした。
 
病院にいけばいいのにって思うでしょう?
でもね、病院に行くような明らかな何かではないんです。
どこかが痛かったり、血が出たり、色が変わったり、そういうわけではありません。
漫然とした、不眠症と不調。ふらふらしている私を見かねて、声をかけてくださるかたもいました。
でも、「お風呂に入ってゆっくりしてね」とか「早く寝なよ」とか、そんなことはとっくにやっていたし、寝られるなら寝てるんです。だから、「ありがとうございます」なんて答えても、「そんな普通のこという程度ならほっといて欲しい」とか、なんなら「この会話がストレスだ」と悪態をついていました。優しくしてくださった皆さん、本当にごめんなさい。
 
症状として明らかに一つおかしくなっていったのは、皮膚疾患で、全身が痒くて仕方ない。
痒いからかきむしり、皮膚が爛れ、血が止まらなくなり、他の分泌液も出てきます。これは洗ってもなかなか落ちません。黄色く変色したパジャマを何枚捨てたことでしょうか。
全身が真っ赤にパンパンに熱を持って腫れ上がり、当時の私の写真を見ても、誰だか全くわからないと思います。肌が何かに触れるだけで痒くて仕方がないので、お風呂で寝ていました。お風呂で寝ると危ないっていうけど、炎症を起こしまくっている体には水の中が気持ちよくて、一番安心できる場所だったのです。
流石にこの頃には病院に行っていましたが、明らかな病名や改善方法も全くわかりませんでした。
正確にいえば、病院ごとになんらか病名は言われますし、薬も出していただけます。でも、体調は改善することもなく、病院と薬を求めて放浪の旅を続けていました。
 
服を着るのも、出かけるのもやっとの状態で、電車に乗ると軽くパニックをおこすようになっていた私は、病院だけでは飽きたらず、いろんな人から教わったたくさんの療法も試しました。
ある時には、金の延棒で体をさする療法へ行ったこともあります。
そこには、有名芸能人の方からの手紙が飾られてありました。
すでに亡くなったかたでした。
 
それをみた時、最後に頼りたくなる場所が、ここなんだなって思いました。
そして、もう、終わりにしたいと思いました。
別に、人生を、ではありません。
正体不明の不調という名のおばけを追いかける戦いをやめにしたい。
だって、ここが最後の場所なんだから。
その手紙は、私にとってそのくらいインパクトがありました。
 
それからです。
少しづつ、自分で選ぼうと決めました。
体調はある時から加速度的に悪くなっていったので、「あれをしたから」「これをしなかったから」と振り返っては自分を責め、家族のそういう言葉には自分を全否定された気分になっていました。自分が全く信じらず、「あれをやめろ」「これをしろ」と人に色々言われるがままにやっていて、全て人に決めてもらっていました。だから、今すぐできることは、自分で決めることでした。
 
逆にいえば、それくらいしかできることはありませんでした。
気力も体力もお金も、すでに色々使い果たしていたのです。
だから実際にやれたことといえば、「けいちゃん、これは本当に欲しい?本当にやりたい?」と自分の心の中で唱えるようにしただけです。
馬鹿みたいですが、子供に親が問いかける時のようにしていました。
なんとなく、自分の中の一番柔らかい部分に聞けるような気がしていたからです。
そして、どんなことも問いかけました。着たい服は何か、何が食べたいか、眠いのか、誰と会いたいのか、やりたい仕事は何か、今後どうやって生きていきたいのか、気になっていることは何か。
 
ご想像の通りとは思いますが、別に、これをしたからってすぐには体調は良くなりませんでした。
ただ、自分で一番最初にこれをやろうと選んだことなので、しばらく続けてみようと思っていました。
 
そしたら、少しずつ、今食べたいご飯を自分でちゃんと作るようになりました。
だから、食生活が変わっていきました。
金額ではなく、自分の思いを優先するようになりました。
だから、お金の使い方が全く変わりました。
しんどい人とは、距離が置くようになりました。
自分と距離を置かれることも、そんなこともあるよなって思えるようになりました。
だから、人間関係が改善はしないまでも、イライラが減りました。
未来の時間と今の時間を整理して考えるようになりました。
だから、選ぶ仕事も、仕事へのスタンスが変わりました。
 
結果的に、私にあった正体不明のおばけは、影を潜めてくれるようになりました。
そして、たくさんのことが変化していて、おばけに出会う前には想像もしていなかったことにチャレンジしている自分がいます。
 
今でも、不調の明確な原因はわかりません。
ただ、もし、おばけと付き合うことを、私自身が、本当は一番最初に選んでいたのだとしたら……。
私の人生の軌道修正をさせたかったのだとしたら……。
そんなことを考えるのは、体調が落ち着いた今だから思えることかもしれません。
でもそれくらい、あのことがなかったら、今と全く違う人生になっていたと思います。
だからあれは、人生を変える大きなチャンスだったのではないかと思っています。
 
それからもう一つ、困難なことが起こった時のスタンスも変化しました。
困難なことはどうやってもしんどいことに変わりはありません。
でも、それはもしかしたら、何かを見直すチャンスとしての一面も持っているかもしれない。
その可能性があることを知っているだけで、少し余裕が生まれるような気がします。
これは、おばけとの戦いで私が勝ち取った戦利品です。
 
最後に、おばけ様、戦利品までいただいておいてあれですが、大変苦しんだので、お礼を言うのも違うしなって気もします。もうできればお会いしたくないですが、だた、今度人生を見直す必要があった時には、もうちょっとお手柔らかにお願いします。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~21:00
TEL:029-897-3325



2022-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事