新入社員日記③「U29読書会の個人的ウラ話」
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:内野真紀(ライティング・ゼミNEO)
「もしもし」と返すことができなかった。
すでに嗚咽して泣いていたから。
「どうしたの?」
「何かあったの?」
「何か言われたの?」
「誰に言われたの?」
「今からそっちに行こうか?」
母は心配していろいろ聞いてくれた。
でも何も答えることができなかった。
涙が、嗚咽が、止まらなくなって、何も言えなかった。
誰かに何か酷いことを言われたのではない。
自分自身が不甲斐なくて泣いたのだ。
自分が初めて企画した読書会の集客があまりにもうまくいかなかったのが悔しくて、悲しくて、申し込んでいただいた人には申し訳なかった。
正直、企画を出した時は「みんな喜んで集まってくれるだろう」と思っていた。
私が企画した「U29応援合戦読書会」には、私の想いが詰まっていたから。
これは本当に、本当に、本が大好きな私が、心から「やりたい!」と思った読書会で、「絶対に面白くなる!」と信じていたから。
しかし、申し込んでくださったのは、たった一人。
企画を任されてからの3週間、この企画のことを考えては反省と挑戦、試行錯誤の繰り返しだったのに……!
仕事の厳しさを痛感した。
頑張っているだけではダメなのだ。
結果を出さなくてはダメなのだ……
最終手段に出て、自分のインスタやFacebookで告知してみたり、友達に声をかけてみたりしたが、ここから申し込んでくれたのはたったの二人だった。
割とショックだった。
「さすがにこれはまずい」と思った私は休日も出勤してお客さんに「読書会どうですか?」と片っ端から声をかけていった。
でもダメだった。
挙げ句の果てに、「もっと魅力的な読書会を作らなきゃね」とまで他のスタッフに言われてしまった。
帰りの電車で我慢できずに泣いた。
駅から家までの間も泣きながら歩いて道に迷った。
ようやく家に着いてからは、めちゃくちゃに泣いた。
生活音にまで「うるさい」と文句を言ってくるマンションの隣人にはいつも気を遣っているのだが、この日は構わず泣いた。
そしてどうしようもなかったので母に電話したのだ。
でもしばらくは、ただ泣くことしかできなかった。
母にひとり泣き中継。
さすがにそれも申し訳なくなってきたので、少しずつ説明していった。
「読書会に人が集まらない」
「自信があった企画なのに誰にも届いていない」
「友達も来れないって」
「魅力がないって言われた」
「そんなにつまんない企画だったのかな」
「悔しい」
「申し訳ない」
「やるだけのことはやったのに」
「休日も出勤したのに」
「読書会は明後日なのに」
「明日休日だけど働いた方がいいのかな」
「悲しい」
「疲れた」
身勝手な言い訳や愚痴を全部全部吐き出した。
本当に子供染みていた。
自分の言い分をとにかく主張して、泣きたいだけ泣いてるのが。
母に泣きつけばどうにかなるような優しい時代は結構前に終わってるのに、
私はまだまだ甘い……
母は母なりにいろいろと考えてアドバイスをくれるのだが、私はなかなか納得がいかないというか、不安が解消されないというか。
とにかく泣いた。
しかしあれこれアドバイスをくれた後、結論として母はこう言った。
「今申し込んでくれている3人が『来てよかった』と思えるように力を尽くすしかないんじゃないの?」
……たしかに。
「人数が少ないからつまらないかもしれない」と勝手に思っていたが、盛り上がらないと決まったわけではない。
どうなっても参加者の方々を限りなく満足させることが私のミッションではないか?
冷静に「これに尽きる」と思い至った。
それでも悲しさがなくなったわけではないので涙は止まらなかったが、すっかり諦めモードを抜け出して次の一歩を踏み出そうと前向きになれた私は入社前より強くなっている。
諦めるにはまだ早い。
……というか、諦めるってどの時点で許されるものなのだろう?
いつだってまだやれることはあるのだから、諦めるタイミングって実はないのかもしれない。
とか考えながらもう一度パソコンを開けた。
すると本当にこれはどういうことなのかわからないが、他の友人から「参加したい!」とメッセージが来ていたり、同期のスタッフから「知人でU29読書会に参加したいって人がいます!」と連絡が来ていたりした。
わけがわからない朗報はまだ続く。
翌日も参加者リストに新しいお客さんの名前が加わっていて、もう一人の友人から「参加する」と連絡が来て、なんと参加者が6人になっていた。
純粋に、不思議すぎてびっくりした。
何がどうしてこうなったのか全くわからないが、とにかく感謝だった。
こんなことってある……?
当日、読書会は皆さんの働きかけやサポートがあって、結構盛り上がった。
ベスト本に選ばれたのは私が紹介した『アルケミスト』。
「私はこれを読んで、自分はなんでもできると確信したんです」
「本当に自分が願ったことは、周りの人も自然も世界も協力してくれるのだと思わせてくれるんです」
確かそんな感じで紹介した。
この読書会はまさに「それ」だった。
私の力だけではうまくいかなかったけれど、私が強く願って諦めなかったからか、周りが協力してくれてなんとかいい会になったのだ。
「諦めずに最後までやり尽くせ」みたいなのはよく聞く言葉だが、身をもって痛感するまではその言葉を知らないのと同じかもしれない。
……とか分かったように言っているが、合理的・戦略的に仕事ができるようになるまではまだまだ甘いのだろう。
次回のU29読書会まであと20日ほど。
さて、どうなるでしょう!
***
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