メディアグランプリ

本との関わり方


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐藤 知子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「今日の本はどうだった? おもしろかった?」
娘の通う小学校で、読み語りのボランティアを始めて5年目になる。
ちゃんと伝わったかな? みんな途中で飽きなかったかな? 楽しんでもらえたかな? と心配になる。娘に聞くと「おもしろかったよ」と言う時もあれば、「ちょっと眠くなった」と言われることもあり、読みながら感じた子供たちの反応と合わせて、次回の参考にしている。
もともと、絵本と子供は好きだったが、人前で本を読むなんて敷居が高く、私には無理、と思っていた。でも、それぞれでも興味がある、というのは大きいのだと思う。子供と同じ習い事をしているお母さんから、やってみないかと誘われると、案外あっさり決断している自分がいた。
 
自分の子供を育てる時は、疲れて本を読んであげることを、ほとんどしてこなかった。
オルゴールと映像が流れるシアター風のおもちゃにお世話になった。流しっぱなしにしているうちに子も親も眠ってしまう、という毎日だった。
私自身は、子供の頃、寝る前に親に本を読んでもらうことがあった。中でも「金太郎」が好きで、何度も「もう1回読んで」とせがんでいた。
読んでもらう方の気持ちはわかるが、読んで聞かせることの良さをわからず始めたボランティアだった。
 
初めて読み語りをした時、大きな衝撃を受けた。
子供たちのことを考えながら読んで語ると、それを感じた子供達も、聞いて動いた心を返してくれる。それは言葉だけでなく、雰囲気だったり表情などでだ。この場だけの、私と子供達の世界が生まれていく。読み語りは、読んで伝えるだけでなく、心のやり取りをすることだと、やってみてわかった。これは、楽しいことだ、と気づいた。
 
朝8時15分から30分まで、授業が始まる前の15分間、絵本や物語を読み語る。
子供にとってはちょっと緊張をほぐす時間、大人も日常から離れて心癒される時間でもあり、月1回程度の楽しみとなっている。自分の子供のクラスに割り振られた場合は、さっきまで一緒に朝ご飯を食べていたのに、ちょっと距離感のある顔合わせになる。お互いに違った一面を見る機会でもある。
 
「この本知ってるー」「何これー」「わっ、はっ、はー」
低学年は元気いっぱい反応し、特に前の席の子は、語り掛けてくれる子もいる。
コロナになってからは、絵本の周りに集まるということも出来ず、椅子に座ったまま、机で聞くきまりとなった。先生方手作りの、サランラップ仕立てのパーテーションが置かれ、毎回交換して下さっている。その為、出来るだけ見えやすいように、大型絵本を活用している。
中学年になると、大型絵本を使うか迷い始める。あまり小さい子向けでもいけないし、難しすぎてもうまく届かない。
高学年は、さすがに大人っぽくて、あまり反応を見せないから、こちらも緊張しながら、物語中心に読んでいる。
 
読み語りは、本を選ぶところから始まっている。学年ごとに何が伝えられるか、絵の美しさ、表現のおもしろさ、きれいな言葉など、本の良さと、子供たちのことを想って本を選ぶのも、楽しみのひとつだ。
そして、一人で本を読むのとはまた違い、相手がある、ということは張り合いも大きくしてくれる。前日は家で練習を繰り返す。子供達を前にしたり、寝静まってから犬を相手にしたり。
ボランティアの中でも、読む人によって、元気の良い読み方をする人、静かにゆっくりと読む人など様々だ。私の場合、どうしても平坦な読み方になってしまうが、それに見合った本を選ぶようにし、これは個性だと受け止めている。
 
周囲の人からは、平日の朝、1時間の時間休をもらって行くので、仕事もしているのに大変だね、よく余裕あるねなどと言われる。しかし読み語りが心のやりとりだと気づいてから、楽しくて、全く苦になっていない。
読み語りを始めたことは、私にとって他の面でも助けになっている。まず、人の前に出ることに慣れることができた。どうしたら伝えたい思いを届けることができるかを考えるうちに、人前で話す時の間や声の出し方が、自然に身についた。
聞いてくれる子供達は、楽しい時には素直に笑って目を輝かせてくれ、間違えたり失敗した時には受け入れてくれる。緊張していた時には、質問したり声を掛けてくれた。大変どころではない。子供達に助けられている。
 
こんないいことだらけの読み語りだが、時に恥ずかしいことも起こる。
昨年度末、読み語りについて、PTA中心で作成している広報誌の原稿を頼まれた。依頼文には、読み語りの活動についての原稿、写真1枚と書いてあった。写真について、活動風景の写真ならば、司書の先生に協力願わなければならない。文集担当の方の奥様がママ友だったため、活動風景の写真でいいか問い合わせた。返事は「佐藤さんの顔写真で」ということであった。
恥ずかしいと思いつつ、夫に頼んで撮ってもらった。手には2冊の絵本を持ち、満面の笑みを浮かべて。
学校を通し、メールで送信。2週間ほど経って、出来上がった広報誌が学校で配られた。
開いてみると、原稿は採用されていたが、私の顔写真ではなく、やっぱり活動風景だった。しかも、私はどこにも写っていなかった。それは良いとして、私は満面の笑みで写った写真を送ってしまったことが恥ずかしくなり、後悔した。
先生も、文集担当の方もママ友も、誰もそのことに触れる人はいなかったし、私も触れていない。でも、それだけ読み語りの活動に自信をもってお伝えしたということだ!
 
子供達はこれからたくさんの本に出合っていくだろう。ある一冊の本との出会いが、人生を動かすようなことがあるかも知れない。
この読み語りの活動が、ひとつのきっかけになってくれればいい。
そして、いつか、出来れば読む方と読んでもらう方の、両方の体験をしてみることをお勧めしたいな、と思う。
 
 
 
 
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2022-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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