メディアグランプリ

方向音痴は福引のようなものかもしれない


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記事:飯髙裕子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
あれ? なんかおかしい。嫌な予感がする。
私が降りる停留所の名前がいつまでたってもアナウンスされない。そう思った矢先
「次は終点です」とアナウンスがあった。
終点? 調べた番号のバスに乗ったはずなのに……。降りるしかない。
 
私はどうも方向音痴のようだ。私をよく知る人たちに言わせれば「何をいまさら……」と呆れられるかもしれないが、まあよく道に迷う。
この日は、通信教育の関連で京都の織田信長にかかわる史跡を訪ねようと、出かけてきたのだった。
本能寺跡から始まり、最後は現在の本能寺に到着するという2時間ほどの散策であった。
 
朝から出かけてきてお昼くらいに終わるのでいい感じだなと思っていた。
訪れる場所は6か所ほど。徒歩とバスの乗り継ぎで移動だった。
最近はスマホでも地図が見られるからそれを利用しながら私も移動する。
それなのに迷うというのはやはり方向音痴なのかなと自分でも薄々感じてはいるのだ。
出だしは順調だった。史跡を見つけて、次の神社に移動すべくバスに乗った。
どのバスかも調べたのだが、違うルートを走るバスに乗ってしまったようだ。
 
終点で降りた私は、困ったなと思った。土地勘のない場所でどこにいるかわからなくなるのは不安なのだ。歩きならまだ、そんなに距離が離れることはないのに、今回はバスだ。
あたりを見渡すとラッキーなことに信号の向こうにバスの営業所が見えた。
良かった~。多分目的の神社に行くバスがあるはずだ。思った通り何本もバスが出ている。
今度は間違えないようにルートを確認してバスを待つ。
やってきたバスに無事乗り込み、次の目的地に向かう。
ところが、予定よりも時間がかかったのと冷えたのか、トイレに行きたくなってきた。
停留所で降りたらコンビニを探そうと軽く考えていたのだが、降りてみると、全く近くにコンビニやお店がないことに私はちょっと焦りを感じていた。
神社に行けばトイレはあるだろう。早足で歩き始める。10分ほどで神社に着いたのだが……。
はるかかなたの階段を上った先に鳥居が見える。冷や汗が出てきたが上るしかない。
せかせかと階段を上り社務所でトイレの場所を聞く。
またもや、今あがったところを少し下りさらに奥に進まなければならないという。
参拝処ではなくなった私は足早にトイレを目指す。(本当に罰当たりだが仕方ない)
やっと見つけてやれやれと出てきた私は、元来た道を戻らずに、先へと進みたくなった。
これがおそらく道に迷う原因かもしれないのだが、その時は全くそんなことは頭になかった。
細い道を上がっていくとふいに視界が開けた。展望台に出たのである。
京都と奈良の山までも見渡せる景色にうれしくなる。予定にない場所を見つけてなんだか得をしたような気分になる。
こんなことがよくあるからかもしれないが、方向音痴は福引のようだなと思う。
はずれなら、「あーあ」と少し残念な気持ちになるだけ。もし当たりなら、思わぬ幸運にウキウキしてしまうからだ。
だから何となくよくないイメージの方向音痴という言葉を自分にあてはめたくないのかもしれない。
いうまでもなく、そのあとちゃんと参拝をして次の目的地へ向かった。
この時点ですでに予定よりかなりの時間がかかっている。それなのに、この後またもや私はバスで思いもしない事態になる。
乗ったバスの行き先が変わってしまったのである。
おそらく乗ったときはよかったのだが途中で乗り換えが必要だったことに気が付かなかった。2回もバスを乗り間違えるなんてありえない事態だが、何としても私は最後の目的地まで行きたかった。
もうなんだかわからなくなりかけて、それでも散々歩き本能寺にたどり着いたときには当初の予定の2倍以上の時間が過ぎていた。
さすがにこれには私も参った。ちょっと自分の方向音痴のひどさに落ち込みかけたのだ。
けれど、待てよと思った。
倍の時間かかったけれど、本当なら見られないところも行けたわけだし逆に得したんじゃないの? この楽天的発想が、常に私を守っている。普通なら困った事態になることが多いのに何となく今まで重大な事態に陥ることもなく過ごしてきたのだ。
 
計画通りにちゃんとできる人から見ると、ほんと呆れた話ではあるが、自分の短所はそれを受け入れるところから始まるのかもしれないと思う。変えられないことを嘆くよりも、できることに目を向けるほうが人生は楽しい。
まあ、人の迷惑をかけないことが大前提ではあるのだが……。
 
だから私は、行きたいと思うところに出かけることができるのだ。迷うことが怖くてどこにも行けないのはちょっと寂しいなと思うから。
おそらくこれからもどこかに行くたびに道に迷い、意外な発見をして、経験が増えていく。それこそが誰かと同じではない私の人生なんだと思うのである。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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