メディアグランプリ

第二の母、先生と出逢い、誓うこと。


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記事:平田台(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
私には、第二の母がいる。
キルトの先生であり、人生の師である。
「先生」とお呼びしているが、母のような存在だ。
 
出逢いは10年ほど前に遡る。
出向で福岡から東京に出ていた時、住まいは駒込駅界隈だった。通勤には1時間ほどかかるが、日本庭園が美しい「六義園」に惹かれて住んでいた。
六義園のほど近くに、藍染工房があった。母の日の贈り物に、シルクのカットソーを葡萄染しようと、工房を訪ねていた。
葡萄の皮を煮出した深い紫色の染料の入った桶の中で、カットソーを繰り返し出し入れしている時に、背中側の藍甕で「ジャラジャラ、ジャラジャラ」とリズムよく音を立てながら、何やら染めている方が、先生だった。
額に汗されながら、真剣な表情だったので、気になりつつも、お声掛けしてよいものか、モジモジしていた。
手を止められた、その隙に訊ねた。
 
「すみません……。何を染めていらっしゃるのですか?」
「知人の農場主から託された、桃の原種・蟠桃の種を染めているのです。ハート型で可愛いでしょう。農場主の念願の果実の種なので、丁寧に取り扱いたいと思うのです。塩で煎り清め、祈りを込めてキリで穴を空け、最後の染めの工程なのですけど、なかなか染まらないんですよ。今回で3回目かしら」と、藍色に染まった手で、種を大事そうに包みながら説明してくださった。
 
どうしても完成が見たい。
「出来上がったら、教えてくださいませんか?」と名刺を渡すと
「分かりました」と、お名刺をくださった。
 
「キルト作家」と添えられていた。
 
2ヶ月ほどして、「染まりました」とお電話をいただき、東京でのご自宅に伺った。
古くより、邪気を払うと言われる桃の種が、藍色をまとい、立派な御守になっていた。
 
「キルトを作られているのですか?」と訊くと、作家として作品を作りながら、講師を育てられているとのことだった。
和歌山市内のマンションと、里山にある古民家、それから、東京の住まいを拠点に過ごされ、指導者、作家、「食」に関わる発信を中心にされているとのことだった。古民家のある住まい(お山)にある山菜や薬草といった自然の恵み、周囲の方々から届くもの、それらを活かして、お裾分けしているという。
 
会社勤めで、方針に従うことが当たり前であった自分には、信じ難い在り方だった。
常に、周囲の方々、未来を見られ、お役に立てるようにと自ら考え、行動を重ねられるお姿は、輝いて見えた。尊敬の念が止まなかった。
 
手仕事の好きだった私は、キルトのご指導をお願いし、快く受け入れていただいた。
キルトを通して、誰かを想い、一針一針を重ねる事の尊さを伝え、お山の恵みの持つ、自然の力をお裾分けし、関わる方々とその孫子の健康と幸せのためにと寝る間を惜しんで過ごされている。
 
驚くべきことに、私が作るならば、4~5年かかるようなベッドカバーサイズのキルト作品を、1年で仕上げてしまうのだ。
先日、先生の個展があり、受付を担当し、心のこもった、あたたかな感想を、沢山聴かせていただいた。
「気の遠くなるような針目の細かさでした。想いの深さが感じられて、感動で、涙しました」
これまで受付をさせていただく度、先生の偉大さを感じてきている。
人の心を震わすほどの作品を、作り続けているのだ。
 
そして、春には筍や山菜、夏には無農薬果実を使ったアイスクリーム、秋には栗、冬にはお山の果実や薬草を漬け込んだ酵素等々を分けてくださる。
これが、どれも驚くほど美味しいのだ。
生きる力が湧いてくる、そんな味だ。
 
振り返れば、キルトを指導いただき10年ほどになる。
カメの歩みだが、時に厳しく、時にやさしく指導をしてくださる。
「針目が粗いです。糸の始末が雑です。裏側だからといって手を抜くと、角と角はぴったりと合いません。見えないところを丁寧にしてこそ、作品と言えるものが出来上がります」
始めた当初にいただいたご指摘で、今でも鮮明に覚えている。
まるで、生き方を正されるかのようだった。
計画性が無く、門下生一同の教室展で、展示会間際の完成となってしまったこともある。
「関わる皆さんのことを考えなさい。作品の展示順を決めること、展示作業、あなたが完成させた後に作業をしてくださる方がいる。それを忘れないように」
 
学ばせていただいていることは数知れない。
 
周囲の方々を、そして未来を大切に、世の中のお役に立てるような生き方をしたい。その想いは年々増しているが、日々の中で忘れてしまいそうになる。
先生とお逢いする度、その在り方に触れさせていただく度、その想いを新たにさせていただいている。
先生は何時も私に「私がしていることは特別なことではありません。誰でもできることです。普通のことです。台さんにもできるのですよ」と言ってくださる。
先生は、もうすぐ古希を迎えられる
ご一緒できる一瞬一瞬、いただく一言一言を噛みしめながら、過ごしていきたい。
それを未来に繋げられるように。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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